会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)防衛本省 | (項)装備品等整備諸費 |
部局等 | 海上幕僚監部(調達要求部局) 装備施設本部(契約部局)(平成19年8月31日以前は装備本部、18年7月30日以前は契約本部) 航空補給処(修理用部品の官給所掌部局) |
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契約名 | P-3C及び同派生型航空機 PAR 役務請負契約等7契約 | ||
契約の概要 | 航空機の機体及びエンジンについて安全かつ効果的に運用し得る品質を維持するための定期修理作業の役務請負契約 | ||
契約の相手方 | 川崎重工業株式会社、日本飛行機株式会社、三菱重工業株式会社 | ||
契約 | 平成18年2月〜19年1月 随意契約 | ||
契約金額 | 76億2484万余円 | (平成17、18両年度) | |
社外購入部品の調達額 | 1億7228万余円 | (平成17、18両年度) | |
上記の社外購入部品に係る総利益の額 | 2108万余円 | ||
官給することができた社外購入部品の調達額 | 8282万余円 | (平成17、18両年度) | |
低減できた総利益の額 | 1070万円 | (平成17、18両年度) |
海上自衛隊は、航空機の機体及びエンジンについて、安全かつ効果的に運用し得る品質を維持するために整備作業を実施する必要があり、そのため、海上幕僚監部は、航空機の機体及びエンジンの定期修理作業(以下「定期修理作業」という。)の役務を装備施設本部(平成19年8月31日以前は装備本部、18年7月30日以前は契約本部)に調達要求している。
これを受け、装備施設本部は、修理会社と役務請負契約を締結しており、そのうち17年度から19年度までの各年度において川崎重工業株式会社、日本飛行機株式会社及び三菱重工業株式会社(以下「3修理会社」という。)と締結して、18年度又は19年度に完了した定期修理作業に係る役務請負契約は計33件、234億9965万余円となっている。
航空補給処は、定期修理作業の役務請負契約で使用する航空機部品(以下「修理用部品」という。)について、航空機等整備実施要領(平成10年通知補本装航第89号)に基づき、原則として、おおむね単価50,000円未満の品目や技術上又は補給上修理会社が負担することを適当とする品目(以下、これらを「業者負担部品」という。)を除き、自ら商社等から購入するなどして準備した修理用部品(以下「官側負担部品」という。)を修理会社からの官給請求に基づき官給することとなっている。
航空補給処は、官側負担部品について、修理会社からの官給請求に対して、在庫等がある場合には官給を行っているが、必要数量の増加等やむを得ない理由により、修理会社が必要とする期日(以下「官給必要期日」という。)までに官給が困難であると判断した官側負担部品(以下「官給困難品」という。)については、当該品目の作業工程上の官給必要期日等を考慮の上、修理会社に対して官給することが困難である旨を通報することとなっている。そして、修理会社は、自ら準備可能と判断した当該修理用部品について、航空補給処から官給困難品の指定を受けた上、自ら製造したり、商社等から購入したり(以下、修理会社が商社等から購入した修理用部品を「社外購入部品」という。)して修理に用いることとなっている。
装備施設本部は、修理会社と役務請負契約を締結するに当たり、調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第35号)に基づき、予定価格を原価計算方式により算定することとして、直接材料費、加工費及び直接経費の製造原価に、所定の率を乗じて算出される総利益(一般管理及び販売費、利子並びに利益を合計したものをいう。以下同じ。)を加算するなどの方法により計算価格を算定し、これを基に予定価格を決定している。
そして、役務請負契約の予定価格の算定において、修理会社が調達することになる社外購入部品は、業者負担部品とともにその調達に要する費用は直接材料費として計上されるため、それに総利益が加算されることになる。これに対して、航空補給処が当該社外購入部品を自ら調達して修理会社に官給した場合には、当該部品の購入価格に総利益に相当する額は加算されない。
本院は、経済性等の観点から、役務請負契約において直接材料費として計上される修理用部品を官給した場合、当該総利益に相当する額が加算されないことになるため、航空補給処が準備すべき官側負担部品を適切に調達して官給しているかに着眼して、前記の33契約を対象として、検査を行った。
そして、検査に当たっては、海上幕僚監部、航空補給処及び装備施設本部において修理用部品の調達に係る書類及び契約書等により会計実地検査を行うとともに、契約相手方である3修理会社に対して会計検査院法第23条第1項第7号の規定により検査することに決定して、社外購入部品の調達に係る経理書類等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
3修理会社において経理書類等で確認したところ、前記33契約の社外購入部品の調達額は計12億6943万余円となっていた。
このように社外購入部品の調達額が多額となっている原因について検査したところ、3修理会社は航空補給処へ受領希望日をおおむね10日以内として官給請求を行っていた。これに対して、航空補給処は、在庫等が無いことについては確認していたが、当該修理用部品の調達に要する期間(以下「調達期間」という。)と官給請求日から作業工程上の官給必要期日までの期間(以下「必要期間」という。)とを比較検討することなく、受領希望日までに官給が困難であると判断して当該修理用部品を官給困難品に指定して、3修理会社に購入させていた。
しかし、3修理会社において、前記33契約のうち物品購入伝票が保存されているなど資料の確認が出来た17、18両年度の7契約、計76億2484万余円に含まれる社外購入部品計155品目(調達額計1億7228万余円)の実際の調達期間と必要期間とを比較検討したところ、計89品目(調達額計8282万余円)については、調達期間が必要期間より短くなっていることから航空補給処で官給必要期日までに商社等から購入して3修理会社に官給することができたと認められた。
上記の7契約において、社外購入部品計155品目のうち官給請求を受けてから官給必要期日までに航空補給処で購入できたと認められる計89品目について、航空補給処が商社等から同額で購入して官給することとして、当該役務請負契約の計算価格における直接材料費に係る総利益の額を修正計算すると、前記17、18両年度の7契約の155品目に係る総利益の 額計2108万余円を約1070万円低減でき、3修理会社が社外購入部品として購入する場合に比べて経済的に調達できたと認められた。
前記のように、予定価格の算定上直接材料費として計上され、これに総利益が加算されている社外購入部品について、航空補給処が、官給することとして商社等から購入すれば経済的な調達が可能となるものがあるのに、官給困難品として指定して、3修理会社に購入させている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、海上幕僚監部において、官給困難品の処理方法の把握が十分でなく、また、航空補給処に対して経済的な調達を図ることについて周知徹底が十分でなかったこと、また、航空補給処において、官給請求に対して、官給可能な修理用部品がない場合に、官給必要期日の検討を十分行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、海上幕僚監部は、航空補給処に対して経済的な調達を図るよう周知徹底を行い、航空補給処は、21年5月に官給困難品の指定に関する手続を定める処置を講ずるとともに、同年9月に官給請求に対して調達の可否を検討するために的確な官給必要期日を通知するよう依頼する文書を修理会社に発して、可能と判断された場合には商社等から購入して官給する処置を講じた。