会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)防衛本省共通費 (項)武器車両等整備費 (項)航空機整備費 (項)艦船整備費 (項)人材確保育成費 |
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平成19年度は、 | (項)防衛本省 (項)装備品等整備諸費 |
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平成20年度国庫債務負担行為 | ||||
(組織)防衛本省 | (事項)武器車両等整備 (事項)航空機整備 |
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部局等 | 海上幕僚監部、11部隊等 | |||
契約の概要 | 契約相手方の事務員等に経理事務等の一部を行わせるもの | |||
契約の相手方 | 4会社 | |||
検査対象とした契約件数及び契約金額 | 805件 | 15億7489万余円 | (平成19、20両年度) | |
上記に係る積算額 | 15億8850万余円 | |||
低減できた積算額 | 1億5740万円 | (平成19、20両年度) | ||
公募から一般競争契約に移行することが適切であると認められた契約件数及び契約金額 | 351件 | 5億2513万円 | (背景金額)(平成19、20両年度) |
(平成21年10月30日付け 防衛省海上幕僚長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴自衛隊は、今後の行政改革の方針(平成16年閣議決定)等により、各府省共通業務のほか、各府省固有事務・事業についても、民間への委託(以下「アウトソーシング」という。また、民間との業務委託契約を「アウトソーシング契約」という。)を積極的に推進して、行政の効率化を図ることとされたことなどを受けて、装備品等の修理、点検、整備等の業務についてアウトソーシングを推進している。さらに、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成18年法律第47号)の規定により、自衛官の人員数についても平成18年度から22年度までの5年間において、行政機関の職員の例に準じて純減させることとされていることから、アウトソーシング契約は今後も増加することが見込まれる。
国が行う契約の方式は、会計法(昭和22年法律第35号)等によれば、一般競争契約、指名競争契約及び随意契約の三方式があり、このうち機会の均等、公正性の保持及び予算の効率的使用の面から一般競争契約が原則とされている。
また、公共調達の適正化について(平成18年財計第2017号財務大臣から各省各庁の長あて通知)では、従来、競争性のない随意契約を行うこととしてきたものについて、行政補助的な業務に係る役務等の契約については、原則として一般競争入札に移行させること、特殊な技術、設備等を有する者が1者しかないとしているものなどについても、公募等を行うことにより競争性及び透明性を確保することとされている。
貴自衛隊における予定価格は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令のほか、調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第35号。以下「訓令」という。)等により、調達要求書、仕様書等、契約方式その他の契約条件に基づいて積算することとなっている。また、予定価格の積算方式は、原則として市場価格方式によるものとし、これにより難い場合には原価計算方式によることとなっている。
そして、訓令によれば、予定価格の積算は次の方法により行うこととなっている。
(ア) 市販の積算参考資料等、適当と認められる標準資料がある場合は、適当と認められる数値を適用して算定する。
(イ) 適当と認められる標準資料がない場合は、見積資料の提出を求めるなどして当該資料に基づき適当と認められる数値を適用して算定することができる。
(ウ) 前年度等に調達の実例がある場合は、その実例に基づいて標準資料又は見積資料に基づく数値を補正する方法により、算定することができる。
また、原価計算方式による場合は、会社等の加工費、直接材料費及び直接経費を積み上げた製造原価に適正利益等を付加するなどして積算することとなっている。
このうち、加工費については、見積資料に基づく数値等により決定した工数(作業時間)に作業時間当たり労務単価等(以下「時間単価」という。)を乗ずるなどして、契約ごとに算定することとなっている。また、契約実績の多い会社等については、各会社の労務費等を基にした固有の時間単価をあらかじめ貴自衛隊において算定することにしている。
貴自衛隊は、装備品等の修理、点検、整備等の業務に加え、これまで自衛官等が行ってきた経理事務や厚生業務等についてもアウトソーシング契約によることとするなど、アウトソーシングを拡大している。また、行政補助的な業務に係る役務等の契約については、原則として一般競争契約に移行することとされている。
そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、アウトソーシング契約の一般競争契約への移行は十分なものとなっているか、また、その予定価格の積算は実態を踏まえたものとなっているかなどに着眼して検査した。
