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貸付けを行っている国有農地等の管理に当たり、国有農地等の使用料の長期滞納者に係る滞納額の収納を適切に行うとともに、貸付条件に違反して国有農地等を使用している場合の契約解除を厳正に行うよう是正改善の処置を求めたもの


(1) 貸付けを行っている国有農地等の管理に当たり、国有農地等の使用料の長期滞納者に係る滞納額の収納を適切に行うとともに、貸付条件に違反して国有農地等を使用している場合の契約解除を厳正に行うよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 食料安定供給特別会計(農業経営基盤強化勘定)
    (款)自作農創設特別措置収入
      (項)農地等貸付収入
部局等 農林水産本省、5都道県
国有農地等の管理の根拠 農地法(昭和27年法律第229号)
国有農地等の管理の概要 国有農地等の貸付けに係る使用料の徴収及び貸付地の管理
平成20年度に使用料の収納未済歳入額が生じている都道府県数 22都道府県
上記のうち5都道県における平成20年度末の長期滞納者27名(うち10名が無断転貸等を実施)の滞納額 3億2915万円

【是正改善の処置を求めたものの全文】

貸付けを行っている国有農地等の管理について

(平成21年10月9日付け 農林水産大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 国有農地等の管理の概要

(1) 国有農地等の概要

 貴省は、自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号。昭和27年廃止)、農地法(昭和27年法律第229号)等に基づき、昭和21年度以降に、自作農創設等のために土地等の買収、管理及び処分を行っている。
 この土地等は、農地法等により〔1〕 自作農創設を目的に国が不在地主等から買収して小作人に売り渡すために取得した農地又は採草放牧地(以下「国有農地」という。)と、〔2〕 食糧増産と帰農促進を目的に国が土地の所有者から買収して取得した未墾地等の開拓財産とに区分されている。そして、大部分は買収とほぼ同時期に小作人等に売り渡されたが、小作人が買受けの申込みをしなかったり、経営面積が零細であるなど売り渡しても自作農として農業に精進する見込みがなかったりなどの事情があって売り渡されていないものが、平成20年度末現在で国有農地に6,294,407m 、開拓財産に37,508,310m 、計43,802,717m ある(以下、国有農地と開拓財産を合わせて「国有農地等」という。)。

(2) 国有農地等の貸付け

 農地法等に基づき、貴省は、国有農地等の管理を国有農地等が所在する都道府県の知事に委託(地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づく法定受託事務 (注1) )している。
 そして、都道府県知事は農地法施行令(昭和27年政令第445号。以下「施行令」という。)の規定に基づき国有農地等の貸付事務を行っており、貸付面積は20年度末現在で国有農地1,772,268m 、開拓財産224,125m 、計1,996,393m となっている。

 法定受託事務  法律又はこれに基づく政令により都道府県、市区町村が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令で定めるもの

ア 貸付手続

 国有農地等の貸付手続は、施行令、農地法施行規則(昭和27年農林省令第79号。以下「施行規則」という。)のほか、農地法関係事務に係る処理基準について(平成12年12構改B第404号農林水産事務次官依命通知)、食料安定供給特別会計農業経営基盤強化勘定所属国有財産管理事務処理要領について(昭和50年50構改B第349号農林事務次官依命通知。以下、これらの通知を合わせて「処理基準等」という。)において定められており、貸付けは、〔1〕 耕作又は養畜の事業に供するために貸し付けるもの(以下「農耕貸付け」とい う。)、〔2〕 耕作又は養畜の事業以外の事業に供するために貸し付けるもの(以下「転用貸付け」という。)とに区分して行うものとされている。

