会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国土交通本省 | (項)河川等災害復旧事業費等 | |||||||||
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) | ||||||||||||
(項)地域連携道路事業費等 | ||||||||||||
平成19年度以前は、 | ||||||||||||
道路整備特別会計 | (項)道路事業費等 | |||||||||||
部局等 |
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事業及び補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)等 | |||||||||||
事業主体 |
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工事の概要 | 平成18年度から20年度までに、道路舗装の下層路盤材や構造物の基礎材に新材砕石等を使用して行われる道路改良工事等 | |||||||||||
工事費 |
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新材砕石の材料費の積算額 |
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上記のうち低減できた材料費の積算額 |
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栗石を使用した基礎工費の積算額 |
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上記のうち低減できた基礎工費の積算額 |
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国土交通省は、道路交通の安全確保とその円滑化を図るため、国が行う直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業により、道路整備事業を実施している。
そして、国及び地方公共団体は、道路整備事業の一環として、道路舗装工事、擁壁等の構造物築造工事等を毎年度多数実施しており、これらの工事において、砕石、栗石等の資材を使用している。
砕石は、道路舗装の下層路盤材、構造物の基礎材等に、また、栗石は、構造物の基礎材に使用されている。砕石には、原石を破砕するなどして製造する砕石(以下「新材砕石」という。)のほか、コンクリート構造物の解体等により発生するコンクリート塊等を破砕するなどして製造する砕石(以下「再生砕石」という。)がある。また、栗石は、新材砕石と同じく原石から製造するもので、再生資材はない。
国は、産業廃棄物の最終処分場の不足や不法投棄の多発等の問題に対処して、環境の保全を図るため、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(平成12年法律第104号)等により、建設廃材等の再資源化の強化を図っている。また、国土交通省は、国、地方公共団体等が再生資材の利用促進等に積極的に取り組むことが重要であるとして、「公共建設工事における「リサイクル原則化ルール」の策定について」(平成18年国官技第47号等。以下「リサイクル原則化ルール」という。)等を策定し、工事現場から40kmの範囲内に再生砕石等を製造する再資源化施設がある場合、品質等を考慮した上で、原則として、再生砕石を道路舗装の下層路盤材、土木構造物の基礎材等の用途に利用することなどとしている。
再生砕石は、コンクリート塊等により製造されることから、生産量が一定ではないこともあるが、リサイクル原則化ルール等により、再資源化施設は、平成7年の約1,200施設から17年の約2,500施設に増加し、コンクリート塊の再資源化量も7年の約2,400万tから17年の約3,200万tに増加していて、公共工事に使用する箇所も広範囲に拡大している。
砕石等の価格は、刊行物である積算参考資料によると、一般的には再生砕石の方が新材砕石又は栗石より安価となっている。また、国土交通省制定の土木工事標準積算基準書に基づいて構造物の基礎材の施工歩掛かりを比較すると、砕石を使用した方が栗石を使用するより施工費は安価となる。
公共工事に使用する再生砕石の品質については、「コンクリート副産物の再利用に関する用途別暫定品質基準(案)について」(平成6年建設省技調発第88号)等により新材砕石と同等の品質基準が定められ、新材砕石と同等の規格で製造されている。
近年、環境への配慮から、建設廃材の再資源化や再生資源の活用が強く求められている。一方、コンクリート塊の発生量及び再資源化施設の増加により再生砕石の調達は容易となってきており、再生砕石を使用するための条件は整ってきている。
そこで、本院は、環境問題への取組の強化、再資源化施設の増加等を考慮して、経済性等の観点から、再生砕石を積極的に使用して環境に配慮した経済的な設計を行うことができないかなどに着眼して検査した。
18年度から20年度までに実施した道路舗装工事、構造物築造工事等のうち、新材砕石又は栗石を使用して、直轄事業として3国道事務所等(注1) が施行した53工事(工事費総額154億0229万余円)及び補助事業として2県(注2) の19事業主体が施行した288工事(工事費総額161億3078万余円(国庫補助金90億9982万余円))、計341工事を対象として、上記の22事業主体において、各工事の設計図書等の書類により会計実地検査を行い、必要に応じて工事現場に赴き現地の状況を検査した。
検査したところ、直轄事業として1事業主体が施行した9工事(工事費総額10億6900万余円)及び補助事業として19事業主体が施行した288工事(工事費総額161億3078万余円)については、下層路盤材等に新材砕石を使用していて、砕石の材料費を直轄事業で766万余円、補助事業で6億4069万余円と積算していた。また、直轄事業として2事業主体が施行した44工事(工事費総額143億3329万余円)については、構造物の基礎材に栗石を使用していて、栗石の材料費と施工費を合わせた基礎工費を3393万余円と積算していた。
そして、これらの工事において、新材砕石や栗石を使用した理由を調査したところ、各事業主体は、再生砕石の供給や品質に不安があるためなどとしていた。
しかし、いずれの工事箇所も近年は再生砕石の供給が可能となっていること、また、再生砕石は、新材砕石と同等の品質基準が定められており、他の事業主体においては下層路盤材、構造物の基礎材等に再生砕石を使用しているが、構造上等の問題は生じていないことなどから、新材砕石又は栗石に代えて再生砕石を使用することにより、環境に配慮した経済的な設計を行う必要があったと認められた。
秋田県は、平成20年度に施行した道路舗装工事(工事費9999万余円)の下層路盤材に新材砕石(2,560m3
)を使用することとして設計して、下層路盤材費を640万円と積算していた。
この工事に新材砕石を使用したのは、10年に同県が定めた「設計積算要領」では、下層路盤材、構造物の基礎材等には再生砕石を使用することとしていたが、当時、使用量の多い下層路盤材については、供給量や品質を確保できないおそれがあるとして、11年に「設計積算要領の運用」を定めて新材砕石を使用することとしたためであった。
しかし、近年は同県内のほぼ全域に再資源化施設があり、本件工事箇所は再資源化施設から40kmの範囲内に位置していて、再生砕石の調達が可能であり、また近隣の他の事業主体においては下層路盤材に再生砕石を使用している状況である。
したがって、再生砕石を使用することとして修正計算すると、下層路盤材費は537万余円となり、積算額を約100万円(国庫補助金相当額約50万円)低減できた。
このように、各種工事の実施に当たり、リサイクル原則化ルール等により、原則として、再生砕石を積極的に利用することが求められているにもかかわらず、前記の事業主体において再生砕石の使用の検討を十分に行っておらず、環境に配慮した経済的な設計となっていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記のとおり、新材砕石に代えて再生砕石を使用することとして砕石の材料費を修正計算すると、直轄事業は589万余円、補助事業は4億8247万余円となり、積算額を直轄事業で約170万円、補助事業で約1億5820万円(国庫補助金相当額約9040万円)低減でき、また、栗石に代えて再生砕石を使用することとして基礎工費を修正計算すると、2636万余円となり、積算額を約750万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省においてリサイクル原則化ルール等を地方整備局等、都道府県等に対し通知又は参考送付しているのに、各事業主体においてその趣旨が十分に徹底されていないなど、再生砕石を積極的に使用して、環境に配慮した経済的な設計をすることの検討が十分行われていないことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、21年9月に地方整備局等に対して通知を発し、道路関係工事における砕石等の使用に当たっては、環境及び経済性に配慮して、再生砕石の積極的な使用を十分検討するよう周知徹底するとともに、地方整備局等を通じて都道府県等に対しても同様に周知するなどの処置を講じた。