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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 環境省|
  • 不当事項|
  • 補助金

工事の設計等が適切でないもの


(1) 工事の設計等が適切でないもの

1件 不当と認める国庫補助金  205,478,000円

廃棄物処理施設整備事業の実施に当たり、設計等が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

(1件 不当と認める国庫補助金  205,478,000円)

部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金
(564)宮崎県 財団法人宮崎県環境整備公社 廃棄物処理施設整備 14〜17 千円
1,398,990
(822,398)
千円
205,478
千円
1,398,990
(822,398)
千円
205,478

 この補助事業は、財団法人宮崎県環境整備公社が、宮崎市大字大瀬町字倉谷地区において、降雨により廃棄物の最終処分場から流出する浸出水を一時貯留するための調整池を工事費計1,398,990,000円(うち国庫補助対象額822,398,458円、国庫補助金205,478,000円)で築造したものである。
 この調整池は、水槽4基からなる縦62.2m、横120m、深さ7m、容量40,000m の構造物となっている。そして、同公社は、渓谷となっている地山の一部を切土し、この切土により谷を埋め立て盛土するなどして基礎地盤を造成後、本件工事により、基礎コンクリート(厚さ20cmの鉄筋コンクリート)を打設し、その上に工場で製作されたL型ブロック及び逆T型ブロックを据え付け、各ブロックをPC鋼棒で連結して、調整池の外壁及び隔壁とするとともに、これらの間の底版としてコンクリートを打設して水槽を造り、上床版を設置した後、覆土することとし、これにより工事を施行している(参考図参照)。
 同公社は、本件調整池の基礎について、直接基礎案、地盤改良案、杭基礎案、直接基礎補強案の4案の概算工事費や長所・短所を比較検討して、上記のとおり、調整池の下部に基礎コンクリートを設ける直接基礎補強案を選定していた。そして、調整池の設計に当たっては、「建築基礎構造設計指針」(日本建築学会編。以下「指針」という。)を準用し、基礎地盤の沈下量の限界値を10cmとして、設計沈下量3.7cmがこれを下回っていることから安全の範囲に収まっているとしていた。
 本院が平成20年7月に現地に赴いて調整池の供用状況を確認したところ、水槽4基のうち3基が底版等の損傷による漏水の発生により供用されておらず、残る1基についても、別途杭基礎で補強するなどした上で、ようやく予定された17年11月に供用されていた。そして、その経緯や原因等について検査したところ、工事の設計等において、次のように適切でない事態が見受けられた。
ア 調整池の基礎の設計等について
 一般に、本件の基礎地盤のように切土箇所と盛土箇所が混在する箇所にあっては、構造物に悪影響を与える不等沈下が生ずるおそれがあることから、大規模な構造物の築造は避けることが望ましく、築造する場合でも、杭基礎を施すなどの十分な配慮が求められる。
 本件工事では、基礎地盤の造成後、請負人が自身の判断で行った基礎地盤のボーリング調査の結果による同公社への報告によれば、〔1〕 本件調整池は、巨大なボックス型調整池であり、基礎底面の半分以上が盛土地盤に建設される計画で、地山と盛土地盤とでは、物理的・力学的特性に差異があり、不等沈下による漏水問題等、今後の対処が必要となること、〔2〕 盛土層については、砂岩及び泥岩からなる未固結なレキ質土で構成されていて、地山からの地下水の流入や雨水の浸透などの影響により次第に強度低下を起こし、空隙が縮小して圧縮沈下し、その総圧縮沈下量は、9.5cmとなるなどとされていた。
 この報告に対して、同公社は、本件工事の設計を行った設計コンサルタントから、総圧縮沈下量はデータのとり方により7.5cmとなるが、限界値10cmの範囲内であり、安全な範囲となっているとの判断が示されたなどとして、本件工事の計画や設計を変更することなく工事に着手していた。
 しかし、限界値は、指針に記載されているところによれば、中低層建物の沈下実測と沈下障害の関係より導かれた構造別の例を示したに過ぎないものであり、この値を用いる場合には、その数値の意味するところを十分理解して用いる必要があるなどとされており、本件のように大規模で、かつ重要な構造物の設計に当たって、指針に記載されている限界値を根拠にして安全な範囲にあると判断したことは適切とは認められない。
 したがって、同公社においては、請負人が行った基礎地盤のボーリング調査により、当初設計時における予想沈下量(3.7cm)の2倍から3倍近く(7.5cm又は9.5cm)の沈下や不等沈下が予想されていたのであるから、その調査結果を踏まえて、詳細な土質試験等を行った上で、新たに予想される沈下量等により改めて応力計算等を行って、その安全性を検討の上、杭基礎を施すこととするなど、工事の計画や設計の見直しを行う必要があったと認められる。
イ 補助事業の実績報告等について
 本件工事のしゅん工前に、仕様書に基づき請負人が水張試験のために調整池に注水したところ、3基の水槽において漏水が認められた。そして、同公社は、すべての水槽においてひび割れ等の損傷を確認したことから、詳細に調査したところ、最大で15.7cm沈下しており、調整池全体で、地盤の不等沈下により、底版等に損傷が生じ、漏水が発生していた。
 しかし、同公社は、調整池の機能が十分確保されていないことを認識していたのに、設計図書のとおり完成したとする検査調書を付して本件補助事業の実績報告書を提出していた。
 したがって、本件調整池(工事費1,398,990,000円、うち国庫補助対象額822,398,458円)は、設計等が適切でなかったため、工事の目的を達しておらず、国庫補助金205,478,000円全額が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同公社において、設計コンサルタントの判断に対する検討が十分でなかったため、工事の計画や設計の見直しを行っていなかったこと、補助事業の適正な実施に関する認識が欠けていたこと、同県において、同公社に対する補助事業の適正な実施に関する指導や補助事業の完了検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

平面図、横断図(A−A')、概念図