会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)武器車両等整備費 (項)航空機整備費 |
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平成19年度は、 | (項)武器車両等購入費 (項)装備品等整備諸費 |
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部局等 | 航空幕僚監部(物品管理の総括部局) 航空自衛隊補給本部(物品補給事務の総合調整部局) 航空自衛隊第2補給処、第3補給処、第4補給処(装備品等の保管、補給等担任部局) |
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不具合調査の概要 | 不具合通報の送付を受けた補給処の分任物品管理官が、必要に応じて不具合が生じた品目の在庫品等を対象として不具合の有無について実施する調査 | |||
瑕疵処理の概要 | 報告された不具合の内容が、調達した装備品等の瑕疵であり、当該装備品等の瑕疵担保期間内の場合に、契約の相手方に対して行う当該瑕疵の修補等の請求 | |||
的確に不具合調査が実施されていないため、瑕疵処理が行えなかった装備品等の価格 | 1億3688万円(平成20年度末) |
(平成21年10月30日付け 防衛省航空幕僚長あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴自衛隊は、武器、通信機器等の装備品や航空機の修理用部品等(以下「装備品等」という。)を、装備施設本部に対して調達要求することにより取得したり、自らも調達したりしており、これらに係る支出済額は平成19年度で4731億余円、20年度で5139億余円となっている。そして、貴自衛隊補給本部の管理監督の下、第1から第4までの4補給処(以下「各補給処」という。)が、それぞれ定められた品目の装備品等の調達、保管、補給及び整備を担任している。
装備品等の調達に当たっては、契約担当官等は、調達品等に係る監督及び検査に関する訓令(昭和44年防衛庁訓令第27号)等に基づき、製造等の過程において、必要に応じて実施される監督、装備品等を納地に送付するに先立ち必要に応じて実施される完成検査及び装備品等の受領に際して実施される受領検査(以下、これらを合わせて「監督及び検査」という。)を行うこととされている。調達した装備品等は、契約により納地として指定した部隊又は官給先である契約会社の工場等(以下、これらを合わせて「部隊等」という。)に直接納入されたり、各補給処に納入されて在庫品となった後、補給請求等に基づき部隊等に管理換されたりしている。
一方、こうして調達された装備品等に不具合のある場合があるが、装備品等の不具合は、監督及び検査ですべてを発見することは困難であり、装備品等を管理換された部隊等で発見されることも多数ある。
部隊等において、保有する装備品等に機能不良や装着不能等の不具合事項を発見したときは、当該部隊の分任物品管理官等は、航空自衛隊物品管理補給規則(昭和43年航空自衛隊達第35号)、航空自衛隊物品管理補給手続等(以下、これらを合わせて「補給規則等」という。)の規定に基づき、当該装備品等の数量や不具合事項等を記録した不具合通報(以下「通報」という。)を作成して、当該装備品等を担任する各補給処の分任物品管理官にできる限り速やかに送付することとされている。そして、その不具合の内容が、装備品等が仕様書等で要求されている一定の品質、性能又は通常有すべき品質、性能を欠いていたり、数量が不足したりしている瑕疵であり、かつ、その不具合を発見した日が、装備品等の納入の日から契約条項で定められた一定の期間(以下「瑕疵担保期間」という。)内の場合には、通報の送付を受けた各補給処の分任物品管理官は、瑕疵担保期間内に不具合が発見されたことを通知する異状報告書に通報を添付して調達部局に送付し、当該調達部局は、契約条項に基づき、契約の相手方に当該瑕疵の修補等の請求(以下、これらの一連の処理を「瑕疵処理」という。)をすることとしている。
各補給処の分任物品管理官は、補給規則等及び各補給処がそれぞれ定めた通報の処理等に関する達に基づき、送付を受けた通報の内容を審査し、必要に応じて不具合が生じた品目の在庫品等を対象として、当該通報と同種の不具合の有無についての調査(以下「不具合調査」という。)等を行うこととしている。
ただし、どのような場合に不具合調査を実施するのかということやその対象範囲、各補給処に検査器材等がない場合の処理方法等について、各補給処に共通の具体的な処理基準は定められていない。
本院は、貴自衛隊が管理運用する装備品等の不具合調査及び瑕疵処理について、経済性、効率性等の観点から、各補給処が通報の送付を受けた際に的確に不具合調査を実施して同種の不具合を発見するなどし、瑕疵処理を行っているかなどに着眼して検査した。
貴自衛隊航空幕僚監部、補給本部、各補給処及び11部隊等(注) において、通報等の書類により不具合が報告された装備品等の処理状況や不具合調査の実施状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
各補給処が19年度及び20年度第3四半期までに部隊等から送付を受けた通報の総数は計5,695件あり、このうち計3,503件は、瑕疵担保期間内に不具合が発見されていて、すべて瑕疵処理を行っていた。一方、残りの計2,192件は、瑕疵担保期間経過後に不具合が発見されていた。
