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  • 平成20年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

路面下空洞調査業務の契約及び実施に当たり、求める成果の内容を明確にしたり、すべての探査データの提出を求めたり、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入したりするよう改善の処置を要求し、占用企業者の負担金を適切に徴収するよう是正改善の処置を求めたもの


(7) 路面下空洞調査業務の契約及び実施に当たり、求める成果の内容を明確にしたり、すべての探査データの提出を求めたり、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入したりするよう改善の処置を要求し、占用企業者の負担金を適切に徴収するよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 (1) 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
      (項)道路環境改善事業費
(項)道路交通安全対策事業費
(項)北海道道路交通安全対策事業費
(項)地域連携道路事業費
(項)道路交通円滑化事業費
(項)附帯工事費
  (2) 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定)
      (項)附帯工事費負担金収入
部局等 (1) 北海道開発局及び15国道事務所等
  (2) 関東地方整備局
契約の概要 (1) 道路の路面下において発生する空洞を非破壊で探査するもの
  (2) 路面下空洞調査業務に係る費用の一部について占用企業者に負担を求めるもの
契約の相手方 (1) 財団法人道路保全技術センター、ジオ・サーチ株式会社
(平成20年度)
  (2) 11会社等(平成20年度)
契約 (1) 平成20年4月〜20年12月 簡易公募型プロポーザル方式に準じた手続を経た随意契約
  (2) 平成20年3月 路面下空洞探査に関する協定に基づく随意契約
支払額 (1)
6億5692万円
(背景金額)(平成20年度)

徴収額 (2)
6356万円
(平成20年度)

占用企業者の負担金の不足額  
1087万円
(平成20年度)

【改善の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

 路面下空洞調査業務の契約及び実施について

(平成21年10月28日付け 国土交通大臣あて)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求し、及び同法第34条の規定により是正改善の処置を求める。

1 業務の概要

(1) 路面下空洞調査業務の概要

 貴省は、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき、道路を常時良好な状態に保つようにその維持・修繕を行い、一般交通に支障を及ぼさないように努めており、日常パトロール等を実施して道路の状況を点検している。
 そして、道路の路面下においては、地下埋設物(注1) の破損等が原因と考えられる空洞が発生することがあり、発生した空洞が拡大するなどして路面近くにまで進行すると、交通荷重等の影響により路面が陥没するなどして、事故につながるおそれがあることから、貴省は、国道の管理の一環として路面下空洞調査業務(以下「調査業務」という。)を実施している。
 調査業務は、レーダー技術を用いて路面下の状況を調査するもので、調査業務を開始した平成2年度以降、約5,000か所の空洞が発見されている。そして、調査業務は、次のような手順により行われている。
〔1〕  一次調査として、車道部及び歩道部において、それぞれ地中レーダーを搭載した探査車(以下「レーダー探査車」という。)で走行移動しながら電磁波を発して、路面下を非破壊で探査し、探査データを取得する。
〔2〕  取得した探査データを基に異常箇所を抽出して、地下埋設物等の存在も考慮しながら、空洞が発生している可能性がある箇所を判定する。
〔3〕  空洞が発生している可能性があると判定された箇所(以下「空洞可能性箇所」という。)については、二次調査として、必要に応じてハンディ型地中レーダーを用いるなどして、空洞可能性箇所の範囲を特定する。
〔4〕  上記により得たデータを分析した結果、空洞が発生している可能性が高いと判定した場合には、ボーリングにより削孔してスコープ等で空洞の存在を判定する。そして、空洞の存在が確認された場合には、必要に応じて空洞内部を撮影する。
〔5〕  上記の結果を取りまとめて報告する。

(2) 調査業務の経緯

 空洞調査は、昭和63年5月に東京都中央区で路面の陥没事故が発生したことを背景として、その必要性が議論されるようになった。その後、平成2年にレーダー探査車が開発され、調査業務が実施されることとなり、現在では全国的に実施されている。
 調査業務の契約は、18年度までは、特殊な技術を必要とするとしてすべて随意契約により行われていたが、19年度は参加者の有無を確認する公募方式を経た随意契約により行われており、この間いずれも財団法人道路保全技術センター(以下「保全センター」という。)が受注していた。その後、貴省では随意契約の見直しを行い、20年4月に、それまで道路関係公益法人との随意契約で行われてきた業務を原則として競争性の高い契約方式により実施するとともに、民間事業者等との競争が促されるうな方策を講ずることとした。これを受けて、20年度の調査業務の契約は、北海道開発局及び15国道事務所等(以下「16事務所等(注2) 」という。)において、簡易公募型プロポーザル方式(注3) に準じた手続を経た随意契約により行われ、計16件のうち、保全センターが11件を、ジオ・サーチ株式会社が5件を受注しており、契約金額は計6億5692万余円となっている。
 しかし、これらの契約について、20年12月頃から、民間事業者の参入が進んでいなかったり、保全センターが受注した調査業務において、発見できなかった空洞があったりするとして、契約方式や履行内容に疑義があるなどの指摘がなされ、国会で議論されたり、新聞等で報道されたりした。
 このような状況の下、貴省は、21年3月に公表した今後の方針(以下「方針」という。)の中で、レーダー探査車の運転操作などの「作業」と空洞可能性の判定などの「診断」とを分離して、より多くの民間事業者の参加による価格競争の促進によりコスト縮減を図ることとし、さらに、空洞の診断と対策の企画・実施は、原則として、地方整備局の職員が行うこととして、補修等の対策の迅速化を図るなどとしている。また、同年5月に、学識経験者等の第三者委員で構成する「直轄国道の舗装(路面)に関する保全検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置して、地下探査の内容等について検討を行うとともに、20年度に保全センターが受注した調査業務の実施内容の検証も併せて行うこととして、一部の国道における路面下の空洞の有無を実地に調査確認するなどして検証を進めているところである。

