会計名 | 一般会計 |
部局等 | 航空自衛隊第2補給処 |
修復性区分の概要 | 物品管理補給業務を的確に行うため、修理を実施することが経済的であるか否かに応じて、物品を修復性品目と非修復性品目に区分し、このうち、修復性品目に区分した物品については修理の上、使用するもの |
処分保留の処置の概要 | 修復性区分の変更の検討を行っている物品について、検討期間中、基地等で不用決定せずに補給処に返還させ、修復性品目へと変更された際に修理して再利用できるよう備えるもの |
処分保留の処置が徹底されていなかったために不用決定の上処分されたもの | コントロール・アッセンブリ・ピッチ・スタビライゼーション |
13個 3198万円(平成20年度末) |
航空自衛隊は、航空機、武器、通信機器等の装備品の構成品等の物品を調達している。そして、調達した構成品等の物品については、物品管理法(昭和31年法律第113号)等に基づき、防衛大臣が物品の管理に係る事務を航空自衛隊の物品管理官である航空幕僚長に委任するとともに、物品管理官の事務の一部を補給処及び基地等の分任物品管理官に分掌させている。
物品管理官及び分任物品管理官は、管理する物品のうち、供用することができない物品及び修理又は改造に多額の費用を要する物品等については、物品管理法、航空自衛隊物品管理補給規則(昭和43年航空自衛隊達第35号)及び航空自衛隊物品管理補給手続(平成4年補給本部長制定)に基づき、不用決定し廃棄することができることとなっている。
航空自衛隊は、上記の規則等に基づき、物品を修復性品目、すなわち、物品が使用不能となったときに、経済的に使用可能な状態に修復できると補給処において判断される品目と、非修復性品目、すなわち、物品が使用不能となったときに、本質的に修復できない品目や、補給処において修復の実施が経済的でないと判断される品目とに区分して管理することとしている。
そして、非修復性品目に区分されている物品が、実際に使用不能となったときには、物品管理官及び分任物品管理官は、これを不用決定し廃棄することとなっている。
航空自衛隊第2補給処(以下「2補処」という。)は、航空機の整備等を行うとともに、航空機の機体用部品等の補給、整備等を行っている。2補処の分任物品管理官である第2補給処長は、航空機の機体用部品等について、上記の修復性区分の再検討が必要となった場合は、「第2補給処における修復性品目の選定及び選定後の処置に関する達」(平成15年第2補給処達第1号。以下「達」という。)に基づき、修復性区分の変更の検討を行うこととされている。そして、非修復性品目とされていた航空機の機体用部品等について、検討の結果、経済的に使用可能な状態に修復できると、2補処において判断した場合には、非修復性品目から修復性品目へと変更することとされている。
航空自衛隊が管理する物品について、経済性、効率性等の観点から、修復性区分の変更の検討対象となった物品の管理は適切に行われているかなどに着眼して、航空幕僚監部、補給本部、2補処等及び7基地(注1) において、平成20年度に修復性区分の変更の検討対象とした物品について、対象として選定した理由等を担当者から聴取したり、物品管理簿や不用決定の状況等を調査したりなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
2補処が需給の統制をしているF—15型航空機用コントロール・アッセンブリ・ピッチ・スタビライゼーション(注2)
(以下「コントロール・アッシー」という。20年度末物品管理簿単価2,460,150円)については、航空自衛隊技術指令書により、製造後18年で定期交換することとされている。そして、定期交換又は故障等により機体から取り下ろされたコントロール・アッシーは非修復性品目に区分されていたため、基地等において不用決定し廃棄することとされていた。
しかし、2補処は、米軍がコントロール・アッシーを修理しているとの情報を得たことから、16年12月から達に基づき、修復性区分の変更の検討を開始した。また、2補処は、これを基地で不用決定せずに2補処に返還させることにより、コントロール・アッシーが修復性品目に変更された際に、修理して再利用できるよう備えることとした。
そして、2補処は、同月に、コントロール・アッシーを取り扱っている前記7基地の分任物品管理官及びF—15型航空機の定期修理を行っているA社の工場物品管理責任者(注3)
に対して、2補処でその修復性区分の変更を検討している間、定期交換等により取り下ろしたコントロール・アッシーについては、不用決定手続をせずに要修理品として2補処に返還し、また、既に不用決定手続中のものについては、その承認手続を取り止める処置(以下、これらの処置を「処分保留の処置」という。)を執るよう電話で指示したとしている。
その後、2補処は、18、19及び20年度に取り下ろしたコントロール・アッシー75個を診断の上、そのうち67個について修理する契約(5契約総額25,659,900円)を18年7月から順次修理会社と締結するとともに、これらの契約の実績を勘案するなどして、検討開始から3年以上経過した20年5月にコントロール・アッシーの修復性区分を非修復性品目から修復性品目へ変更した。
しかし、コントロール・アッシーを保有する前記7基地のうち、浜松、小松、岐阜及び新田原の4基地の各分任物品管理官は、2補処が処分保留の処置を執るよう電話で指示したとしている16年12月から修復性区分が変更された20年5月までの間に取り下ろした計33個のコントロール・アッシーのうち、24個を2補処に返還しているものの、残りの9個については不用決定し廃棄していた。
また、A社の工場物品管理責任者は、F—15型航空機の定期修理時に取り下ろした計10個のコントロール・アッシーのうち、6個を2補処に返還しているものの、残りの4個については2補処に対して不用決定の申請を行っており、申請を受けた2補処においても、第2補給処長がこれらを不用決定し廃棄していた。
このように、コントロール・アッシーを保有する4基地の分任物品管理官が9個を不用決定するとともに、第2補給処長自らもA社が保有する当該物品4個を不用決定して、合計で13個のコントロール・アッシー(物品管理簿価格計31,981,950円)を廃棄していた事態は、その修理の機会を逸失していて適切でなく、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、2補処において、修復性区分の変更の検討に要する期間が長期に渡るものがあるのに、処分保留の処置をする際の手続が明確に定められておらず、単に電話で行っていたことから、処分保留の処置に関する2補処と基地の分任物品管理官等との間における連絡調整及び補給処内部の連絡調整が徹底されていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、2補処は、21年8月に達を改正して、非修復性品目の修復性区分の変更を検討するときは、基地等に処分保留の処置を徹底するよう文書により依頼するなど、処分保留に係る手続を制度化する処置を講じた。なお、航空幕僚監部は、同年同月に、各補給処が修復性区分の変更の検討対象となった物品について、処分を保留する場合にはその手続の明確化に留意するよう、補給処の物品管理事務の総合調整部局である補給本部に対応を指示した。