上記5,695件の通報により報告された2,744品目について不具合の発生状況をみると、複数の通報により不具合が報告されている品目が997品目あり、これらの中には、同一品目で、瑕疵担保期間内に不具合が複数個報告されていて、瑕疵担保期間経過後にも不具合が発見されているものが43品目あった。
そこで、これら43品目について、〔1〕 瑕疵担保期間内に報告された複数個の不具合がすべて同種のものであり、同一品目の在庫品等にも同種の不具合がある可能性が高いと考えられる品目(以下「同種不具合品目」という。)、〔2〕 瑕疵担保期間内に複数個の不具合が報告された装備品等がすべて同一契約で調達されたもので、不具合の内容等からみて、当該契約で調達された同一品目の在庫品等にも不具合がある可能性が高いと考えられる品目(以下「同一契約不具合品目」という。)などに係る不具合調査の実施状況等を検査した。
不具合調査は、各補給処が必要であると判断した在庫品等について、各補給処及び部隊等において、正常に機能するかを確認する機能検査、形状や寸法を確認する測定検査、外観を確認する目視検査等を行うことにより実施されていた。そして、各補給処は、検査器材を保有していないことなどから、主として目視検査を行い、部隊は、目視検査に加え保有している検査器材を使用するなどして、機能検査及び測定検査を行い、官給先である契約会社の工場等は、目視検査及び測定検査を行っていた。
しかし、瑕疵担保期間内に不具合が複数個報告されたものについて、直ちに不具合調査が行われなかったため、瑕疵担保期間経過後にも不具合が発見されているものが、貴自衛隊第2補給処、第3補給処及び第4補給処において、同種不具合品目で15品目45個9198万余円(20年度末の物品管理簿上の単価に数量を乗じた価格)、同一契約不具合品目で4品目17個4490万余円(同)、計19品目62個1億3688万余円(同)見受けられた。これらの装備品等は、瑕疵担保期間経過後に不具合が発見されたことから瑕疵処理は行われておらず、修理ができない装備品等として保管されるなどしていた。
各補給処においては、担任する装備品等について、同一品目の在庫品等の所在、保有数量等を調査し把握することが可能であり、上記19品目の装備品等は、同種不具合品目や同一契約不具合品目であることから、不具合が複数個報告された時点で、不具合調査を実施する必要があると判断できたと認められる。
したがって、上記19品目の装備品等について、不具合が複数個報告された時点で、前記の3補給処において、検査器材等を有する部隊及び官給先の契約会社等との間で相互に協力し、在庫品等のうち瑕疵担保期間内であるものを対象として重点的、優先的に不具合調査を行うなどして瑕疵担保期間内に不具合を発見し、瑕疵処理をすべきであったと認められる。
上記について事例を示すと、次のとおりである。
第2補給処は、平成19年10月2日にA社へ官給したパワータービンローター(20年度末の物品管理簿上の単価2,284,181円)計57個のうち、29個にバランス不良やブレード変形の不具合があった旨の通報をA社から20年8月25日に受理した。当該装備品等はすべて同一契約で調達したもので、いずれも瑕疵担保期間が同年10月1日までであることから、同年9月26日に契約相手先のB社に瑕疵修補を請求して、修補の承諾を受けている。さらに、上記と同一契約で調達した10個についても、バランス不良や腐食等の不具合があった旨の通報をA社から同年10月21日に受理したが、既に瑕疵担保期間が経過していたため、瑕疵処理を行うことができなかった。
しかし、これらの10個は、当初に不具合が報告された29個と同一契約で調達したものであり、不具合が複数個報告された時点で、第2補給処が当該装備品等のうち瑕疵担保期間内のものについてA社へ検査を依頼するなどしていれば、瑕疵担保期間内に当該不具合を発見し、瑕疵処理を行うことができたと認められる。
上記のように、瑕疵担保期間内に不具合が複数個報告されていたにもかかわらず、その時点で、的確な不具合調査が実施されていないため、当該品目の在庫品等の不具合が速やかに発見されず、瑕疵担保期間経過後になって不具合が発見され、瑕疵処理が行えないこととなっており、ひいては装備品等の効率的な管理運用が図られていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴自衛隊において、同種不具合品目や同一契約不具合品目のように在庫品等にも不具合がある可能性が高いと考えられる場合に、これらと同一品目又は同一契約の装備品等で瑕疵担保期間内にある在庫品等に対して重点的、優先的に不具合調査を実施することとする具体的な処理基準が整備されておらず、各補給処において、検査器材等を有する部隊及び官給先の契約会社等との間で相互に協力し、これらに対する的確な不具合調査を実施する体制が十分でなかったことなどによると認められる。
貴自衛隊は、多数の高額な装備品等を管理運用しており、これらに係る不具合報告事例も毎年度多数に上っている。そして、今後も限られた予算の範囲内で所要の使用可能数量を確保するため、不具合調査を的確に行って可能な限り瑕疵担保期間内に不具合を発見して瑕疵処理を行う必要がある。
ついては、貴自衛隊において、同種不具合品目や同一契約不具合品目が通報により報告された際には、これらと同一品目又は同一契約の装備品等で瑕疵担保期間内にある在庫品等に対して重点的、優先的に不具合調査を実施することとする具体的な処理基準を定め、各補給処において、的確に不具合調査を実施することができるよう検査器材等を有する部隊及び官給先の契約会社等との間で相互に協力する体制を整備するなどの所要の措置を講じ、もって装備品等の効率的な管理運用を図るよう改善の処置を要求する。