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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第12 国土交通省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

道路附属物等の損傷事故によって必要となった復旧工事に係る負担金債権の管理について、督促状による督促を適時適切に行い、滞納処分及び破産手続に伴う債権の申出に係る具体的な実施要領等を整備することなどにより、負担金債権の適切な管理を行うよう是正改善の処置を求めたもの


(3) 道路附属物等の損傷事故によって必要となった復旧工事に係る負担金債権の管理について、督促状による督促を適時適切に行い、滞納処分及び破産手続に伴う債権の申出に係る具体的な実施要領等を整備することなどにより、負担金債権の適切な管理を行うよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計 (道路整備勘定)
      (項)附帯工事費負担金収入
    平成19年度以前は、  
    道路整備特別会計 (項)附帯工事費負担金収入
部局等 10地方整備局等及び22国道事務所等
損傷事故によって必要となった道路附属物等の復旧工事に係る負担制度 損傷事故により道路附属物等の復旧工事が必要となった場合に、当該復旧工事に要した費用の全部又は一部を、損傷事故を起こした者等に負担させる制度
(1)収納未済となっている債権
580件 2億2599万円 (背景金額)(平成20年度末現在)
(2)不納欠損として処理した債権
383件 1億0398万円 (平成16年度〜20年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 道路附属物等の損傷事故によって必要となった復旧工事に係る負担金債権の管理について

(平成21年10月30日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 制度の概要

(1) 道路附属物等の損傷に関する負担制度

 貴省は、道路法(昭和27年法律第180号)の規定に基づき、国道の維持、修繕等の管理を行っており、管理する国道に道路照明やガードレールなど(以下「道路附属物等」という。)の損傷が発生した場合に復旧工事を行っている。この復旧工事に要する費用は毎年多額なものとなっており、貴省は、同法の規定に基づき、損傷事故を起こした者等に復旧工事に係る費用に相当する額の全部又は一部を負担させることとしている。

(2) 道路附属物等の復旧工事に係る負担金債権の管理事務

 国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号。以下「債権管理法」という。)等の規定により、歳入徴収官等は、道路附属物等の復旧工事に係る負担金を損傷事故を起こした者等に請求する権利(以下、この権利を「負担金債権」という。)が発生した場合は、遅滞なく、当該損傷事故を起こした者等(以下「債務者」という。)の住所、氏名、債権金額等を債権管理簿に記載して、負担金債権の履行を請求するため、債務者に対して納付期限を定めて納入の告知をしなければならないとされている。そして、納付期限を過ぎてもなお履行されない場合には、債務者に対して、原則として督促状によりその履行を督促しなければならないとされている。
 なお、貴省等は、負担金債権について、国土交通省所管会計事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第60号)の規定に基づき、地方整備局総務部長等に歳入徴収官としてその管理を行わせている。そして、地方整備局等の管内の事務所長が分任歳入徴収官としてその事務の一部を分掌している。
 また、負担金債権の全部又は一部が、督促の後、相当の期間を経過してもなお履行されない場合、歳入徴収官等は、地方整備局長等の道路管理者に対して、滞納処分の手続をとることを求めなければならないこととされている。
 そして、道路法の規定により、道路管理者は、国税滞納処分の例により、負担金を徴収することができることとされており、その要件は、督促状により督促をしてもなお債務者が負担金を納付しない場合とされている。
 さらに、歳入徴収官等は、債権管理法の規定に基づき、債務者が破産手続開始の決定を受けたことなどの事実を知った場合、配当の要求その他債権の申出をすることができるときは、直ちに、そのための措置を執らなければならないとされている。そして、道路管理者は、国税滞納処分の例により、破産管財人等に対して、交付要求書により交付要求を行うことで、一般債権に優先して弁済を受けることができるとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 貴省においては、毎年度、多額の負担金債権が発生しており、法令の規定に基づき、その管理を適正に行うことが求められている。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、負担金債権に係る管理事務は適切に行われているかなどに着眼して、10地方整備局等(注1) 管内の22国道事務所等(注2) が管理している負担金債権のうち、平成20年度末現在で収納未済となっているもの(以下「未収債権」という。)580件、2億2599万余円及び16年度から20年度までの5年間に不納欠損として処理したもの(以下「不納欠損債権」という。)383件、1億0398万余円を対象として、10地方整備局等及び22国道事務所等において、債権管理簿等の関係書類により会計実地検査を実施した。

 10地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局、内閣府沖縄総合事務局

 22国道事務所等  秋田河川国道、能代河川国道、山形河川国道、相武国道、常陸河川国道、長岡国道、金沢河川国道、名古屋国道、多治見砂防国道、福井河川国道、福知山河川国道、豊岡河川国道、三次河川国道、山口河川国道、松山河川国道、大洲河川国道、福岡国道、北九州国道、佐伯河川国道、延岡河川国道、南部国道各事務所、札幌開発建設部

