ページトップ
  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第5 成田国際空港株式会社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

子会社が行う業務の発注において、競争の利益をより享受できるよう競争的な契約方式の導入を図らせるよう意見を表示したもの


(1) 子会社が行う業務の発注において、競争の利益をより享受できるよう競争的な契約方式の導入を図らせるよう意見を表示したもの

科目 営業管理費、外注費等
部局等 成田国際空港株式会社本社及び19子会社
契約の概要 成田国際空港における空港運営事業、リテール事業、施設貸付事業及び鉄道事業に関する業務を行うもの
検査の対象とした子会社における契約件数及び契約金額 993件 359億5082万余円 (平成20事業年度)
上記のうち競争的な契約方式の導入が可能であった契約件数及び契約金額 220件 35億4928万円  

【意見を表示したものの全文】

  子会社における契約事務の実施について

(平成21年10月7日付け 成田国際空港株式会社代表取締役社長あて)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 成田会社グループにおける契約事務等の概要

(1) 中期経営計画、連結子会社等管理規程等

 貴会社は、成田国際空港株式会社法(平成15年法律第124号)に基づき、成田国際空港の設置及び管理を効率的に行うことなどにより、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与することを目的とし、平成16年4月1日、同法の規定により解散した新東京国際空港公団の一切の権利及び義務を承継して、全額政府出資の特殊会社として設立された。そして、貴会社は、株式上場による完全民営化の早期実現を目標として掲げており、18事業年度から22事業年度までの5か年の中期経営計画「Newステージ2010」(以下「中期計画」という。)を策定して、貴会社と子会社等が構成する企業集団(以下「成田会社グループ」という。)の経営基盤の強化に向けて、設備投資や経費の更なるコスト削減に取り組むこととしており、また、社会に評価される企業グループを目指して、法規範等の遵守を徹底することとしている。
 貴会社は、連結子会社等管理規程(平成19年規程第17号)を定め、子会社等の経営の自主性を尊重するとともに、緊密な連携と協力のもと、成田会社グループの収益の向上を図ることとしている。そして、子会社等各社の経理規程等の重要な規程等の制定及び改廃に関することなどについて、適正であると認めたときは貴会社がこれを承認するとともに、子会社等の事業の遂行状況等について報告を求め、必要に応じて協議するとしている。
 また、貴会社は、契約に当たり、公正性、透明性等を確保するため、調達規程(平成18年規程第22号)等において契約に係る基本的事項を定めている。そして、調達規程等によれば業務を民間会社等(以下「業者」という。)へ発注する場合の契約は、原則として競争契約によることとなっているが、契約の性質又は目的が競争を許さない場合等においては随意契約によることとされ、また、契約に係る金額が少額である場合等においては随意契約によることができることとなっている。

(2) 子会社における契約事務の概要

 成田会社グループは、空港運営事業、リテール事業(注1) 、施設貸付事業及び鉄道事業を実施している。そして、エアポートメンテナンスサービス株式会社等19子会社(以下「19子会社」という。別表参照。)は、貴会社又は空港施設に入居する航空会社等から上記の事業に係る業務を受託するなどして、これら業務を自ら実施するものと業者に発注するものとに区分して実施しており、業者に発注する場合の契約の方式等については、貴会社から特段の指示等はなく各社の裁量に委ねられている。

