会計名及び科目 | 港湾整備特別会計(平成20年度以降は社会資本整備事業特別会計(港湾勘定))(項)港湾事業費 |
部局等 | 関東地方整備局東京港湾事務所(契約庁) |
関東地方整備局(支出庁) | |
契約名 | 東京港航空写真撮影業務等8契約 |
契約の概要 | 東京港湾事務所管内の港湾施設の航空写真を撮影するもの |
契約の相手方 | ニッセイエブロ株式会社、株式会社創報 |
契約 | 平成18年7月〜19年3月 随意契約 |
契約額 | 7,570,500円
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支払 | 平成18年11月〜19年4月 |
適切とは認められない契約額 | 7,570,500円
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関東地方整備局東京港湾事務所(以下「事務所」という。)は、平成18年度に、東京港航空写真撮影業務を、随意契約によりニッセイエブロ株式会社及び株式会社創報に請け負わせて実施しており、その件数及び契約額はそれぞれ4件3,864,000円、4件3,706,500円、計8件7,570,500円となっている。
本件業務は、広報業務に資するなどのために、東京港における埠頭、運河等の港湾施設の航空写真を撮影するものであり、事務所は、成果品を受領した上、18年11月から19年4月までの間に請負代金を支払っている。
国が契約を締結する場合には、公正性、透明性及び競争性を確保するため、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等により、原則として一般競争に付することとされている。そして、工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約で予定価格が100万円を超えない場合などは例外的に随意契約によることができるとされている。
また、事務所における契約は、要求元となる部署において仕様書等を作成して分任支出負担行為担当官(東京港湾事務所長)に対して調達を要求し、これを受けた分任支出負担行為担当官が見積書の徴取や契約先の選定等の手続を経て行うことになっている。
事務所における支出負担行為の事務のうち、予定価格が100万円を超えない印刷製本費、修繕費及びその他雑役務費に関するものについては、国土交通省所管会計事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第60号)により、事務所の経理管理官が分任支出負担行為担当官の代行機関(以下「代行機関」という。)として処理することができるとされている。そして、17年4月1日から19年3月31日までの間は、経理管理官の職にあった職員Aが代行機関として当該事務を行っている。
20年3月、代行機関であった職員Aが、本件業務を随意契約による契約締結が可能な金額になるよう分割して特定の業者に受注させ、その見返りに金品を収受する不適切な事態があると報道された。
本院は、上記の報道があったこと、また、同年8月に、国土交通大臣から会計検査院法第27条の規定に基づく報告(会計に関係のある犯罪の報告)を受けたことなどを踏まえ、合規性等の観点から、契約の方法は適切か、事務所における内部統制は十分機能しているかなどに着眼して、事務所において、関係職員から事実関係を聴取したり、特記仕様書、本件業務の成果品等を確認したりするなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。
事務所は、本件8契約をいずれも予定価格が100万円を超えないものであるとして随意契約により締結していた。
しかし、本件業務は、事務所管内の港湾施設を八つの区域に分割して契約ごとに指定された区域の港湾施設の現況を撮影するものであり、撮影時期に特段の条件を設けていないことから、すべてを同一期間内に撮影しても支障のないものであった。したがって、本件業務を分割して発注する合理的な理由はなく、一括して一般競争に付するべきであったと認められる。
上記のように、一括して一般競争に付することが可能な業務について、8件に分割して随意契約によって発注した経緯は以下のとおりであった。
東京港湾事務所長は、代行機関であった職員Aに、18年4月1日から19年3月31日までの間、広報業務を兼務させていた。このため、職員Aは、この間、見積徴取先及び契約先を選定する代行機関としての業務に加え、広報業務に関する契約の要求元として仕様書等を作成して調達を要求する業務を一人で行い得る立場となった。職員Aは、この立場を利用して一括して競争に付するべき本件業務を意図的に予定価格が100万円以下となるように分割して随意契約により特定の業者に発注していた。
したがって、本件業務を随意契約により発注していたことは、一般競争契約を原則としている国の会計法令の趣旨に反していて適切でなく、これに係る契約額7,570,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、職員Aにおいて、会計法令を遵守して適正に契約事務を行う認識が欠如していたこと、事務所等において、本件業務に係る一連の契約手続を職員が単独で処理できることとなるのに、契約事務等が適正に行われているか確認するなどの体制を整備したり、内部監査等を十分行ったりするなどの措置を執っておらず、契約事務等に関する内部統制機能について認識が欠如していたことなどによると認められる。