イ 貸付条件

 国有農地等の貸付けを受けようとする者は、農地法等の法令や処理基準等に定められた書類を添付した申込書等を都道府県知事に提出することとなっている。
 都道府県知事は、上記の貸付基準に従い貸付けを相当と認めたときは、その申込みを した者(以下「借受人」という。)に対して、国有財産貸付通知書又は国有財産転用貸付通知書を交付するものとされている。そして、転用貸付けの場合、国有財産転用貸付通知書には、次の貸付条件等が記載されている。
(ア) 借受人は、毎年1回使用料を歳入徴収官の発行する納入告知書により納期限内に支払うものとする。
(イ) 使用料を納期限内に支払わないときは、年利8.5%の割合で計算した金額を延滞金として支払うものとする。
(ウ) 借受人は、都道府県知事の同意を得ないで、借受けに係る土地及び物件の用途を変更し、若しくは転貸し、又は使用する権利を譲渡してはならない。
(エ) 都道府県知事は、借受人において、〔1〕 上記(ウ)に反する行為があったとき、〔2〕 使用料を理由なく滞納したとき、〔3〕 以上のほか貸付けの条件に違反し、又は信義に反する行為があったときは、国有財産貸付契約解除通知書により貸付けを解除することがある。

ウ 貸付条件の履行状況調査及び貸付けの解除

 処理基準等において、都道府県知事は、〔1〕 貸し付けた土地等について適宜見回り等を行うとともに、〔2〕 貸付通知書に記載された貸付条件の履行状況を調査するために、農耕貸付地又は転用貸付地の借受人から毎年12月までに、耕作状況報告書又は転用借受状況報告書を提出させるものとされている。
 また、都道府県知事は、貸し付けた土地等の見回りの結果又は上記の両報告書により、耕作していない事実が判明した場合又は無断転貸行為等の不適切な事実が判明した場合には、速やかに事実関係を調査の上、国有財産貸付契約解除通知書を遅滞なく借受人に交付するなどして、貸付けを解除するものとされている。
 そして、貴省は20年度に45都道府県から3億3774万余円の使用料を収受している一方、収納未済歳入額も22都道府県(注2) において1億9285万余円に上っている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、国有農地等の貸付けについて、上記の22都道府県のうち、20年度の収納未済歳入額のほとんどを占めるなどしている7都道県(注3) (収納未済歳入額1億8499万余円)において、合規性、効率性等の観点から、使用料は適切に徴収されているか、借受人が国有財産貸付通知書又は国有財産転用貸付通知書に記載されている使用料支払等の条件を遵守しているか、貸付地の管理は適切に行われているかなどに着眼して、国有農地等貸付簿、債権管理簿等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 使用料の滞納の状況

 7都道県のうち、東京都、北海道、茨城、栃木、千葉各県(以下、これらを合わせて「5都道県」という。)の知事は、20年度末現在において国有農地等655,147m を貸し付けているが、20年度の収納未済歳入額は計1億8497万余円に上っている。
 また、20年度末現在で納入期限から1年以上の期間にわたり使用料を納付していない者(以下「長期滞納者」という。)は27名で、滞納している使用料(以下「元本」という。)は計1億7492万余円、元本に対する延滞金相当額(以下「延滞金」という。)は計1億5422万余円、元本と延滞金を合計した額(以下「滞納額」という。)は計3億2915万余円となっている。
 また、長期滞納者27名が使用料を滞納している期間(以下「滞納期間」という。)は、滞納期間10年以上の者が15名、このうち滞納期間15年以上の者が5名(最長は1名の29年)となっている(表1 参照)。

表1 滞納期間別の長期滞納者数及び滞納額(平成21年3月31日現在)
滞納期間 長期滞納者数
(人)
滞納額(円)
元本 延滞金
10年以上 15 169,459,634 152,802,485 322,262,119
5年以上10年未満 3 3,852,395 1,221,866 5,074,261
1年以上5年未満 9 1,617,683 197,700 1,815,383
合計 27 174,929,712 154,222,051 329,151,763

 上記の長期滞納者27名について、滞納額を金額別にみると、滞納額が1000万円以上の者は8名(滞納額が最も多い者は6000万円以上)、その滞納額の合計は2億8523万余円で、滞納額全体の86.6%を占めている(表2 参照)。

表2 滞納額別の長期滞納者数及びその滞納額(平成21年3月31日現在)
滞納額の区分 長期滞納者数
(人)
滞納額
元本 延滞金
金額(円) 割合
(%)
金額(円) 割合
(%)
金額(円) 割合
(%)
1000万円以上 8 147,484,758 84.3% 137,753,837 89.3% 285,238,595 86.6%
100万以上1000万円未満 8 25,703,655 14.6% 16,221,901 10.5% 41,925,556 12.7%
10万以上100万円未満 4 1,567,559 0.8% 211,729 0.1% 1,779,288 0.5%
10万円未満 7 173,740 0.0% 34,584 0.0% 208,324 0.0%
合計 27 174,929,712 100.0% 154,222,051 100.0% 329,151,763 100.0%
(注)
 割合は、小数点第2位以下を切り捨てているため、各項目を合計しても100% にならない。