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 督促状による督促の状況について

 前記のとおり、歳入徴収官等及び道路管理者は、納付期限までに負担金が納入されないときは、債務者に対して納入を督促しなければならないこととされている。そして、その督促の時期については、法令上の規定はないが、各地方整備局等から各事務所等への通知等において、原則として納付期限から50日(沖縄総合事務局は10日)以内に督促状を送付することなどを定めている。
 しかし、納付期限から180日以上経過した後に督促状による督促を行っているものが、前記の未収債権580件のうち76件(これに係る負担金債権額9134万余円)、納付期限から180日以上経過しているのになお、督促状による督促を行っていないものが172件(同7095万余円)あった。これらは、債務者が支払う意思を示しているなどの理由により、督促状による督促を行うまでに長期間が経過しているものである。
 また、前記の不納欠損債権383件(同1億0398万余円)のうち、5年間の時効期間が経過して債権が消滅していたものが365件(同8663万余円)となっていた。この365件の債権の中には、督促状による督促を行わないまま時効消滅したものが、債務者の行方不明等の場合を除いて19件(同736万余円)あり、このうち2件(同184万余円)については、督促状以外の方法による督促の実施の有無は確認できなかった。

<事例>

 札幌開発建設部では、平成15年8月に、橋りょうの欄干の損傷事故に伴う負担金債権977,713円が発生した。
 しかし、同開発建設部は、その後5年間、債務者に対して督促状による督促を行わず、20年9月に、時効期間が経過したため、不納欠損として処理していた。
 そして、その間の督促状以外の方法による督促の実施の有無は確認できない状況である。

(2) 滞納処分の状況について

 前記のとおり、道路管理者は、督促状による督促を行った債務者が指定する期限までに納付すべき負担金を納付しない場合、国税滞納処分の例により、負担金を徴収することができるとされている。
 そこで、16年度から20年度までの間の滞納処分の実施状況を検査したところ、19年3月に差押えを執行したものが1件(普通預金88,284円及び不動産)あるのみで、前記の不納欠損債権383件(同1億0398万余円)の中には、負担金債権の額が1件当たり100万円以上のものが15件(同3843万余円)含まれているなど比較的高額なものがあるにもかかわらず、限られた人員で業務を行っているなどの理由により、道路管理者による滞納処分は全く行われていない状況であった。

(3) 債権の申出の状況について

 前記のとおり、道路管理者は、債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、国税滞納処分の例により、破産管財人等に対して、交付要求書により交付要求を行うことで、一般債権に優先して弁済を受けることができるとされている。しかし、交付要求を行う必要があった負担金債権13件(同2393万余円)のうち、交付要求を行ったものは5件のみで、回収できた負担金債権は560万余円であった。そして、残る8件(同513万余円)については、負担金債権として交付要求を行えば一般債権に優先して弁済を受けることができたのに、交付要求の方法についての認識が十分でなかったことなどから、一般債権として申出を行っていたため、優先して弁済を受けることができず、回収できた負担金債権は17万余円にとどまっていた。その後、上記の8件のうち4件(同120万余円)については、消滅時効により不納欠損として処理された。

<事例>

 福井河川国道事務所では、平成15年4月に、樹木の損傷事故に伴う負担金債権467,135円が発生した。その後、同事務所は、同月に債務者に対して負担金の納入告知書を発送したが、同年5月、裁判所から当該債務者の破産手続開始の決定を受けた。
 しかし、同事務所は、裁判所に対して一般債権として債権の申出を行ったため、16年1月に破産管財人より配当を実施することができない旨の通知を受け取った。そして、負担金債権467,135円は、21年2月に不納欠損として処理された。

(是正改善を必要とする事態)

 上記のように、負担金債権の管理方法が債権管理法、道路法等に定められているにもかかわらず、歳入徴収官等又は道路管理者が、督促状を適切に発行していなかったり、滞納処分をほとんど実施していなかったり、破産手続に伴う債権の申出を適切に行っていなかったりしていて、負担金債権が不納欠損として処理されるなどしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のようなことなどによると認められる。
ア 22国道事務所等において、督促状による督促を、法令に基づき適切に実施することについての認識が十分でないこと
イ 10地方整備局等において
(ア) 滞納処分の実施方法や手続等に関する具体的な実施要領等を整備しておらず、滞納処分を適切に実施することについての認識が十分でないこと
(イ) 破産手続に伴う債権の申出の方法等についての具体的な実施要領等を整備しておらず、また、法令に定められた手続を適切に実施することについての認識が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 今日の厳しい財政状況の下、国の債権の適切な管理は重要な課題となっている。
 ついては、貴省において、前記の検査結果を踏まえて、負担金債権の適切な管理を行うよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 各地方整備局等に対して、督促状による督促を法令に基づき適時適切に実施するよう、周知徹底すること
イ 滞納処分の実施方法や手続等に関する具体的な実施要領等を整備して、これを各地方整備局等に対し、周知徹底し、実施に向けた体制整備を図るよう指示すること
ウ 破産手続に伴う債権の申出の方法等に関する具体的な実施要領等を整備して、これを各地方整備局等に対し、周知徹底し、申出を適切に行うよう指示すること