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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

河川改修事業を実施するために取得した土地について、適切な管理が行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに工事着手までの間の活用が図られるよう意見を表示したもの


(6) 河川改修事業を実施するために取得した土地について、適切な管理が行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに工事着手までの間の活用が図られるよう意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)都市計画事業費等
  治水特別会計(平成20年度以降は、社会資本整備事業特別会計(治水勘定))
    (項)河川事業費等
部局等 直轄事業 3地方整備局  
  補助事業 23府県  
事業及び補助の根拠 河川法(昭和39年法律第167号)、予算補助
事業主体 直轄事業 3河川事務所  
  補助事業 府1、県22、市10  
    計 36事業主体  
河川改修事業の概要 洪水等による災害発生の防止を図るなどのため河川を総合的に管理し、公共の安全を保持することなどを目的として、堤防の築造、護岸の整備、橋りょうの架け替え等を行う事業
検査の対象とした5年以上工事に未着手となっている河川改修事業のために取得した土地の面積及び取得金額
直轄事業 96,542m2  
  36億9823万円 (背景金額)(昭和58年度〜平成15年度)
補助事業 2,147,650m2  
  799億1243万余円 (昭和44年度〜平成15年度)
上記のうちの補助事業に対する国庫補助金交付額
  372億5507万円 (背景金額)
前記土地のうち無断で使用されているものの面積及び取得金額
補助事業 113,392m2  
  49億9906万円 (昭和46年度〜平成15年度)
上記に対する国庫補助金交付額
  23億3022万円  

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに意見を表示したものの全文】

 河川改修事業を実施するために取得した土地の管理及び活用について

(平成21年10月30日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により意見を表示する。

1 事態の概要

 国土交通大臣及び都道府県知事等は、河川法(昭和39年法律第167号)に基づき、河川管理者として、公共用物である河川について、洪水等による災害発生の防止、適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全がされるように総合的な管理を適正に行わなければならないとされている。
 河川管理者は、水系ごとに、河川改修事業を実施するための基本となるべき方針に関する事項を定め、その方針に沿って計画的に河川の整備を実施すべき区間について、当該河川の整備に関する計画(以下「河川整備計画」という。)を関係都道府県知事等の意見を聴取した上で策定して、これに沿って計画策定時から20年間から30年間の期間で河川改修事業を実施することとなっている。
 そして、河川管理者は、河川改修事業の実施に当たり、河川整備計画の策定後、河川管理施設等の設計、用地調査の結果等に基づき、事業に必要な土地の面積及び所有者を確定して、所有者と交渉を行い、当該土地を取得した後に工事に着手することとしている。また、河川改修事業を実施するために取得した土地(以下「事業用地」という。)は、一部を除いて国有財産であり、国有財産法(昭和23年法律第73号)等により、適正な管理を行わなければならないとされている。
 河川改修事業については、原則として下流から順次改修を進めなければならないこと、改修済み箇所と改修未済箇所とが長期間交互に存在することは治水安全上望ましくないこと、また、土地収用を行うために必要な事業認定が受けにくいことなど、河川事業特有の制約がある。このような制約の下、河川改修事業では、事業用地の取得が難航したり、工事を実施する上で支障となる橋りょうの架け替え等に時間を要したりすることや、近年の財政状況の変化等により、事業期間が長期に及ぶとともに、事業用地取得時に予定されたとおりには工事着手が行えないことがある。
 また、貴省は、河川改修事業については、着工から完成までに長期間を要している場合が多いため、事業効果の発現状況が分かりにくいことなどから、事業の実施に当たっては、重要性・緊急性を考慮した事業の重点化により治水効果の早期発現を図る必要があるとして、平成17年12月に、「効果の見える河川事業への転換」の文書を河川事務所、都道府県等に配付した。そして、18年度から、河川改修が必要な区間を、一定期間で事業の効果が発現できる一連区間とそれ以外の区間(以下「一連区間外」という。)に区分して、一連区間については、予算の重点化を図るとともに、一連区間外については、一連区間の事業が完了するまでの間は原則として事業に着手しないこととしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 事業用地の取得に当たっては、従前は購入可能な土地を広範囲に取得していたが、前記の配付文書によって事業を重点化したことにより、今後は取得する土地が長期間工事に未着手となることは少なくなるものと見込まれる。
 しかし、前記の事情から、工事に未着手となっている事業用地は、その面積が膨大なものとなっている。
 そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、これらの工事に未着手となっている事業用地について、工事着手までの間の適切な管理や有効な活用がなされているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、河川改修事業においては、総合流域防災事業のように事業計画期間をおおむね5年としているものが見受けられることなどから、5年以上工事に未着手となっている事業用地(以下「未着手用地」という。)のうち、直轄事業として3河川事務所(注1) が昭和58年度から平成15年度までの間に取得した計96,542m (取得金額計36億9823万余円)並びに補助事業として23府県(注2) 及び6府県管内の10市(注3) が昭和44年度から平成15年度までの間に取得した計2,147,650m (取得金額計799億1243万余円、国庫補助金計327億5507万余円)を対象として、これらの3河川事務所及び33府県市において、用地取得台帳等の書類及び現地を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、上記の未着手用地については、近接する用地の取得が難航していることや、予算の制約等のために優先順位が高い他の事業箇所を重点的に整備していることなどから、次表のとおり、工事に未着手となっている期間が長期にわたるものが多数存在していた。

