会計名及び科目 | 社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定) | |||||
(項)空港等維持運営費 | ||||||
平成19年度以前は、 | ||||||
空港整備特別会計 | (項)空港等維持運営費 | |||||
部局等 | 2地方航空局 | |||||
協定名 | ハイジャック等防止対策(機内持込手荷物検査業務等)費用分担に関する協定等4協定 | |||||
協定の概要 | 航空会社が警備業者に委託して実施する機内持込手荷物検査業務、受託手荷物検査業務等の費用の1/2を国が分担するもの | |||||
検査の対象とした協定件数及び国の費用分担額 |
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上記のうち受託手荷物検査業務の国の費用分担額 |
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節減できた受託手荷物検査業務の国の費用分担 額 |
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国土交通省東京、大阪両航空局は、ハイジャック、航空機爆破等の不法な行為の未然防止を図るため、航空会社との間で国内線に係る「ハイジャック等防止対策(機内持込手荷物検査業務等)費用分担に関する協定」(以下「協定」という。)を締結している。そして、この協定に基づき、国土交通省は、国が管理する25空港 (注1)
において、爆発物、凶器等が航空機内に搭載されないようにX線透視手荷物検査装置等を使用して、旅客が航空機内に持ち込む機内持込手荷物に対して実施する検査業務等(以下「機内持込手荷物検査業務」という。)及び旅客からチェックインカウンターにおいて預かり運送する受託手荷物に対して実施する検査業務(以下「受託手荷物検査業務」という。)を航空会社が警備業者に委託する費用の1/2を分担している。これは、航空会社が実施する機内持込手荷物検査業務及び受託手荷物検査業務が、空港内の航空機、空港ビル、滑走路等への破壊行為の防止及び空港利用者や従業員等の空港関係者の安全確保に寄与しており、空港管理者の責務である空港の管理運営及び秩序維持の一部を補完していることを理由としている。
そして、国土交通省の費用分担額は、平成19年度52億3436万余円(うち受託手荷物検査業務分14億1624万余円)、20年度51億0485万余円(うち受託手荷物検査業務分13億7154万余円)、計103億3922万余円(うち受託手荷物検査業務分27億8779万余円)となっている。
国土交通省は、費用分担の対象となる受託手荷物検査業務の実施時間、検査員の配置等について、「モデル受託手荷物数・検査時間等の設定基準」(以下「基準」という。)等を定めている。基準によれば、各空港における受託手荷物検査業務の1日当たりの実施時間は、航空会社のチェックインカウンターごとに取扱航空機の機種別検査時間区分(例えばボーイング747については出発時刻120分前から出発時刻まで。)を割り当てることにより設定することとなっている。ただし、始発便に機種別検査時間区分を適用して算出した開始時刻(以下「算出基準時刻」という。)より旅客搭乗手続開始時刻が後になる場合は、旅客搭乗手続開始時刻を受託手荷物検査業務の開始時刻(以下「検査業務開始時刻」という。)としている。
そして、東京、大阪両航空局は、受託手荷物検査業務の実施場所、1日当たりの実施時間、検査員の配置等を定めた実施計画書を航空会社から提出させ、承認したものを基に費用を分担している。
本院は、受託手荷物検査業務について、経済性等の観点から、これに係る国土交通省の費用分担額の算定が適切なものとなっているかなどに着眼して検査を行った。そして、19、20両年度の費用分担額27億8779万余円を対象として、2地方航空局、11空港事務所(注2) において、協定書等の関係書類により会計実地検査を行うとともに、残りの14空港事務所(注3) については、協定書等の関係書類を提出させて、これにより検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
航空会社の本社は、実施計画書の作成に当たり、空港ビルの業務開始時刻以降は空港ビル内にインターネット等を利用して既に旅客搭乗手続を済ませた旅客が存在することから、空港ビルの業務開始時刻が基準に定める旅客搭乗手続開始時刻に当たると考え、空港ビルの業務開始時刻が算出基準時刻より後になる場合は、空港ビルの業務開始時刻を検査業務開始時刻として実施計画書を作成していた。そして、東京、大阪両航空局においてもこれと同様に考えて、実施計画書を承認していた。
そこで、各空港事務所に提出された警備報告書等により検査業務開始時刻の実態を検査したところ、19年度の7空港(注4)
及び20年度の8空港(注5)
において、航空会社のチェックインカウンターの業務開始時刻(以下「カウンター業務開始時刻」という。)が空港ビルの業務開始時刻よりも後となっているものが見受けられた。
そして、これらの空港において、航空会社の支店等は、〔1〕 実施計画書に定める検査業務開始時刻からカウンター業務開始時刻までの時間帯に検査員を検査場に配置させたり、〔2〕 カウンター業務開始時刻を検査業務開始時刻とした上で、実施計画書上は出発便の間隔が開いていて受託手荷物検査業務を実施することとしていない時間帯(以下「計画外時間帯」という。)に検査業務の実施時間を振り替えたりして、実施計画書に定める1日当たりの時間との開差を生じないように処理していた。
しかし、航空会社がチェックインカウンターで検査後の手荷物を速やかに預かる体制を十分に執ることができないカウンター業務開始時刻以前の時間帯や、計画外時間帯については、特段受託手荷物検査業務を行う必要のない時間帯であり、費用分担の対象時間とする要がなかったと認められた。
したがって、実施計画書の作成に当たり、空港ビルの業務開始時刻を旅客搭乗手続開始時刻として国の費用分担額を算定している事態は、受託手荷物検査業務の目的及び業務の実態からみて適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
前記19年度の7空港及び20年度の8空港において、カウンター業務開始時刻を検査業務開始時刻として費用分担額を算定すると、受託手荷物検査業務の実施時間が減少することから、19、20両年度の受託手荷物検査業務の費用分担額は計27億6622万余円となり、前記の分担額計27億8779万余円を約2150万円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、検査業務開始時刻の設定に当たり、基準に定める旅客搭乗手続開始時刻が明確でなかったため、空港ビルの業務開始時刻と同一と認識していたこと、受託手荷物検査業務の目的及び業務の実態に対する検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、21年9月に基準を改正して、各空港における検査業務開始時刻をカウンター業務開始時刻以降とすることとし、同年10月以降の費用分担額の算定から適用する処置を講じた。