本院は、11部隊等(注1) において会計実地検査を行った。そして、11部隊等が19、20両年度に締結したアウトソーシング契約のうち、契約相手方の事務員等に経理事務等の一部を行わせる契約を多数締結している4会社との間の契約805件(契約金額計15億7489万余円、積算額計15億8850万余円)を対象として、契約書、予定価格の積算内訳書、作業内容を記録した書類等により検査した。また、契約相手方である4会社において、決算書等の関係帳簿等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
前記805件の契約に係る入札等の実施状況をみると、一般競争入札を実施したものは51件(6.3%、契約金額計1億9659万余円)と件数、金額ともに少なく、公募を実施したものは538件(66.8%、契約金額計12億3069万余円)と過半を占めていた(表1 参照)。
年度\区分 | 一般競争入札 | 指名競争入札 | 公募 | その他 | 計 | |||||
件数 | 契約金額 | 件数 | 契約金額 | 件数 | 契約金額 | 件数 | 契約金額 | 件数 | 契約金額 | |
平成 19 |
(3.6) 15 |
(4.6) 34,451 |
(0.2) 1 |
(0.1) 1,036 |
(50.1) 204 |
(78.0) 575,535 |
(45.9) 187 |
(17.1) 126,530 |
(100) 407 |
(100) 737,553 |
20 | (9.0) 36 |
(19.3) 162,147 |
(—) — |
(—) — |
(83.9) 334 |
(78.2) 655,156 |
(7.0) 28 |
(2.3) 20,035 |
(100) 398 |
(100) 837,338 |
計 | (6.3) 51 |
(12.4) 196,598 |
(0.1)1 |
(0.0) 1,036 |
(66.8) 538 |
(78.1) 1,230,691 |
(26.7) 215 |
(9.3) 146,565 |
(100) 805 |
(100) 1,574,891 |
(注1)
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その他は、契約に係る予定価格が少額であるため随意契約によったもの(少額随契)等である。
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(注2)
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小数点第2位以下を切り捨てているため、合計が一致しない。
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公募を実施した538件の実施状況をみると、このうち163件の業務内容は、一般競争入札を実施していた上記の51件と同種の経理及び契約の業務補助や造修記録簿の整理、記帳等であった。また、188件は、書類の受付、整理、データの作成等の行政補助的な業務であり、いずれも特殊な技術、設備等を必ずしも必要としないものであった。
したがって、公募を実施した538件のうち上記の契約計351件(契約金額計5億2513万余円)は、いずれも一般競争契約に移行することが適切であると認められた。
また、公募を実施する際の公募要項や仕様書等の内容についてみると、その業務内容は行政補助的な業務であるにもかかわらず特殊な技術、設備等を応募条件としているものなどが多数見受けられた。そして、公募を実施していた538件は、すべて応募者が1者となっていた。
これらのことから、アウトソーシング契約における競争性及び透明性の確保は一般競争契約への移行を含め十分図られているとは認められない状況となっていた。
呉地方総監部は、平成19、20両年度に、調達要求書の受付、契約データ入力等の契約関係事務の一部を補助させる契約3件(契約金額計2034万余円)を公募による随意契約によりA社と締結していた。そして、公募の実施に当たっては、業務に使用する部隊経理システムの操作等のため、専門知識及び経験を有する専任者を従事させることなどを条件としていた。
しかし、これらの業務は行政補助的な業務であって、特殊な技術、設備等を必要とす るものではなく、一般競争契約に移行することが適切であると認められる。 なお、佐世保地方総監部は、19、20両年度に、上記事例の呉地方総監部と同様の部隊経理システムを使用する契約事務等の補助に係る契約をB社と締結しているが、専門知識や経験等を有していなくても業務を行うことは可能であると判断して、これらを条件とすることなく一般競争入札を実施していた。
ア 標準資料の適用状況
訓令では、前記のとおり、適当と認められる標準資料がある場合には、これを適用して予定価格を積算することとなっている。前記805件の契約についてみると、4会社のうち3会社については会社別に固有の時間単価を算定していて、3会社が契約の相手方となっている770件のうち763件がこれを適用して積算していた(表2
参照)。
区分 | 標準資料適用 | 固有の時間単価適用 | 見積資料適用 | 実例単価適用 | 計 | |||||
件数 | 積算額 | 件数 | 積算額 | 件数 | 積算額 | 件数 | 積算額 | 件数 | 積算額 | |
3 会社 | 3 | 3,194 | 763 | 1,293,452 | 1 | 997 | 3 | 20,041 | 770 | 1,317,684 |
1 会社 | 4 | 15,204 | — | — | 21 | 73,294 | 10 | 182,325 | 35 | 270,823 |
計 | 7 | 18,398 | 763 | 1,293,452 | 22 | 74,291 | 13 | 202,366 | 805 | 1,588,508 |
