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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの|
  • (2) 工事の設計が適切でないもの

舗装構造の設計が適切でないもの


 舗装構造の設計が適切でないもの  (1件 不当と認める国庫補助金 13,750,000円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(500) 岩手県 紫波郡矢巾町 町道中央1号線地方道路交付金 20 25,128
(25,000)
13,750 25,128
(25,000)
13,750

 この補助事業は、矢巾町が、同町藤沢地内において、大学附属病院等の建設に伴う交通量の増大に対応するため、町道中央1号線の延長959.5mの舗装工等を実施したものである。
 本件工事は、北側280.0m区間(以下「北側」という。)については平成元年に、また、南側697.5m区間(以下「南側」という。)については2年にそれぞれ築造された舗装を改良するため、表層工、路盤工等を行うものである。
 同町は、本件工事の舗装構造の設計に当たって、アスファルト舗装要綱(社団法人日本道路協会編。以下「要綱」という。)等に基づき、舗装の等値換算厚(注1) (以下「T 」という。)が、設計CBR(注2) と交通量区分(注3) に応じて示されるT (以下「目標T 」という。)を上回る舗装構造とすれば、所定の設計期間(標準10年)を通じて安全かつ円滑な交通が確保されるとして、次のように設計し、これにより施工していた。
 すなわち、北側については、設計期間を10年とし、当該区間の設計CBRを6%と設定して、舗装のT が22.7cmとなる舗装構造とすれば、これが目標T 21.0cmを上回ることから、設計計算上安全かつ円滑な交通が確保されるとしていた。また、南側については、27年の大学附属病院建設後に再度改良を予定しているため、設計期間を標準の10年より短い7年とし、当該区間の設計CBRを3%と設定して、舗装のT が19.7cmとなる舗装構造とすれば、これが目標T 19.0cmを上回ることから、設計計算上安全かつ円滑な交通が確保されるとしていた。
 しかし、北側及び南側の設計がそれぞれ次のとおり適切でなかった。
 すなわち、舗装工事を施行するに当たっては、国土交通省が定めた「舗装の構造に関する技術基準」(平成13年国道企第55号ほか国土交通省道路局長ほか通知。以下「基準」という。)に基づいて設計すべきであったのに、同町は、北側、南側いずれについても基準に基づくことなく前記の要綱のみに基づいて設計していた。また、北側については、当該区間で既設舗装を実施した際の設計CBRに基づき設計CBRを3%と設定すべきであったのに、誤って別の区間の設計CBRに基づき6%と設定していた。さらに、南側については、設計期間を7年としていることから、基準に基づき、舗装に必要なT を交通量区分に応じた設計期間10年の疲労破壊輪数(注4) に当該設計期間の10年に対する割合(10分の7)を乗ずるなどして算定すべきであったのに、これによることなく、誤って交通量調査結果に基づいた交通量区分より一段階下の交通量区分を適用して目標 を過小に設定するなどして舗装構造を設計していた。
 そこで、北側及び南側について、改めて、適正な設計CBRと交通量区分を適用して基準に示された算定式により舗装に必要な を算出すると、それぞれ25.1cm及び23.8cmとなり、前記の設計計算における 22.7cm及び19.7cmはこれを下回っていて、いずれも設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 したがって、本件舗装工(工事費相当額25,128,600円)は、舗装構造の設計が適切でなかったため、所定の設計期間における安全かつ円滑な交通が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金13,750,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同町において、本件舗装構造の設計等に対する認識が十分でなかったことによると認められる。

 等値換算厚  アスファルト舗装の路盤から表層までの各層をすべて加熱アスファルト混合物で造ったとした場合の必要な舗装厚

 設計CBR  アスファルト舗装の設計に用いる地盤の強さを表す舗装厚の決定に使われる指標。日本工業規格(JIS)で定められた所定の荷重に対する地盤の強さを百分率で表わすもので、値が大きいほどその地盤は強いとされる。

 交通量区分  平均の1日1方向当たりの大型車交通量が100台以上250台未満、250台以上1,000台未満等に区分された交通量の区分

 疲労破壊輪数  舗装道において、舗装路面に49kNの輪荷重を繰り返して加えた場合に、舗装にひび割れが生ずるまでに要する回数で、舗装を構成する層の数並びに各層の厚さ及び材質が同一である区間ごとに定められるもの