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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第14 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

軽装甲機動車を巡回点検する技術援助役務契約の実施に当たり、巡回点検の対象車両数を必要最小限のものとしたり、点検項目を削減したりすることにより経済的なものとするよう改善させたもの


(1) 軽装甲機動車を巡回点検する技術援助役務契約の実施に当たり、巡回点検の対象車両数を必要最小限のものとしたり、点検項目を削減したりすることにより経済的なものとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等 陸上幕僚監部、陸上自衛隊補給統制本部
契約名 技術援助“国産装軌車等”(軽装甲機動車)他22品目(平成19、20両年度)
契約の概要 軽装甲機動車について納入後1年以内に巡回点検を行わせるもの
契約の相手方 コマツ特機株式会社
契約 平成19年9月、20年10月 随意契約
契約金額 5532万余円 (平成19、20両年度)
節減できた契約額 1300万円 (平成19、20両年度)

1 軽装甲機動車の点検、整備の概要

(1) 技術援助役務契約による巡回点検の概要

 陸上自衛隊は、敵に対して戦略・戦術的な優位を占めるための移動等に用いられる軽装甲機動車を調達して主に普通科部隊に配備しており、部隊配備が開始された平成14年度から20年度までの間に計1,071両が納入されている。
 陸上自衛隊補給統制本部(以下「補統本部」という。)は、陸上幕僚監部が毎年度発する通達に基づき、納入後1年以内の軽装甲機動車について、装備品の初期故障を早期に発見してその後の整備に寄与させるためとして、毎年度、2か年度の国庫債務負担行為により、コマツ特機株式会社との間で技術援助役務契約(以下「役務契約」という。)を締結して、納入後6か月及び12か月の点検(以下「巡回点検」という。)を同社に請け負わせている。
 巡回点検は、同社が作業員を納入先の駐屯地に派遣して、役務契約で定められた点検項目に基づき、大部分の装置について分解することなく機能、損傷の有無等を点検して、その都度、作業記録を作成し補統本部に送付するものである。
 補統本部は、役務契約を概算額で締結しており、各年度に納入された軽装甲機動車のすべてを対象に、作業員の工数を6か月点検は1両当たり5時間、12か月点検は1両当たり6時間を上限として、工数の実績に基づき加工費を算定するなどして精算を行っている。このうち、19年度の役務契約では180両を対象に精算額は2724万余円となっている。また、20年度については、173両を対象に概算額を2808万余円としている。