 地下埋設物  地下に埋設された電気、通信、ガス、上下水道等の管路等

 16事務所等  北海道開発局、東北技術、東京国道、相武国道、横浜国道、大宮国道、北首都国道、千葉国道、宇都宮国道、常陸河川国道、高崎河川国道、北陸技術、中部技術、近畿技術、中国技術、四国技術各事務所

 簡易公募型プロポーザル方式  業務の内容が技術的に高度であるなどの場合に、業者の参加を公示により募り、提出を受けた技術提案書を審査して技術的に最適な者を特定する方式を公募型プロポーザル方式という。そして、公募をより簡易な手続により実施する方式を簡易公募型プロポーザル方式という。

(3) 調査業務に係る費用負担

 関東地方整備局は、東京都区内における調査業務に要する費用について、道路管理者である同局と地下埋設物を設置している企業等(以下「占用企業者」という。)とが共同で負担することとして、「路面下空洞探査に関する協定書」(以下「協定書」という。)を締結し、空洞探査の探査延長やそれぞれの負担割合等を定めている。これは、路面下の空洞が、前記のとおり、一般的に地下埋設物に起因して発生するなどと考えられており、東京都区内で発生する路面陥没には、地下埋設物が一因となって発生したものが多かったことなどによるものである。
 そして、同局は、協定書を踏まえ、毎年度、各占用企業者と個別に「路面下空洞探査に関する契約書」(以下「契約書」という。)を締結して、各年度の各占用企業者の負担額等について定めており、探査延長の根拠となる探査計画等の変更により、負担額の変更等契約の内容を変更する必要が生じたときは、両者で協議することとしている。また、協定書においては、探査計画等を変更する必要が生じた場合にはあらかじめ協議すること、変更により負担金について不足が生じれば、同局は負担金を追徴できること、業務完了後は速やかに精算を行うことなどが定められている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、前記の16事務所等が20年度に実施した16件計6億5692万余円の調査業務について、国会における議論や新聞報道等も踏まえて、経済性、効率性、有効性等の観点から、特記仕様書等の記載内容や成果物の内容等は適切なものとなっているか、契約方式は適切か、関東地方整備局は協定書に基づく負担金の徴収を適切に行っているかなどの点に着眼して検査を行った。
 検査に当たっては、関東地方整備局及び16事務所等において、関係資料の提出を求めるとともに、貴省本省、北海道開発局、9事務所(注4) 及び1契約先において、契約関係書類や調査資料の内容を確認したり、担当者から説明を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

 9事務所  東北技術、東京国道、相武国道、大宮国道、常陸河川国道、中部技術、近畿技術、中国技術、四国技術各事務所

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 調査業務の契約内容

ア 特記仕様書の記載内容について

 20年度に16事務所等が発注した16件の調査業務について、特記仕様書及び調査報告書の記載内容を検査したところ、特記仕様書において、抽出すべき異常箇所の基準(以下「抽出基準」という。)を明示しているものは1件のみであり、それ以外の15件においては、抽出基準についての記載はなく、「現場探査で記録した後、分析を行い異常箇所を検出し、その広がりを特定する」などと記載されていた。このため、異常箇所を基に判定される空洞可能性箇所についても、抽出した根拠が契約ごとに区々となっており、調査業務で求める成果の内容が明確になっていなかった。
 貴省は、前記のとおり、検討委員会を設置して、地下探査の内容等について検討を行っているところであるが、空洞の判定に当たっては、抽出基準等を定めるなどして、調査業務で求める成果の内容を明確にする必要があると認められる。

