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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第11 経済産業省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

預託した保証金の利息収入により行うという事業の実施方法を見直すとともに保証金を含めた資産の保有規模を適正なものとするよう独立行政法人日本貿易振興機構に検討させ、これにより不要となる資産は国庫に返納させることができることとするよう意見を表示したもの


(3) 預託した保証金の利息収入により行うという事業の実施方法を見直すとともに保証金を含めた資産の保有規模を適正なものとするよう独立行政法人日本貿易振興機構に検討させ、これにより不要となる資産は国庫に返納させることができることとするよう意見を表示したもの

部局等 経済産業本省
検査の対象 経済産業本省
  独立行政法人日本貿易振興機構
設置根拠法 独立行政法人日本貿易振興機構法(平成14年法律第172号)
独立行政法人日本貿易振興機構が保有する保証金の平成20年度末残高 204億5580万円  
独立行政法人日本貿易振興機構の平成20年度末における資産の額 904億0345万円 (背景金額)

【意見を表示したものの全文】

  独立行政法人日本貿易振興機構が保有する保証金について

(平成21年10月23日付け 経済産業大臣あて)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 機構が保有する保証金の概要等

(1) 機構が保有する保証金の概要

 独立行政法人日本貿易振興機構(以下「機構」という。)は、平成20年度末の貸借対照表の資産の部に、流動資産として短期敷金・保証金100億円及び固定資産として敷金・保証金108億0568万余円、計208億0568万余円を計上している。これらの資産のうち、敷金等3億4988万余円を除いた、コンテンツ産業国際展開支援預託金(以下「コンテンツ預託金」という。)100億円、国内事務所借上保証金(以下「事務所保証金」という。)88億2499万余円及び対日投資・貿易相談ワンストップサービスセンター設置保証金(以下「センター設置保証金」という。)16億3080万余円(以下、これらを合わせて「保証金」という。)計204億5580万余円は、いずれも当該資金を運用させ、その利息収入により事業を行うため、当該事業を行う民間業者に預託しているものである。このうち金額の多いコンテンツ預託金及び事務所保証金の概要は以下のとおりとなっている。
ア コンテンツ預託金は、16年10月に、機構がコンテンツ産業の国際展開支援に係る業務委託契約(以下「コンテンツ委託契約」という。)をA社と締結し、16年度から21年度までA社に預託した100億円を原資としてA社に償還期間5年の地方債を購入させるなどして、その運用による各年度の利息収入を機構がA社に支払うこととなる業務委託費の支払に充てることとしているものである。これにより、機構は、20年度の利息収入6016万余円のうち6015万余円を同年度の業務委託費に充てている。
イ 事務所保証金は、16年2月に、機構が大阪本部及び名古屋貿易情報センターに係る貸室定期賃貸借契約(以下「貸室賃貸借契約」という。)をB社及びC社と締結し、15年度から26年度まで両社に預託した67億2006万余円及び21億0492万余円を原資として両社にそれぞれ償還期間10年の政府保証債を購入させるなどして、その運用による各年度の利息収入を機構が両社に支払うこととなる賃料・共益費の支払に充てることとしているものである。これにより、機構は、20年度の利息収入9417万余円及び3144万円を同年度の賃料・共益費1億1222万余円及び3509万余円の支払の一部に充てている。

(2) 保証金を保有するに至った経緯等

 機構が15年10月に特殊法人日本貿易振興会(以下「振興会」という。)から独立行政法人日本貿易振興機構に移行した際に、振興会の一切の権利及び義務は、国が承継する資産を除き機構が承継したが、独立行政法人日本貿易振興機構法(平成14年法律第172号。以下「法」という。)附則第2条の規定により、機構が承継する資産の価額から負債の金額を差し引いた額は、政府から機構に対し出資されたものとされており、法第5条の規定により、同額を機構の資本金の額とすることとされている。そして、振興会が貸し付けたり預託したりしていた資金(以下「貸付金等」という。)に係る債権についても、振興会が独立行政法人に移行する際に機構に資産として承継されていて、その金額は上記の政府出資金の額を算定する際に資産の額の一部として取り扱われており、この貸付金等に係る債権は対応する負債がないことからその全額が政府出資金の一部を構成している。
 上記貸付金等に係る債権のうち、独立行政法人に移行した15年10月以降に機構に償還等された貸付金等の金額については、法附則第4条の規定により、経済産業大臣が機構の業務に必要な資金に充てるべき金額を勘案して機構の国庫納付額を定めたときは、当該金額を国庫に納付しなければならないとされている。そして、同条の規定によると、機構は当該規定により国庫納付を行った場合は、この納付額により資本金を減少するものとされている。
 経済産業大臣が、機構に償還等された15年度の貸付金等について、16年度に上記の規定に基づき国庫納付額を定めた際に、100億円がコンテンツ産業国際展開支援に係る預託に必要な資金であるとして機構が保有することとされ、機構は前記のとおり同額をA社に預託している。また、機構は、保有資産のうち67億2006万余円及び21億0492万余円を事務所保証金としてそれぞれB社及びC社に預託している。