しかし、書類の受付、整理等の行政補助的な業務や特殊な技術、設備等を必要としない業務等は、契約の相手方を特定したり、限定したりする必要がないことから、固有の時間単価を適用して予定価格を積算することは適切ではなく、訓令に基づき標準資料を適用して予定価格を積算すべきであると認められる。
そして、前記763件の契約のうち、行政補助的な業務や特殊な技術、設備等を必要としない業務であって、標準資料を適用して積算することにより経済的な積算ができたと認められる契約が、471件(積算額計6億2530万余円)あった。
3部隊等(注2)
は、平成19年度に宿舎の入退去等に関する業務に係る契約3件(契約金額計846万余円)をいずれもA社と締結しており、その予定価格の積算に当たっては、A社の固有の時間単価を適用していた。
しかし、この業務は、行政補助的な業務であり、特殊な技術、設備等を必要とするものではなく、標準資料を適用して予定価格を積算すべきであった。
なお、舞鶴地方総監部は、同年度に上記事例の3部隊等と同様の契約をA社と締結しているが、行政補助的な業務であるなどと判断して、市販の積算参考資料に掲載されている単価を参考にして積算していた。
イ 実例単価の適用状況
前記805件の契約についてみると、予定価格の積算に当たり、前年度や他部隊等の実例単価を十分に考慮することなく参考見積書記載の単価をそのまま適用していたり、固有の時間単価を適用していたりしている契約が123件(積算額計2億2797万余円)あった。
艦船補給処は、平成19、20両年度に、会計データ作成業務等に係る契約6件(契約金額計747万余円)を公募による随意契約によりいずれもA社と締結していた。
同補給処は、18年度にも同様の契約をA社、B社及びC社との見積合わせを行った上で予定価格が少額であることによる随意契約によりA社と締結しており、その予定価格は、3会社のうち最も安価なB社の固有の時間単価を適用して積算していた。
しかし、翌19年度の予定価格の積算に当たり、同補給処は、上記の18年度に A社と締結した契約に係る実例単価(税込約2,150円)を考慮することなく、A社の19年度の固有の時間単価を適用して予定価格を決定していた。このため、19年度の予定価格の積算に適用した単価は、18年度の実例を考慮した単価に比べて1,000円以上高くなっており、20年度についても同様の事態となっていた。
ウ 作業実績の反映状況
部隊等において経理事務等の一部を行わせるアウトソーシング契約は、契約相手方の事務員等が提供する業務量に応じた対価を支払うものであることから、予定価格の積算に当たっては業務に必要な工数を適切に見込んで計算する必要がある。このため、工数が記録された作業報告書等を提出させてその実績を確認するとともに、次回の予定価格の積算に反映させる必要がある。
しかし、前記805件の契約のうち、仕様書において作業報告書等の提出を求めている契約360件について作業報告書等により検査したところ、実績工数が積算工数を1割から2割程度下回っている契約が18件(積算額計3422万余円)あった。
また、805件の契約のうち、仕様書において作業報告書等の提出を求めていなかった契約445件について4会社の関係帳簿等により検査したところ、上記と同様に実績工数が積算工数を1割から2割程度下回っている契約が15件(積算額計2158万余円)あった。
以上のとおり、19、20両年度のアウトソーシング契約805件に係る予定価格の積算について、標準資料や実例単価を適用したり、作業の実績を反映させたりして修正計算すると、積算額は計14億3102万余円となり、前記の積算額計15億8850万余円と比べて計約1億5740万円低減できたと認められる。
前記のとおり、アウトソーシング契約について、一般競争契約への移行や競争性及び透明性の確保が十分に図られていない事態や、予定価格の積算に当たり、標準資料や実例等を適用することについての検討が十分でなかったり、作業の実績を工数の算定に反映していなかったりしている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 海上幕僚監部において、部隊等に対して、より積極的に一般競争契約に移行することなど競争性を確保するための方策を講ずることについての指導が十分でないこと、予定価格の積算に当たり、標準資料、実例等の適用及び作業実績を工数の算定に反映させることなどについての指導が十分でないこと
イ 部隊等において、契約方式の決定に当たり、一般競争契約への移行や入札条件、応募条件等についての検討が十分でないこと、予定価格の積算に当たり、標準資料、実例等を適用することについての認識が十分でなく、作業実績の確認が十分でないこと
貴自衛隊において、アウトソーシング契約の契約方式及び予定価格の積算を適切なものとするため、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 一般競争契約への移行について
(ア) 海上幕僚監部において、公共調達の適正化の趣旨に従い、競争性及び透明性を確保するために一般競争契約を一層推進するように部隊等に対して指導するとともに、公募等を行っている契約について、その契約内容等を再度検討するなどして、積極的に一般競争契約に移行するよう指導すること
(イ) 部隊等において、契約方式の決定に当たり、一般競争契約を積極的に導入するとともに、競争性及び透明性を確保するために、入札条件、応募条件等が必要以上に制限的なものとならないよう十分検討すること
イ 予定価格の積算について
(ア) 海上幕僚監部において、訓令等の規定を遵守するなどして予定価格の積算を適切なものとするよう部隊等に対して指導すること
(イ) 部隊等において、予定価格の積算に当たり、標準資料や実例等の適用を十分考慮するとともに、作業報告書を提出させるなどして作業実績を確認し、その実績を積算に反映させること