ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの|
  • (2) 工事の設計が適切でないもの

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


 水路工の設計が適切でないもの  (1件 不当と認める国庫補助金 3,037,000円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(502) 福岡県 福岡県 柳川筑後線(有沿側道)道路新設工事(1工区) 18、19 97,221
(97,221)
53,471 5,523
(5,523)
3,037

 この補助事業は、福岡県が、柳川市矢加部地内において、地域高規格道路の側道(延長89.1m)等を整備するために、盛土工、水路工等を実施したものである。
 このうち盛土工は、当該地域が粘土層等による軟弱な地盤であるため、「道路土工軟弱地盤対策工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づき、地盤沈下により最大約180cmの沈下が生ずることを見込んだ盛土高とするなどの地盤沈下対策を行うこととしている。
 また、水路工は、用排水を行うための既設水路の機能回復を目的として、プレキャストコンクリート製のU型水路(以下「水路」という。)を新設するもので、盛土(高さ8.1m〜9.0m)に隣接するなどして、高さ1.0m、幅1.0m、延長45.0mの水路(以下「A型水路」という。)及び高さ2.0m、幅2.0m、延長74.0mの水路(以下「B型水路」という。)等を築造するものである(参考図1参照)。そして、水路工については、既設水路の機能を早期に確保することとして、盛土工を施工する前に水路を設置する旨の指示を請負業者に行い、請負業者はこれに従って施工していた。
 しかし、前記の指針によると、軟弱地盤では、盛土等によって周辺地盤の隆起や不等沈下を引き起こすことが多いため、盛土に接して施工される構造物が施工中又は施工後に過大な変状を生ずることを避けなければならないとされている。そして、そのためには、盛土を先行して行い、沈下が十分進んだ後に、構造物を施工するなどの工法を検討することとされているのに、同県は、仮排水路を先に設置して盛土の沈下が進んだ後に本件水路を築造するなどの措置を執らずに、盛土に先立って水路を施工させていた。
 そこで、現地の状況を確認したところ、水路のうち、盛土に隣接している箇所に不等沈下が生じており、A型水路のうち延長36.0m区間については左壁の天端高さが右壁よりも3.2cm〜9.3cm、また、B型水路のうち延長40.0m区間についても同様に2.6cm〜17.1cmそれぞれ低くなっていて、いずれも盛土側に傾斜していた。また、A型水路及びB型水路の底版部については、それぞれ上記の区間において、基準高より最大15.9cm及び13.5cm沈下していて、同県制定の「土木工事施工管理の手引き」に定めている水路工の出来型管理基準及び規格値の基準高に対する許容値±3cmを大幅に超えていた(参考図2参照)。さらに、B型水路については、上記区間のうち延長34.0mの区間にわたり、設計勾配に対して逆勾配(平均4.4/1000)となっていた。
 したがって、本件A型水路及びB型水路のうち、上記の延長36.0m区間及び40.0m区間(工事費相当額5,523,000円)は、設計が適切でなかったため、大幅な沈下、逆勾配等が生ずるなどしていて、工事の目的を達成しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,037,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同県において、水路工の沈下対策に対する工法等の検討が十分でなかったことなどによると認められる。

盛土及び水路の関係概念図、水路の断面図