(2) 陸上自衛隊の部隊による整備等

 一方、陸上自衛隊は、陸上自衛隊整備規則(昭和52年陸上自衛隊達第71—4号)に基づき、部隊等が器材等を常に良好な状態に維持し、故障の発生を未然に防止するため、軽装甲機動車について、定期的又は使用の都度、点検、調整、交換等(以下「予防整備」という。)を行っている。このうち、納入後1年までの予防整備については、使用の都度に実施するA整備及び1か月ごとに実施するB整備を使用部隊等が行い、納入後6か月の時点で実施するC整備及び12か月の時点で実施するD整備を使用部隊を支援している整備部隊等が行っている。C整備は主要な装置を、D整備はほとんどの装置を対象に、車両の一部を分解の上、機能、損傷の有無等を点検して、構成品の調整、油脂・部品等の補充、交換等を行うものである。
 また、軽装甲機動車は、納入後1年間は、製造請負契約に基づいて、発見された不具合が瑕疵であると判断された場合、無償で製造業者に補修等を実施させることができることとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、巡回点検の対象とする車両数(以下「対象車両数」という。)や巡回点検における点検項目が部隊等における軽装甲機動車の予防整備の状況を十分考慮したものとなっているかに着眼して、補統本部が19、20両年度に締結した役務契約による軽装甲機動車の巡回点検について、陸上幕僚監部、補統本部等において、同社の作業員が作成した作業記録を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 作業記録が残っていた15年度から19年度までの契約分について検査したところ、その後の参考となる事項、異常の発見等の記載事項はほとんどなかった。また、巡回点検により瑕疵を発見した場合は、補統本部に報告することとなっているが、その報告事例もなかった。このように、巡回点検の目的である初期故障の早期発見は、これまでの実績ではほとんどない状況となっていた。
 さらに、軽装甲機動車について1年間のうち正常に使用することができた日数の割合を示す可動率をみると、毎年度95%程度と高い水準になっており、故障の発生が少なく、故障が発生しても短期間で補修される傾向にあると認められた。これらのことから、軽装甲機動車は、機械的な信頼性が高く、部隊等による整備が容易な車両であると認められ、必ずしも納入車両数のすべてについて巡回点検をする必要はないと認められた。
 したがって、軽装甲機動車の導入実績がないため整備に不慣れな整備部隊等があることや、一般に機器等の故障率は使用開始直後が高いとされていることを考慮して、納入後1年以内の車両のすべてを対象車両数とするのではなく、このうち軽装甲機動車が初めて導入される部隊の車両数(以下「初度導入車両数」という。)と初期故障等の状況を把握するため必要とされる統計的手法による抽出車両数(以下「必要車両数」という。)とを比較し、いずれか多い方の車両数を対象として巡回点検を実施することとして、対象車両数を削減すべきであると認められた。
 上記に基づき、対象車両数を修正すると、初度導入車両数は19年度159両、20年度21両、必要車両数は19年度123両、20年度119両となるので、対象車両数は19年度159両、20年度119両となる。このため、両年度の役務契約の対象とした車両数19年度180両、20年度173両は、それぞれ19年度は21両、20年度は54両を削減できると認められた。
 また、整備部隊等が実施する予防整備は、巡回点検が行われる車両についても行うこととなっており、19年度分についてみると巡回点検とほぼ同時期にC及びD整備を行っていた。陸上自衛隊では、この点について、巡回点検と予防整備は、それぞれ別個の観点から実施しているとしており、巡回点検では製造業者等の高度な技術力が活用できるとして、それぞれの点検項目を比較検討することなく巡回点検及び予防整備を実施していた。
 しかし、ほぼ同時期に実施されている巡回点検と予防整備の点検項目の多くは重複しており、前述のとおりD整備では巡回点検で行わない分解整備についても必要に応じて行っていた。そこで、巡回点検の点検項目(6か月点検及び12か月点検とも約200項目)について、削減可能な項目はないか検討したところ、予防整備と重複していて、仮に異常が発見できなかった場合でも重大事故につながるおそれがないことなどから巡回点検の点検項目としないこととしても支障がなく削減することが可能であると認められる点検項目が、6か月点検及び12か月点検とも各62項目あった。これらの点検項目について、巡回点検を実施しないこととすると、工数が6か月点検及び12か月点検とも、1両について0.68時間減少することになると認められた。

(節減できた契約額)

 上記のとおり、対象車両数及び巡回点検の項目数を削減して契約金額を修正計算すると、19年度2167万余円、20年度2064万余円、計4231万余円となり、19年度556万余円、20年度744万余円、計1300万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、陸上自衛隊において、軽装甲機動車の巡回点検でその後の参考となる事項や異常がほとんど発見されたことがない状況であるのに、毎年度納入車両数のすべてを巡回点検の対象とする必要性の有無について十分検討していなかったこと、また、巡回点検の点検項目数を削減できないか、予防整備の内容と比較検討する認識が十分でなかったことなどによるものと認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、21年9月に補統本部に対して、軽装甲機動車の巡回点検について通達を発して、20年度契約のうち今後契約変更が可能なもの及び21年度以降の契約について、巡回点検の対象車両数を必要最小限のものに削減するとともに、予防整備の内容と重複する点検項目数のうち支障のないものを削減することなどにより工数を減少させる処置を講じた。