表 未着手用地の状況
事業主体 未着手用地の面積(A)(m2 (A)のうち10年以上のもの(m2 (A)に対する割合 (A)のうち15年以上のもの(m2 (A)に対する割合 (A)のうち20年以上のもの(m2 (A)に対する割合
直轄事業3事務所計 96,542 48,338 50.0% 8,213 8.5% 6,241 6.4%
補助事業33府県市計 2,147,650 1,416,457 65.9% 746,100 34.7% 423,926 19.7%
合計 2,244,192 1,464,795 65.2% 754,313 33.6% 430,167 19.1%

 これらの未着手用地の管理等の状況についてみると、次のような事態が見受けられた。

ア 未着手用地の無断使用について

 未着手用地については、不法耕作や不法投棄等が行われているとその排除や処理に提訴等が必要となるなどして、これらに時間を要して工事に早期に着手できなくなることがあるなどのため、適切な管理が必要である。
 しかし、旧地権者や周辺住民等により、未着手用地が、無断で田畑として耕作されていたり、無断で車両や資材等の置き場所等として使用されていたりしていて、国有財産法等に基づく適切な管理が行われていない事態が、19県市(注4) において昭和46年度から平成15年度までの間に取得した計113,392m (取得金額計49億9906万余円、国庫補助金計23億3022万余円)見受けられた。これらの事態は、事業主体が無断使用の事実や使用者を把握していなかったり、現地において用地境界が不明確となっていたりしていて、その排除等に長期間を要するなど、工事着手の支障となるおそれがあるものとなっている。
 そして、上記の無断使用されている未着手用地の中には、一定期間内に工事に着手し、完了することが予定されていることから、より適切な管理が求められる一連区間に存するものが、16県市(注5) において取得した計57,902m (取得金額計35億2943万余円、国庫補助金計17億2696万余円)含まれていた。
 これらについて事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 A県がB川総合流域防災事業において、下流側の工事(平成16 年度に完了)に引き続き工事に着手する予定で14、15両年度に取得した126m については、隣接する土地の所有者がその所有権を主張して、15年4月の取得直後から当該土地にロープを巡らして、立入り禁止の看板を立て、植樹や耕作を行うなど占有しており、度重なる土地の明渡し要求に応じないなどのため、当該土地を含む一連区間の工事に着手できない状況となっている。

