会計名 | 一般会計 | |
部局等 | 北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州各地方環境事務所 | |
国有財産の分類 | (分類)行政財産(種類)公用財産及び公共用財産(区分)建物、工作物 | |
取得した国有財産の概要 | 国立公園等の整備に伴う施設の新設、増設等の工事により取得した国有財産 | |
国有財産台帳に登録していた額 | 38億3071万余円 | (平成19、20両年度) |
国有財産台帳への登録が漏れていた額 | 26億2183万円 | (平成19、20両年度) |
(平成21年10月20日付け環境大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴省は、国立公園等において、自然保護官事務所、ビジターセンター、野営場等の建物や遊歩道、外灯、展示物等の工作物等を多数設置している。そして、国立公園等におけるこれらの施設の新設、増設等の工事(以下「新設等工事」という。)については、各地方環境事務所が直接施行するものと都道府県に委任して施行するものとがあり、いずれの場合も業者に請け負わせて施行している。
貴省は、国立公園等における新設等工事により取得した上記の施設については、国有財産法(昭和23年法律第73号)、環境省所管国有財産取扱規則(平成13年環境省訓令第30号。以下「環境省取扱規則」という。)等に基づき、国有財産として、各地方環境事務所長が国有財産部局長となって管理している。
国有財産部局長は、国有財産法第32条等の規定に基づき、その所属に属する国有財産について、区分及び種目、所在、数量、価格等を登録した国有財産台帳を備えて管理することとされており、国有財産の取得、処分等があった場合には、直ちにこれを国有財産台帳に登録することとされている。
国有財産を新たに国有財産台帳に登録する場合、登録すべき価格は、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第21条の規定により、建物、工作物等については建築費等とすることとされている。そして、財務省理財局長が定めた「国有財産台帳等取扱要領について」(平成13年財理第1859号。以下「財務省取扱要領」という。)により、建築費等は、建築等に直接要した費用とされ、建物その他の障害物の取壊し等の費用は含めないこととされている。これらのことから、貴省は、環境省取扱規則第39条の規定において、建物の新築又は増築の場合は、請負工事については請負金額とすること、ただし、建物の取壊し又は障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用の額は控除すること、工作物等については、上記の建物等に係る規定に準じて算定した額とすることとしている。
国立公園等における新設等工事により取得した施設を国有財産として新たに国有財産台帳に登録する際には、都道府県に委任し施行した工事の場合は、貴省自然環境局長が、環境省取扱規則を踏まえて、施設価格の算定方法等を具体的に定めた「国立公園整備事業実施要領(施行委任)」(平成6年5月12日環自施第181号。平成18年4月3日最終改正。以下「国立公園実施要領」という。)により、工事を実施した都道府県の支出負担行為担当官が、建物、工作物等の国有財産の区分ごとに、種目、数量、工事請負価格、控除額、国有財産台帳の登録価格となる施設価格等を記載した施設目録を含む完成調書を、当該工事実施地区を所管する国有財産部局長である地方環境事務所長に引き渡すこととされている。また、地方環境事務所が直接施行した工事の場合は、工事実施課が国立公園実施要領を準用して同様の書式等により国有財産の登録価格を算定の上、これを基に作成した報告書(以下「登録価格報告書」という。)を国有財産に関する当該事務所の事務の担当課に送付することとされている。
そして、国有財産に関する事務の担当課は、上記の施設目録及び登録価格報告書に基づいて、国有財産台帳に価格を登録することとされている。
各省各庁の長は、国有財産台帳に基づき、その所管に属する国有財産について、毎年度、年度間の増減及び年度末の現在額の報告書である「国有財産増減及び現在額報告書」を作成して、翌年度の7月31日までに財務大臣に送付しなければならないこととされている。この報告書に基づき、財務大臣は、「国有財産増減及び現在額総計算書」を作成することとされている。そして、内閣は、同計算書を国会に報告することとされている。
国有財産台帳は、国有財産を適切に管理するための帳簿であり、新たに国有財産を取得するなどした場合は、国有財産法に従って国有財産台帳に記録する必要がある。また、国有財産増減及び現在額総計算書は、国有財産の現況を国会及び国民に対して明らかにするという性格を有するものとされている。
そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、地方環境事務所等において新設等工事により貴省が取得した国有財産が国有財産台帳に適切に登録されているかなどに着眼して検査した。そして、検査に当たっては、全国の7 地方環境事務所(注)
が国立公園等において直接又は都道府県に委任して施行した新設等工事のうち、平成19、20両年度にしゅん工した228件、工事費計70億5432万余円を対象として、これにより取得した国有財産について、国有財産台帳、施設目録、登録価格報告書等の書類により、2事務所において会計実地検査を行うとともに、5事務所から書類の提出を受けて検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
すなわち、都道府県は、国立公園実施要領に基づいて、工事請負価格から、直接工事費のうちの直接仮設費、撤去費等の額及び間接工事費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費)の額の合計額を控除して施設価格とし、施設目録を作成していた。また、各地方環境事務所の工事実施課においても、同様の方法により登録価格を算定し、登録価格報告書を作成していた。そして、これらに基づき、地方環境事務所の国有財産に関する事務の担当課は、施設価格及び登録価格の計38億3071万余円を台帳価格として国有財産台帳に登録していた。
しかし、工事請負価格のうちの直接仮設費等及び間接工事費には、財務省取扱要領に規定する「建築等に直接要した費用」に該当し、国有財産の価格を形成する上で必要不可欠な費用が含まれており、このことから、環境省取扱規則においても、直接仮設費等及び間接工事費の全額を請負金額から控除することとはされていない。
したがって、前記の新設等工事228件により取得した国有財産について、直接仮設費等及び間接工事費の全額計28億0119万余円を控除して、国有財産台帳の登録価格としていることは適切ではなく、この28億0119万余円のうち国有財産の価格を形成する上で必要不可欠な費用に該当する計26億2183万余円は登録価格に含めるべきであり、同額が登録漏れとなっていると認められる。
上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。
山口県は、平成20年度に貴省の委任を受けて、瀬戸内海国立公園内の火の山園地において、園路や照明施設等の工作物の新設等工事を9891万余円で実施し、工事しゅん工後、国立公園実施要領に基づき、請負金額から直接工事費のうちの直接仮設費等285万余円、撤去費32万余円及び間接工事費3454万余円、計3772万余円を控除した6118万余円を施設価格とする施設目録を作成して中国四国地方環境事務所に提出し、同事務所では、この施設価格を国有財産台帳の登録価格としていた。しかし、上記の直接仮設費等及び間接工事費の計3740万余円のうちには、上記工作物の新設に係る費用で、国有財産の価格を形成する上で必要不可欠な費用に該当するものが3722万余円含まれており、同額が、国有財産台帳の登録価格から漏れていた。
上記のとおり、貴省において、新設等工事により新たに取得した施設の国有財産台帳への登録価格の計上が適切に行われておらず、その結果、国有財産増減及び現在額総計算書が国有財産の現況を正しく反映したものとなっていない事態は適切とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、国立公園実施要領の整備に当たって財務省取扱要領等に対する理解が十分でなかったこと、国有財産に関する事務を行う地方環境事務所等に対する指導や監査が十分でなかったことなどによると認められる。
国有財産台帳は、国有財産を適切に管理するための基本的な帳簿であり、これを基に毎年度作成される国有財産増減及び現在額総計算書が国有財産の現況を国会及び国民に対して明らかにするという性格を有するものとされていることから、適切に登録されることが重要である。
ついては、貴省において、新設等工事により取得した国有財産について台帳価格の登録が適切に行われるよう、次のとおり是正及び是正改善の処置を求める。
ア 新設等工事により19、20両年度に取得した国有財産で国有財産台帳の価格が登録漏れとなっているものについては、速やかに登録価格を修正するとともに、18年度以前に取得した国有財産についても、国有財産台帳に正確に価格が登録されているか調査の上、登録漏れ等があったときには速やかに登録価格を修正すること
イ 国有財産台帳価格について、工事請負価格のうちの直接仮設費、間接工事費等の取扱いが明確になるよう、国立公園実施要領における施設目録の書式を改正するなどするとともに、価格の登録が適正かつ確実に行われるよう、各地方環境事務所、都道府県の関係部局に周知徹底すること