会計名及び科目 | エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定) | ||||
(項)エネルギー需給構造高度化対策費 | |||||
平成18年度以前は、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計(石油及びエネルギー需給構造高度化勘定) | |||||
(項)エネルギー需給構造高度化対策費 | |||||
部局等 | 資源エネルギー庁 | ||||
補助の根拠 | 予算補助 | ||||
補助事業者 (事業主体) |
4団体 | ||||
間接補助事業者 (事業主体) |
52,811者 | ||||
補助事業 | 住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業費補助金(高効率給湯器導入支援事業) | ||||
補助事業の概要 | 民生部門における省エネルギー対策の一環として、高い省エネルギー性が認められる高効率給湯器の導入に対して支援を行うもの | ||||
高効率給湯器のうちガスエンジン給湯器の購入設置者に交付した国庫補助金額 |
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補助の目的に沿って効率的に交付されていない国庫補助金相当額 |
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資源エネルギー庁は、「地球温暖化対策推進大綱(平成14年3月19日地球温暖化対策推進本部決定)」に基づき、従来方式に比べて高い省エネルギー性が認められる住宅・建築物用の高効率給湯器の導入を政策的に支援することとして、住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業費補助金(高効率給湯器導入支援事業)による補助事業を実施している。そして、同庁は、平成15年度から、同事業において、ガスエンジン給湯器(ガスエンジンにより発電を行うユニットとガスエンジンの排気等から熱を回収して給湯や暖房を行う貯湯ユニットで構成された高効率給湯器システム)を購入設置する者(間接補助事業者。以下「購入設置者」という。)にその経費の一部を補助する民間団体等(以下「補助事業者」という。)に対してその実施に要する経費等を補助する事業(以下「ガスエンジン給湯器補助事業」という。)を実施している。
そして、ガスエンジン給湯器補助事業の目的について、同庁は、ガスエンジン給湯器の購入価格が、エネルギー効率の低い従来の機器(以下「従来機器」という。)の購入価格と比較して高額であることから、双方の機器の購入価格等の価格差を対象として、その範囲内で補助金を交付し支援することによりガスエンジン給湯器の導入を促進することとしている。
ガスエンジン給湯器補助事業の実施に当たり、同庁は、15年度以降、毎年度2団体延べ4団体(注)
を補助事業者として選定して事業を行わせてきている。そして、補助事業者は、毎年度、補助金の交付手続、交付対象、交付額、補助金の交付対象とするか否かを決定するため従来機器の購入価格を基に設定した基準額等を記載した業務方法書及び実施計画書を同庁に提出して経済産業大臣の承認を受け、これにより事業を実施している。
このうち、基準額は、補助事業者が15年当時に市場で普及していた従来機器の購入価格の市場調査を行い、これを基に設定したもので、分類ごとに285,000円から881,700円となっており、補助事業者は20年度まで毎年度同額を基準額としてきている。
そして、補助金の交付対象については、ガスエンジン給湯器の購入価格が上記の基準額以上のものとし、その交付額は、15年度及び16年度はガスエンジン給湯器の購入価格と基準額との価格差の2分の1の額とし、また、17年度以降は、ガスエンジン給湯器の分類ごとに定額(100,000円から916,000円)とするなどしている。
上記のように17年度以降の交付額を定額としたことについて、同庁は、購入設置者に対する補助金交付事務を簡素化するなどのためとしており、ガスエンジン給湯器の市場価格が基準額と比較して相当高額なため、17年度以降、補助金額を定額として交付しても、基準額との価格差の範囲内で交付されると認識していたとしている。
同庁は、上記のとおり、17年度以降は、購入価格が基準額以上のガスエンジン給湯器を対象として定額により補助金を交付する方法に変更している。
一方、ガスエンジン給湯器は市販されてから数年を経過しており、その間に市場価格が低下してきていることが考えられる。このような中で定額の補助金を交付し続けていると、ガスエンジン給湯器の購入価格と基準額との価格差が小さくなり、補助金額が購入価格と基準額との価格差を超えることになる場合が生ずると考えられる。
そこで、本院は、効率性等の観点から、限られた予算で効率的に支援を実施してガスエンジン給湯器の導入を促進するために補助金がガスエンジン給湯器の購入価格と基準額との価格差を超えることなく交付されているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、17年度から20年度までに、購入設置者52,811者に機器購入費分の補助金額を定額で交付した52,835台、国庫補助金額計89億7092万余円を対象として、同庁及び各補助事業者において交付申請書、実績報告書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
購入設置者から提出された設置工事完了報告書等によると、17年度から20年度までに本件補助事業により設置されたガスエンジン給湯器52,835台のうち2,119台、国庫補助金額計3億7087万余円について、その購入価格と基準額との価格差を超えて補助金が交付されていた。そして、その超えた分に相当する額は計1億1781万余円となっていた。
一方、ガスエンジン給湯器については、経済産業省設置法(平成11年法律第99号)に基づき設置されている総合資源エネルギー調査会の需給部会の「2030年のエネルギー需給展望」(平成17年3月)によると、22年度末までに34万kw相当の設備を導入することを目標とされている。そして、同庁は、これに対する20年度末現在の普及状況は目標の約3分の1の11.8万kwにとどまっていることから、今後も普及促進に努めていく必要がある状況にあるとしている。
このように、限られた予算でガスエンジン給湯器の導入を効率的に支援し促進するためには、購入価格と基準額との価格差の範囲内で補助金を交付して事業を実施する必要があるのに、基準額との価格差を超えて補助金が交付されている事態は本件補助事業の目的に沿って効率的に補助金が交付されていないことから適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、同庁において、補助事業者に対する補助事業の目的や補助金額の設定の考え方についての周知が十分でなかったこと、補助事業の対象となるガスエンジン給湯器の市場価格が低下してきている状況において、補助金を定額で交付し続けると、補助金額が基準額との価格差を超えて交付され、事業が効率的に実施できない場合が考えられるのに、ガスエンジン給湯器の購入価格の実態を十分に把握することなく、補助事業者の申請した基準額や補助金額の設定をそのまま承認して、事業を実施させていたことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、同庁は、ガスエンジン給湯器の市場での普及状況や市場価格の実態に基づいて、基準額との価格差の範囲内で補助金を交付して、効率的に機器の導入支援が実施されるよう、次のような処置を講じた。
21年7月に、補助事業者に対して、事業の目的、補助金額の設定の考え方を周知するとともに、同年9月に、購入価格と基準額との価格差を超えて補助金が交付されないよう、ガスエンジン給湯器の購入価格が、基準額と定額の補助金額との合計額を超える場合に補助金の交付の対象とするなどとする業務方法書の変更申請を承認して、同年9月の募集から実施させている。