 リテール事業  成田国際空港施設内における免税店、小売店等の運営、空港関連サービスの提供等に係る事業

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 貴会社は、契約に当たり、調達規程等に基づき、原則として競争契約によることとしている一方で、19子会社における契約については、上記のとおり、各社の裁量に委ねている。成田会社グループの経営において、子会社が効率的、経済的な業務運営を行うことは、成田会社グループとしての経営の効率性、収益性の向上につながるとともに、ひいては貴会社への国の出資の目的にも沿うものである。
 そこで、本院は、貴会社及び19子会社において、経済性等の観点から、成田会社グループの経営基盤の強化に向けて経費の更なるコスト削減及び収益の向上が図られているか、特に契約の競争性、公正性及び透明性が確保されているかなどに着眼して、19子会社が20年4月から10月までの間に締結している契約のうち、調達規程等を準用した場合に、契約金額が少額な契約を除く993件(契約金額計359億5082万余円)を対象として、契約書等の書類により実地に検査を行うとともに、随意契約についてはその理由別に分類して分析し、その分析結果について調達規程等を準用して検討するなどの方法により検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 19子会社が締結している前記993件の契約のうち858件の契約については、個々の契約ごとに各子会社の独自の判断に基づき、契約の性質又は目的が競争を許さないものや競争に付することが不利と認められるものなどとして随意契約によっていた。
 そして、上記858件の随意契約のうちエアポートメンテナンスサービス株式会社等17子会社(注2) (以下「17子会社」という。)が締結している220件(契約金額計35億4928万余円)の契約の随意契約によった理由についてみると、そのすべての契約において、現場の状況等に精通していて過去に実績を有する者等に当該業務を履行させる必要があることから、当該業務を実施可能な業者は1社のみであることとなっていた。
 しかし、これら220件の契約は、旅客ターミナル地区における手荷物カート回収等を行う業務(以下「カート回収業務」という。)、電気設備等の更新工事等の業務、植栽の維持作業の業務等一般的な業務内容であり、業務に必要な作業マニュアル等を整備したり、新規参入者に対して指導、監督等を適切に行ったりすることなどにより、過去に実績を有していない業者であっても履行できる業務であり、随意契約によることなく競争に付することが可能であると認められる。

<事例>

 株式会社成田空港ビジネス(以下「ビジネス社」という。)は、貴会社から、平成20事業年度に、カート回収業務を2件受託し、この2件の業務の一部は業者に発注することとして、その業務を2つの業務地区に分割した上で地区ごとに別々の業者と随意契約を締結していた。
 カート回収業務は、旅客ターミナル地区で旅客が使用した手荷物カートを所定の場所まで搬送して回収するもので、ビジネス社は、随意契約を締結している理由として、旅客ターミナル地区内での業務であり、旅客からの問い合わせ等について臨機応変に対応することが求められるなど、現場の状況等に精通していて実績を有する者に履行させる必要があることから、契約の性質又は目的が競争を許さないものであるとしていた。
 しかし、カート回収業務については、過去に契約実績を有していなくとも、業者の履行能力の審査を十分に行い、作業マニュアル等により適切な指導、監督等を行うことにより、十分に履行できる業務であると認められた。
 また、前記17子会社のうち成田空港給油施設株式会社を除くエアポートメンテナンスサービス株式会社等16子会社のうち、エアポートメンテナンスサービス株式会社等5子会社(注3) は、本院の検査を踏まえて、20年11月から12月までの間に、原則として競争的な契約方式によることなどを内容とする契約に係る社内規程(以下「契約規程」という。)を制定している。
 しかし、残りのNAAファイアー&セキュリティー株式会社等11子会社は契約規程を制定していないため、また、成田空港給油施設株式会社は、17年10月に契約規程を制定していたものの、随意契約によることができる場合の明確な判断基準等が示されていないため、競争に付することが可能と認められる契約を随意契約によっていて、競争的な契約方式を導入していなかった。

(改善を必要とする事態)

 上記のとおり、貴会社は、自らが業務を発注する場合は調達規程等に基づき原則として競争契約により行うこととしているのに、子会社が業務を発注する場合は各社の裁量に委ねていて、17子会社は、競争に付することが可能と認められる契約を随意契約によっており、契約の競争性、公正性及び透明性が確保されておらず競争の利益が十分に享受できていない事態は、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、子会社において、契約に当たり、競争性、公正性及び透明性を確保することの重要性についての認識が十分でなかったことなどにもよるが、貴会社において、子会社が行う業務の発注において競争の利益をより享受できるよう、その管理、監督等を十分に行っていなかったことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

 貴会社は、前記の設立目的を達成するため、中期計画を策定して、成田会社グループの経営基盤の強化に向けて設備投資や経費の更なるコスト削減に取り組むとともに収益の向上を図ることとしている。
 ついては、貴会社において、子会社が行う業務の発注において競争の利益をより享受できるよう競争的な契約方式の導入を図らせるよう意見を表示する。