 しかし、5都道県の知事は、これらの事態に対して、貸付条件違反を理由とした国有財 産貸付契約解除通知書による解除を実施していなかった。

イ 国有農地等の無断転貸等の状況

 長期滞納者27名のうち、東京都知事が貸し付けている〔1〕 2名は貸付地の一部を無断で駐車場等に用途変更し、〔2〕 5名は貸付地を無断で第三者に転貸し、〔3〕 3名は貸付地に建設 した建物を第三者に売却するなどしていて、これらの10名は貸付条件に違反して貸付地を使用しており、東京都知事はこれらの事態を把握しているのに、貸付条件違反を理由とした国有財産貸付契約解除通知書による解除を実施していなかった。
 また、東京都知事、千葉、茨城両県知事は、16年度から20年度までの間、国有農地等の借受人から転用借受状況報告書等を提出させていなかった。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 長期滞納者Aは、東京都江戸川区中葛西に所在する国有農地740.1m に、昭和59年以前から東京都知事に無断で店舗等を建設した。
 東京都の歳入徴収官は、国有農地等が無断で使用されている事態を解消するために、本件土地をAに早期に売り払う約束で平成6年5月16日に、既往10年分の使用料相当額(昭和59年4月から平成6年3月までの3712万余円)を徴収した。
 そして、東京都知事は、Aから国有財産転用借受申込みを受けて、6年4月1日から9年3月31日までを貸付期間とした国有財産転用貸付通知書(使用料年額603万余円)を交付した。しかし、その後、Aは、6年度分のみの使用料603万余円を支払ったものの、7年度以降現在まで使用料を納付していないため、20年度末現在の滞納額は6273万余円となっている。
 また、東京都知事は、16年8月に登記簿謄本により、7年11月にA以外の第三者が本件土地に建てられている店舗の所有権保存登記を行っており、この第三者が本件土地を占有して使用している事態を確認しているが、Aに対して収納未済となっている使用料についての督促状を発するのみで、無断転貸や使用料滞納を理由とした国有財産貸付契約解除通知書による解除をしていない。
 このため、A及び第三者である占有者は、使用料を14年間納付することなく本件土地を占有して使用している。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、国有農地等の借受人が長期間にわたって使用料を納付していないため滞納額が多額に上っていたり、貸付条件に違反して国有農地等を無断転貸するなどしているのに都道県知事が国有財産貸付契約解除通知書による解除をしていなかったりなどしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、国有財産貸付契約解除通知書による解 除を行う場合の基準、手続等(以下「解除基準等」という。)を明確に定めていないこと、また、国有農地等の管理を委託した都道府県の知事に対して、滞納額を収納するための体制整備を図ったり、国有農地等の使用実態を把握するために貸付条件履行調査等を適切に実施したり、及び国有財産貸付契約解除通知書による契約解除を行ったりするよう求めていなかったことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 国有農地等の管理は適切に行われる必要があることから、貴省において、解除基準等を明確に定めるとともに、各都道府県知事が次のような処置を講ずるよう是正改善の処置を求める。
ア 借受人が使用料を納付していない事態を解消するために、長期滞納者別の滞納処理計画を作成するなど、滞納額を収納するための体制整備を図ること
イ 借受人の国有農地等の使用実態を把握するために、適宜見回り等を行うとともに、借受人から耕作状況報告書又は転用借受状況報告書を適切に提出させること
ウ 借受人が貸付条件に違反して国有農地等を使用している場合は解除基準等に基づき厳正に対処すること

 22都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、秋田、茨城、栃木、群馬、埼玉、千 葉、神奈川、長野、静岡、奈良、和歌山、鳥取、島根、広島、徳島、愛媛、高知、 宮崎各県

 7都道県  東京都、北海道、茨城、栃木、埼玉、千葉、神奈川各県