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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 経済産業省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

工事の設計が適切でないもの落石防護柵の設計が適切でないもの


(3) 工事の設計が適切でないもの   1件 不当と認める国庫補助金 3,720,000円

 落石防護柵の設計が適切でないもの   (1件 不当と認める国庫補助金 3,720,000円)

  部局等又は県名 事業主体
(所在地)
補助事業等 年度 事業費
(補助対象事業費等)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める補助対象事業費等 不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(464) 富山県 南砺市 電源立地地域対策交付金 17 3,937
(3,937)
3,720 3,937 3,720

 この交付金事業は、事業主体が、小来栖(こぐるす)地内において、市道小来栖梨谷線への落石を防ぐため、落石防護柵設置工事を実施したものである。
 この落石防護柵は、既設のブロック積擁壁(以下「既設擁壁」という。)の上部に、コンクリート基礎(延長19m)を築造し、これに高さ2.0mの支柱(高さ200mm、幅100mm、ウェブ肉厚5.5mm、フランジ肉厚8mm形鋼)を2.0mm間隔で設置した上でこの間に金網等を延長18mにわたり布設する構造となっている(参考図 参照)。本件落石防護柵の支柱の設計に当たり、当初、事業主体は、「道路防雪便覧」(社団法人日本道路協会編)等により、高さ200mm、幅200mm、ウェブ肉厚8mm、フランジ肉厚12mmのH形鋼を1.5m間隔に設置することとして構造計算を行い、落石による荷重又は積雪による荷重のいずれに対しても、本件落石防護柵は安全であるとしていた。
 しかし、事業主体は、この設計による支柱を用いた落石防護柵は特注品であるなどのため、標準品を使用することとして、より断面の小さな前記の幅100mmのH形鋼の支柱を用いた落石防護柵により本件工事を実施したが、このように落石防護柵を標準品とすることとした場合の構造計算を行っていなかった。そこで、改めて支柱について構造計算等を行ったところ、H形鋼に係る曲げ応力度(注) は3,062kgf/cm となり、許容曲げ応力度(注) 1,400kgf/cm を大幅に上回ることになり、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 また、前記のとおり、本件落石防護柵は既設擁壁の上部に設置することから、既設擁壁に落石防護柵のコンクリート基礎の自重、積雪等の新たな荷重による土圧が作用することになるのに、事業主体は、既設擁壁について安定計算の検討を行っていなかった。そこで、既設擁壁について安定計算等を行ったところ、滑動に対する安定について、土圧が増加することにより安全率が0.99となり、許容値である1.5を大幅に下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっておらず、本件落石防護柵は、所要の安全度が確保されなくなった既設擁壁の上部に設置されていた。
 したがって、本件落石防護柵(工事費3,937,500円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金3,720,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体において、落石防護柵の設計についての理解が十分でなく、設計図書を作成する際における確認が十分でなかったこと、富山県において、事業主体に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。

 曲げ応力度・許容曲げ応力度  「曲げ応力度」とは、材が曲げられたとき、曲がった内側に生ずる圧縮力又は外側に生ずる引張力の単位面積当たりの大きさをいい、その数値が設計上許される上限を「許容曲げ応力度」という。

(参考図)

落石防護柵概念図