イ 一次調査の探査データの取得状況について

 一次調査により取得した探査データは、翌年度以降の調査業務において、経年的な変化を検証するためなどに活用することができるものである。
 しかし、16事務所等が20年度に発注した調査業務における一次調査の探査データの取得状況について検査したところ、16事務所等すべてにおいて、空洞可能性箇所の探査データについては、受注者から提出を受けていたが、それ以外の箇所の探査データの提出については、具体的に特記仕様書等の契約書類において求めておらず、受注者から提出を受けている事務所は1事務所のみとなっていた。
 したがって、多額の国費を投じて収集されてきた一次調査の探査データが、道路管理者において活用できるようになっていない事態は適切でなく、今後は、契約上受注者に、一次調査のすべての探査データを提出させることが必要であると認められる。また、19年度以前に行った調査業務において受注者が取得した一次調査の探査データについても、当該受注者に対して提出を求めて、可能な限り入手に努める必要があると認められる。

(2) 契約方式の状況

 前記のとおり、20年度における調査業務の契約は、16事務所等において、簡易公募型プロポーザル方式に準じた手続を経た随意契約により行われている。そして、その応募状況をみると、応募者数はそれぞれ1者から3者となっていて、受注者は16事務所等全体で2者となっていた。
 しかし、同方式では、契約相手方が選定された後は当該者と随意契約することとなり、技術面での競争は行われるものの、価格面での競争は行われないこととなる。一方で、本件調査業務のような建設コンサルタント業務等においては、経済性に配慮して価格面も含めた多様な要素が考慮される総合評価落札方式が20年5月に本格的に導入されている。
 そして、調査業務については、毎年度実施しており、また、実績も多いことなどから仕様を確定することが可能であり、技術面に加えて価格面も評価する総合評価落札方式等での発注が可能なものと認められる。したがって、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入する必要があると認められる。

(3) 調査業務の費用負担の状況

 関東地方整備局管内の東京国道事務所における20年度の調査業務に対する占用企業者11者からの負担金の徴収について検査したところ、同局は、調査業務に要する費用を保全センターとの当初契約額に基づいて9492万余円として、各占用企業者との当初契約どおり計6356万余円の負担金を20年4月に各占用企業者から徴収していた。
 しかし、調査業務の最終変更契約によると、探査延長が車道部及び歩道部とも延長されるなどして、調査業務に要した費用が1億0972万余円に増額していたにもかかわらず、同局は、会計実地検査時点(21年6月)においても、各占用企業者との間で締結した協定書に定める探査延長の変更協議を行っておらず、負担金の不足額を追徴するための契約内容の変更協議も行っていなかった。調査業務は20年度内に完了していて、変更後の代金の支払も年度内に了していることから、探査延長の変更に伴う負担金の追徴に係る手続も同年度内に速やかに行う必要があったと認められる。
 そして、最終変更契約後の調査業務に要した費用1億0972万余円に基づいて各占用企業者の負担額を修正計算すると計7444万余円となり、上記の負担額計6356万余円との間に1087万余円の差額が生じていると認められる。

(改善及び是正改善を必要とする事態)

 上記のように、調査業務で求める成果の内容を明確にしていなかったり、一次調査のすべての探査データの提出を求めていなかったり、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入していなかったりしている事態は適切でなく、改善の要があると認められる。また、調査業務に要した費用の増額変更に伴う占用企業者の負担金の増額変更協議を年度内に速やかに行っていない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のようなことによると認められる。

ア 16事務所等において

(ア) 調査業務で求める成果の内容を明確にする必要性についての認識が十分でなかったこと
(イ) 一次調査の探査データの必要性についての認識が十分でなかったこと
(ウ) 従来の随意契約による契約方式を見直しているものの、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入することについての検討が十分でなかったこと

イ 関東地方整備局において、調査業務に要した費用の増額変更に伴い、各占用企業者の負担額に不足が生じたのに、不足額を追徴するための協議を速やかに行うことに対する認識が十分でなかったこと

3 本院が要求する改善の処置及び本院が求める是正改善の処置

 貴省は、調査業務について、様々な議論がなされたことを踏まえ、検討委員会を設置してその内容等について検討するとともに、20年度に保全センターが受注した調査業務の実施内容の検証等を行っているところである。調査業務については、今後も継続して実施していくことから、貴省において、前記の検査結果を踏まえて、調査業務が適切に実施されるよう、次のとおり改善の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
ア 具体的な抽出基準等を定めるなどして、調査業務で求める成果の内容を明確にすること(会計検査院法第36条による改善の処置を要求するもの)
イ 一次調査の探査データのすべてを契約上の成果品として提出させることとすること、また、19年度以前に実施した調査業務についても契約の相手方に対して提出を求めて、可能な限り入手に努めること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)
ウ 方針で述べている価格競争の促進の趣旨に沿って、価格面の競争を取り入れた契約方式を導入すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)
エ 調査業務の費用の増額変更に伴って、各占用企業者の負担額に不足が生じた場合には、不足額の追徴に向けた協議を速やかに行うよう、各地方整備局等に対して周知すること(同法第34条による是正改善の処置を求めるもの)