(3) 独立行政法人の業務の効率性及び透明性

 独立行政法人は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)において、適正かつ効率的にその業務を運営するとともに、その業務内容を公表することを通じて、その組織及び運営の状況を国民に明らかにすることなど効率性、透明性が求められている。このため、独立行政法人は、中期計画、財務諸表等の事項について公表が義務付けられているとともに、外部の有識者による客観的な評価を受けそれに応じた見直しが求められるなど、事後の点検を厳格に行うことになっている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 近年の我が国の厳しい財政状況下において、独立行政法人に対しても、「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定。以下「整理合理化計画」という。)が策定されたことなどにより、保有資産の規模の見直しや不要な資産の国庫返納も含めた検討が求められている。また、貴省が認可している機構の第二期中期計画において計画期間(19〜22年度)中の運営費交付金及び国庫補助金の収入額が合計で1033億9800万円と計画されており、今後も国の負担が見込まれる状況である。
 そこで、本院は、合規性、経済性、有効性等の観点から、機構が資産として保有している保証金が機構の行っている事業の規模に見合った妥当なものとなっているか、保証金を民間業者に預託して運用させその利息収入を機構の事業費に充てるという事業の実施方法は適切かなどについて、貴省、機構本部、大阪本部及び4貿易情報センター(注) において、当該事業に係る契約書等の書類により会計実地検査を行った。

 4貿易情報センター  名古屋、愛媛、北九州、大分各貿易情報センター

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 保証金に係る事業の規模等

 コンテンツ委託契約による事業は、機構が国際映画祭の併設マーケット期間中における出展日本企業に対する国際商談支援のための海外バイヤーの招請、ガイドブックの作成等をA社に実施させているものであり、その事業規模は、16年度から21年度まで各年度とも6000万円程度の事業費を支出上限としていて、コンテンツ預託金の運用による利息収入見合いの規模となっている。また、貸室賃貸借契約による賃料・共益費の支払額は各年度とも1億5000万円程度である。
 上記のことから、機構が、各年度とも両事業について現在と同様の規模で実施するとすれば合計で2億1000万円程度の事業費となり、これを賄うために、資産総額(904億0345万余円)の2割強を占める188億2499万余円という多額の資産を保有して預託し続けているのは、資産保有の必要性について合理的な理由を求めるなどとしている整理合理化計画等の趣旨に沿わないものと認められる。
 また、機構は、コンテンツ預託金及び事務所保証金のほか、愛媛、北九州、大分各貿易情報センターに係るセンター設置保証金16億3080万余円についても、民間業者に長期間預託し、預託先が運用した各年度の利息収入を機構が預託先等へ支払う経費に充てる方法により事業を行っており、上記と同様に整理合理化計画等の趣旨に沿わないものと認められる。

イ コンテンツ委託契約及び貸室賃貸借契約による事業の競争性並びに事務所保証金の必要性

 コンテンツ委託契約及び貸室賃貸借契約による事業の実施方法は、いったん契約すると長期間にわたり同一業者との契約が継続されることになり、競争性や透明性が十分に確保されないものとなる。また、これらの契約方法は、利息収入見合いで事業を実施するという当該事業の必要性とは別の要因であらかじめ事業費の上限額が各年度ほぼ同額で設定されるため、必要性のない事業まで実施するリスクを生じさせている。
 さらに、事務所保証金については、貸室賃貸借契約において、契約の相手方が預託金を運用するという条件が付されているが、このような条件は、他の機構の事務所等に係る賃貸借契約では付されていないものである。また、当該契約には賃貸借期間満了日までの解約禁止条項が設けられていたり、別途敷金が機構からB社及びC社に預託されていたりすることから、事務所保証金により保証しなければならない必要性はないものである。

ウ 保証金の運用による収益及びこれを充てた事業の費用の損益計算書への計上

 機構は、20年度の保証金に係る会計処理について、保証金の運用による同年度の利息収入2億0111万余円とこれを充てた事業費の額2億0110万余円は保証金の預託先である民間業者の事業に係る収支であるとして、当該金額は同年度の損益計算書に計上されていない。
 しかし、当該保証金に係る収入額及び支出額は実質的に機構の業務に係る収入支出の一部であり、これらが機構の損益計算書に反映されることとならないのは、業務運営の状況を国民に明らかにするという独立行政法人通則法の規定の趣旨に沿わないものと認められる。

(改善を必要とする事態)

 上記のように、機構において、民間業者に預託して運用させその利息収入により事業を行うことを目的として多額の保証金(204億5580万余円)を長期間にわたり保有し続けている事態は、資産保有の妥当性や事業の競争性、透明性確保の面から適切とは認められない。また、保証金に係る事業の収支が損益計算書に反映されていない事態は、独立行政法人に要請される業務運営の透明性確保の面で適切とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、整理合理化計画等の趣旨を踏まえた見直しが十分でなかったことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 近年の我が国の厳しい財政状況にかんがみ、独立行政法人には、業務の効率的な運営と透明性の確保及び適正な規模の資産保有と不要な資産の国庫返納も含めた検討が求められている。
 ついては、貴省において、預託先に運用させその利息収入を事業費に充てるという事業の実施方法を見直すとともに本件保証金204億5580万余円を含めた機構が保有する資産を適正な規模となるよう機構に検討させ、これにより不要となる資産は国庫に返納させることができることとするよう意見を表示する。