科目 | 公庫貸付金 | |
部局等 | 沖縄振興開発金融公庫本店 | |
貸付けの根拠 | 沖縄振興開発金融公庫法 | (昭和47年法律第31号) |
賃貸住宅貸付けの概要 | 賃貸住宅を建設して事業を行う者に、住宅の建設等に必要な資金の貸付けを行うもの | |
賃貸住宅貸付件数 | 556件 | (平成20年度末) |
上記に係る貸付金残高 | 610億2525万余円 | (平成20年度末) |
賃貸条件の制限違反があった賃貸住宅貸付件数 | 10件 | |
上記に係る貸付金残高 | 11億4891万円 | (平成20年度末) |
(平成21年10月16日付け 沖縄振興開発金融公庫理事長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び 是正改善の処置を求める。
記
貴公庫は、沖縄振興開発金融公庫法(昭和47年法律第31号)に基づき、沖縄における経済の振興及び社会の開発に資することを目的として、沖縄において住宅を建設して賃貸する事業を行う者に対して、一般の金融機関が供給することを困難とする長期資金の貸付け(以下「賃貸住宅貸付け」という。)を行っている。
また、沖縄振興開発金融公庫法施行規則(昭和47年総理府・大蔵省令第1号。以下「施行規則」という。)によると、賃貸住宅貸付けにより建設された賃貸住宅(以下「賃貸住宅」という。)の賃借人の資格は、現に住宅に困窮している者で家賃の支払ができる者等とされている。そして、貴公庫の賃貸住宅貸付けの残高は、平成21年3月末現在610億2525万余円(556件)となっている。
そして、上記の賃貸住宅貸付けの原資についてみると、国の財政融資資金からの借入れなどとなっている。また、貴公庫は、業務の円滑な運営を図るため、賃貸住宅貸付けを含めた業務全般の損益計算上の不足額について毎年度国から収支差補給金を受け入れている。
上記のように国の財政援助を得て実施された賃貸住宅貸付けについて、賃借人の保護を図ることなどの目的から、施行規則により借受者は、賃貸住宅の賃貸に当たって、家賃及び家賃の3か月分(貸付けの種類により6か月分)を超えない額の敷金を除き、賃借人から礼金等の金品を受領したり、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としたりしてはならないこととされている。
そして、貴公庫は、賃貸住宅貸付けの条件の一つとなっている上記の賃貸条件の制限を遵守させるため、賃貸住宅貸付けの申込みを受け付ける際などに賃貸条件の制限について借受者に説明を行ったり、パンフレットを配布したりしている。さらに、貴公庫と借受者が締結する金銭消費貸借抵当権設定契約において、賃貸条件の制限について明記するとともに、同契約の締結に先立って賃貸借契約書のひな形により賃貸条件の制限違反の有無を確認するなどしている。
本院は、合規性、有効性等の観点から、賃貸住宅貸付けについて賃貸条件の制限が遵守され、賃借人の保護が図られているかなどに着眼して、21年3月末現在で貸付残高がある賃貸住宅貸付け556件のうち、賃貸条件が入居募集広告等に記載されていた49件について賃貸条件の調査を行ったところ、賃貸条件の制限に違反している可能性のあるものが12件見受けられた。これらについては、貴公庫に調査を求め、その調査結果を確認するとともに、貴公庫による賃貸条件の制限に係る確認や調査が適切に実施されているかなどについて東京本部において実地に検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
上記12件のうち10件(20年度末貸付金残高11億4891万余円)において、借受者が賃借人から礼金を受領しているなど賃貸条件の制限に違反している事態が見受けられた。
そして、この10件(総戸数162戸)の違反内容についてみると、次表のとおり、礼金を受領していたものが6件25戸、敷引き(注)
を設定していたものが2件13戸、一定期間内に賃貸借契約を解約した場合には違約金を支払うことなど賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としていたものが10件70戸、合計73戸となっていた。
賃貸条件の制限に違反している事態 | 件数 (件)
|
違反戸数 (戸)
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礼金等の合計額 (円)
|
礼金の受領 | 6 | 25 | 1,367,000 |
敷引きの設定 | 2 | 13 | 762,000 |
その他賃借人の不当な負担 | 10 | 70 | — |
合計 | 10 | 73 | / |
(総戸数162戸) |
貴公庫では、前記のとおり金銭消費貸借抵当権設定契約の締結に先立って賃貸借契約書のひな型を確認するなどしているが、貸付け後において賃貸条件の制限違反の有無の確認を全く行っていなかった。
上記のように、借受者が礼金を受領するなど施行規則で規定された賃貸条件の制限を遵守していない事態や、貴公庫において借受者に賃貸条件の制限を遵守させるための措置を講じていない事態は適切とは認められず、早急に是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、借受者や借受者から委託を受けて入居募集業務等を行っている不動産仲介業者等(以下「不動産業者」という。)において、施行規則に規定する賃貸条件の制限に関する認識が欠如していることなどにもよるが、貴公庫において、次のことなどによると認められる。
ア 借受者及び不動産業者に対して、賃貸条件の制限について十分に周知徹底していなかったこと
イ 賃借人に対して、賃貸条件の制限について十分に広報していなかったこと
ウ 貸付け後、賃貸借契約書による賃貸条件の制限違反の有無の確認等を全く行っていないなど賃貸条件の制限を借受者に遵守させるための体制が整備されていなかったこと
賃貸住宅貸付けは、沖縄において賃貸住宅を建設して事業を行う者に、一般の金融機関が供給することを困難とする長期資金を供給して、もって沖縄における経済の振興及び社会の開発に資する目的で行われており、国の財政融資資金からの借入れなど国の財政援助を得ている。そして、これにより建設された賃貸住宅については、賃借人の保護を図るなどの目的で賃貸条件の制限が設けられている。
ついては、貴公庫において、賃貸条件の制限に違反している前記の10件について、借受者に対して賃借人に礼金を返還させたり、賃貸借契約書の内容を賃貸条件の制限に適合するよう変更させたりするなどの処置を講ずるとともに、他のすべての賃貸住宅貸付けについて、賃貸条件の制限違反の有無を調査して、違反しているものがあれば速やかに同様の処置を講ずるよう是正の処置を要求する。
また、賃貸条件の制限が遵守されるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 借受者に対して、賃貸条件の制限について周知徹底するとともに、不動産業者に対して、業界団体を通じて賃貸条件の制限の周知を図ること
イ 賃借人に対して、貴公庫が融資した賃貸住宅は、賃貸条件の制限により礼金等を支払う必要のない物件であることを、貴公庫のホームページなどを通じて周知すること
ウ 賃貸条件の制限を借受者に遵守させるため、賃貸住宅の実態調査に関するマニュアル等を整備して、これにより賃貸条件の制限違反の有無の確認を毎年確実に実施すること