 以上のように、未着手用地が無断で使用されている事態は、工事着手の支障となるおそれがあり、適切とは認められない。

イ 未着手用地の活用について

 今回検査を行った未着手用地2,244,192m の一部には、事業主体が、地元市町村等からの要望により、使用許可等を与えて、広場、運動場等として使用させ、公共の目的等のために活用されているもの(5府県市(注6) において、11件、59,514m )が見受けられたが、大部分は、工事着手までの間の活用に対する認識、理解等が十分でなく、事業主体において管理されているだけで、活用が図られていない事態が見受けられた。
 上記のうち、使用許可等を与えて使用させ、公共の目的等のために活用されているものについての事例を示すと、次のとおりである。

<事例2>

 埼玉県は、緑川右岸において広域基幹河川改修事業の予定地の一部として平成4、5両年度に取得した136m については、9年9月に戸田市から当該事業用地の使用についての申請を受けて、同月に同市に対して使用の許可を与え、市民農園として使用させている。

 以上のように、未着手用地の使用状況が事業主体によって異なっているのは、事業主体における工事着手までの間の活用に対する認識、理解等に差異があり、十分なものとなっていないことなどに起因していることから、活用に対する認識等の向上に資する基準等を 設けることが必要と認められる。
 そして、一連区間外に存する未着手用地については、今後も相当の期間、工事に未着手のまま本来の目的である河川改修事業の用に供されず、多額の国費を投入した事業の効果が発現するまでに相当の期間を要することとなることから、設けられた基準等に基づいて、将来実施する河川改修事業に支障のない範囲で、現地条件等からみて使用可能なものを公共の目的等のために活用させ、適切な維持管理を行わせつつ活用を図るべきであると認められる。

(是正及び是正改善並びに改善を必要とする事態)

 未着手用地について、国有財産法の規定等に反して適切な管理が行われておらず、旧地権者等により無断で使用されている事態及び工事着手までの間において有効に活用されていない事態は適切とは認められず、是正及び是正改善並びに改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、事業主体において適切な管理についての認識等が十分でないことにもよるが、貴省において、次のとおり十分な対応をしていないことなどによると認められる。
ア 補助事業における未着手用地について、無断で使用されている事態が全国的に多数発生しているのに、適切な管理を行うための指導が十分でないこと
イ 未着手用地について、事業主体における工事着手までの間の活用に対する認識、理解等が十分でないのに、その認識等の向上に資する基準等を示していないこと

3 本院が求める是正及び是正改善の処置並びに本院が表示する意見

 貴省及び事業主体は、河川改修の実施という事業本来の目的が早期に達成されるよう引き続き努力する必要があるが、貴省において、取得後5年未満のものも含めて、河川改修事業における工事に未着手となっているすべての事業用地に関して適切な管理及び工事着手までの間の活用が行われるよう、次のとおり是正及び是正改善の処置を求め並びに意見を表示する。
ア 事業主体に対して巡視や無断使用者に対する是正の指導等を行うなどの適切な管理が行われるよう指導を行い、これを周知徹底すること(会計検査院法第34条による是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めるもの)
イ 事業主体に対して活用に対する認識、理解等を促し、かつ、工事着手までの間の事業用地の活用に資するものとなるよう、活用についての基準等を示すこと(同法第36条による意見を表示するもの)

 3河川事務所  江戸川、出雲、川内川各河川事務所

 23府県  京都府、秋田、福島、群馬、埼玉、神奈川、富山、石川、福井、長野、静岡、三重、兵庫、奈良、鳥取、山口、徳島、香川、長崎、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 6府県管内の10市  横浜、川崎、相模原、静岡、浜松、京都、神戸、姫路、米子、長崎各市

 19県市  秋田、福島、群馬、埼玉、神奈川、富山、石川、三重、兵庫、奈良、鳥取、徳島、香川、長崎、大分、鹿児島各県、横浜、京都、神戸各市

 16県市  秋田、福島、群馬、埼玉、神奈川、富山、三重、兵庫、奈良、鳥取、徳島、長崎、大分、鹿児島各県、横浜、京都両市

 5府県市  京都府、埼玉県、横浜、川崎、京都各市