会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)気象庁 | (項)観測予報等業務費 |
(平成19年度以前は、 | (項)気象官署) | ||
部局等 | 気象庁本庁、5管区気象台 | ||
無線雨量観測所の概要 | 地域気象観測システム(アメダス)の観測所のうち、有線回線を利用して観測データを送信することが困難であることから無線を利用している、雨量のみを観測している観測所 | ||
無線雨量観測所の箇所数 | 89か所(平成21年3月末現在) | ||
上記の観測所に係る維持費用 | 2388万円(平成18年度〜20年度) |
気象庁は、集中豪雨等の局地的気象現象によりもたらされる災害や事故を防止・軽減するための基盤的観測網として、地域気象観測システム(Automated Meteorological Data Acquisition System。以下「アメダス」という。)を構築して、昭和49年11月から運用している。そして、アメダスの観測施設として、全国1,274か所(平成21年3月末現在)に雨量、気温、風向・風速、日照時間等を観測する地域気象観測所(以下「観測所」という。)を設けている。
各観測所は、観測データを気象庁本庁のセンターシステムに送信している。この送信については、ほとんどが有線回線を利用したものとなっているが、山岳部に設けていて、有線回線を利用することが困難な観測所は、当該観測所を管理している地方気象台等に無線で観測データを送信し、当該地方気象台等が有線回線を利用してセンターシステムに観測データを送信している。このように無線を利用して観測データを送信している観測所は、全国に89か所(21年3月末現在)あり、すべて雨量のみの観測を行っている(以下、これらの観測所を「無線雨量観測所」という。)。
そして、センターシステムに送信された観測データについては、降水状況の把握に用いられるほか、解析雨量(注)
を計算する際に用いられるなどしている。
アメダスの維持に係る費用は毎年多額に上っている一方、近年は、防災気象情報の提供に当たって、解析雨量を用いることが主流となってきている。
そこで、本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、観測技術の進歩や気象庁以外の機関も含めた観測網の拡充が進行する中で、観測所の運用は適切に行われているか、特に無線雨量観測所の維持費用は多額に上っていることから、維持の必要性について十分な検討が行われているかなどの点に着眼して検査した。
そして、全国の無線雨量観測所を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)により本院に提出された支出計算書の証拠書類である旅費請求書やデータ通信の料金内訳書等により書面検査を実施するとともに、気象庁本庁及び全国の5管区気象台のうち札幌、大阪両管区気象台において会計実地検査を行った。また、仙台、東京、福岡各管区気象台については、気象庁本庁から無線雨量観測所に係る関係書類の提出を受けて検査した。
検査したところ、無線雨量観測所について、次のような事態が見受けられた。
無線雨量観測所は、山岳部における降水状況の把握を目的としており、その設備は、雨量計、無線送信装置、太陽電池、アンテナ等の機器及びこれらを設置するための支柱等から構成されていて、有償で借り受けた土地に設けられたものが多くなっていた。そして、山岳部における雨量の観測データが必要になるのは河川が増水しやすい春から秋にかけての期間であることや、冬期には雨量計が凍結するおそれがあることなどのため、毎年、春と秋に地方気象台等の職員が現地へ出向いて機器を支柱等へ設置又は取外しするなどしていて、1年を通じた観測は行っていない状況であった。
以上のように、無線雨量観測所は、通年観測を行っていない一方、地方気象台等が無線で受信した観測データをセンターシステムに有線で送信するための通信費に加えて、土地の借料や、職員による機器の設置、取外し等のために要する旅費等が必要となっており、18年度から20年度までの間に前記の89無線雨量観測所の維持に要した費用は計2388万余円となっていた。
気象庁は、昭和29年に気象レーダーを設置して以降、全国に順次増設したり、性能を向上させたりするなどしており、平成21年3月末現在、20か所で全国の降水状況を観測している。
また、解析雨量を計算するセンターシステムについても、数次にわたる更新により、データ処理能力等を向上させている。
さらに、気象庁は、15年度以降順次、国土交通省河川局及び道路局並びに地方公共団体が観測している雨量に係る観測データも、解析雨量を計算する際に用いるようになっている。
これらのことにより、18年3月以降、30分ごとに1km四方の解析雨量を公表することができるようになるなど、その精度は年々向上してきており、大雨警報や同注意報、土砂災害警戒情報等の防災気象情報を発表する際に活用している。
上記(1)及び(2)のように、無線雨量観測所は、通年観測を行っておらず、また、近年、レーダー観測及び解析技術の進歩や他機関の観測データの取込みなどにより解析雨量の精度が向上してきていることなどから、維持する必要性は低くなってきており、原則として廃止しても支障はないものと認められた。
なお、気象庁は、18年3月に、無線雨量観測所の廃止を推進していくことを決定し、老朽化等により維持が困難になった場合は、原則として、更新することなく廃止することとしていたものの、21年3月末までに廃止したものは9か所にとどまっており、無線雨量観測所の維持費用が多額に上っていた。
したがって、気象庁において、無線雨量観測所の廃止を推進していくことを決定していたにもかかわらず、その後も多額の維持費用を支払っていた事態は適切とは認められず、より効率的な観測体制となるよう、必要がなくなったと判断したものについては速やかに廃止するなど改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、気象庁において、観測技術の進歩等により解析雨量の精度が向上してきているにもかかわらず、無線雨量観測所を廃止するなどして、より効率的な観測体制とすることについての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、気象庁は、より効率的な観測体制となるよう、21年10月までに、89無線雨量観測所のうち必要がないと判断した76か所については廃止することを決定して、同年12月末までに機器等の設備を撤去することとした。また、引き続き維持しておくことが必要であると判断した13か所については、機器の取外し等が不要で通年観測ができる近隣の場所に移設することとする処置を講じた。