 エアポートメンテナンスサービス株式会社等17子会社  エアポートメンテナンスサービス株式会社、株式会社成田エアポートテクノ、株式会社NAAファシリティーズ、空港情報通信株式会社、株式会社NAAコミュニケーションズ、成田空港給油施設株式会社、NAAファイアー&セキュリティー株式会社、株式会社成田空港ビジネス、株式会社NAAリテイリング、NAA&ANAデューティーフリー株式会社、株式会社NAA&JAL—DFS、株式会社グリーンポート・エージェンシー、成田空港サービス株式会社、成田空港ロジスティックス株式会社、株式会社メディアポート成田、臨空開発整備株式会社及び成田高速鉄道アクセス株式会社
 エアポートメンテナンスサービス株式会社等5子会社  エアポートメンテナンスサービス株式会社、株式会社成田エアポートテクノ、株式会社NAAファシリティーズ、空港情報通信株式会社及び株式会社NAAコミュニケーションズ

別表 エアポートメンテナンスサービス株式会社等19子会社の概要
(平成21年3月末時点)

事業
区分
番号 子会社名 主な事業内容 資本金
(百万円
成田会社の出資比率
(%)
空港運営事業 1 エアポートメンテナンスサービス株式会社 成田空港の土木・建築・施設の保守管理、テナント内装工事 20 100
2 株式会社成田エアポートテクノ 旅客ターミナルビル設備の保守管理 120 66.67
3 株式会社NAAエレテック 昇降機・シャトルシステム・手荷物搬送・搭乗橋設備の保守管理 60 67
4 株式会社NAAファシリティーズ 空港施設の保守管理 90 100
5 空港情報通信株式会社 空港電気通信・フライト情報提供サービス、ソフトウェア開発、電話事業 150 100
6 株式会社NAAコミュニケーションズ テレビ共聴施設・警備設備保守管理、空港内統一IDカードシステムの保守管理及びIDカード発行 10 100
7 成田空港給油施設株式会社 航空機給油施設の保守管理 50 100
8 NAAファイアー&セキュリティー株式会社 成田空港の警備・消火救難 80 100
9 株式会社成田空港ビジネス NAAグループをはじめとする空港内企業への人材派遣事業、アウトソーシングの受託及び旅客ターミナルビル内の手荷物カートサービス、植栽事業 60 100
リテール事業 10 株式会社NAAリテイリング 旅客ターミナルビルにおいて「Fa—So—La」ブランドで各種免税品、食品、民芸品等ギフト商品、電化製品等を販売 90 66.67
11 NAA&ANAデューティーフリー株式会社 第2旅客ターミナルビルにおいて総合免税売店及び世界の一流ブランドブティック店を展開 90 66.67
12 株式会社NAA&JAL—DFS 第1旅客ターミナルビルにおいて総合免税売店及び世界の一流ブランドブティック店を展開 90 66.67
13 株式会社グリーンポート・エージェンシー 海外旅行損害保険代理店、宅配便サービス、外貨両替、鉄道バス乗車券販売等の各種サービス提供 37 93.33
14 成田空港サービス株式会社 旅客ターミナルビル等における医薬品、化粧品、食料品等の販売、携帯電話レンタルサービス及び飲食店の経営 80 100
15 成田空港ロジスティックス株式会社 自動販売機による清涼飲料水等の販売 30 52.50
16 株式会社メディアポート成田 旅客ターミナルビル内で放送される番組の制作、CM、壁面広告等の販売、各種イベント・装飾の企画立案 50 100
施設貸付事業 17 臨空開発整備株式会社 成田空港整備地区の自社ビル(臨空開発第一センタービル)の貸し付け、成田空港周辺の騒音用地等の管理、貸付 150 100
鉄道事業 18 芝山鉄道株式会社 芝山鉄道(東成田〜芝山千代田間)の運行 100 68.39
19 成田高速鉄道アクセス株式会社 成田新高速鉄道線(2010年開業予定)の整備 19,008 53.74