会社名 | (1) | 東日本高速道路株式会社 | |
(2) | 中日本高速道路株式会社 | ||
(3) | 西日本高速道路株式会社 | ||
((1)、(2)及び(3)いずれも平成17年9月30日以前は「日本道路公団」) | |||
科目 | 管理費用 | ||
部局等 | (1) | 本社、4支社 | |
(2) | 本社、4支社 | ||
(3) | 本社、4支社 | ||
点検データ管理システムの概要 | 詳細点検、日常点検等で確認された道路構造物の損傷状況、その補修状況等の点検結果を登録し、維持管理計画の立案等に活用するもの | ||
詳細点検及び日常点検に係る契約等の金額 | (1) | 45億7868万円(背景金額) | (平成17年度〜20年度) |
(2) | 34億9414万円(背景金額) | (平成17年度〜20年度) | |
(3) | 58億2488万円(背景金額) | (平成17年度〜20年度) | |
計 | 138億9771万円(背景金額) | (平成17年度〜20年度) |
本院は、道路構造物の点検及び点検結果の登録について、平成21年10月30日に、東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)、西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)それぞれの代表取締役社長に対して、「道路構造物の点検及び点検結果の登録について」として、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
これらの処置要求の内容は、3会社の検査結果に応じたものとなっているが、これを総括的に示すと以下のとおりである。
3会社は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)と締結した協定において、機構から借り受けた道路を常時良好な状態に保つように適正かつ効率的に維持、修繕その他の管理を行うこととされている。そして、3会社は、共通の保全点検要領(平成18年4月改訂。以下「点検要領」という。)等に基づき、橋りょう、トンネル等の道路構造物(以下「構造物」という。)の点検を実施している。
点検要領は、日本道路公団(以下「公団」という。)が、車両の大型化や交通量の増加に伴う構造物の損傷の進行、構造物の高齢化に伴う損傷の顕在化等、構造物を取り巻く情勢が大きく変化していることを踏まえ、13年4月、構造物の状況を的確に把握して、計画的な補修を行うため既存の要領等を統合し、必要な点検の種別、頻度、手法等を全面的に見直して制定したものである。
点検要領によると、3会社が行う点検の主な種別は次のとおりとなっている。
図 点検の種別
ア 詳細点検
橋りょう等の損傷メカニズムが比較的複雑な構造物を対象として、構造物の健全性を評価するとともに中長期的な状態を予測するために、原則として5年又は10年に1回、近接目視、打音等により行われるもの
イ 日常点検
構造物の異常、損傷等を早期に発見して必要かつ適切な処置、補修等の要否を判断するために行われるもの
(ア) 安全点検
構造物の現状の安全性を日常的に確認するために、主に本線内からの車上目視等により行われるもの
(イ) 変状診断点検
構造物の損傷の進行状況を日常的に把握するために行われるもの
a 経過観察
安全点検により確認された構造物の損傷の比較的短期的な進行状況を把握するために、安全点検の実施に併せるなどして行われるもの
b 簡易診断
詳細点検等により確認された構造物の損傷の比較的中長期的な進行状況を把握するために、点検計画において規定された点検サイクルを補完する必要が生じた場合等に近接目視、打音等により行われるもの
公団は、構造物の維持管理を効率的かつ継続的に実施するため、16年8月に、その点検から補修に至る情報を確実に登録することを目的とする点検データ管理システム(以下「管理システム」という。)の試行運用を始めた。そして、公団は、17年9月、管理システムに各種点検で確認された構造物の損傷状況、その補修状況等の点検結果を登録して、損傷原因の分析、維持管理計画(点検・修繕計画)の立案等に活用することを明記した点検要領を同年10月の3会社設立後から適用することとし、管理システムは、現在も3会社共通のシステムとして運用されている。
そして、管理システムの運用等に関するマニュアルによると、管理システムは、点検データとして点検種別、損傷の概要等の文字情報、損傷位置図及び損傷写真をデータベースに登録するとともに、補修データとして補修日、補修工法等の文字情報、補修情報を表示した損傷位置図及び補修状況写真を登録することにより、点検データ及び補修データを関連させた一元化管理・蓄積が可能となるものである。
我が国では、高度経済成長期に数多く建設された構造物の高齢化が急速に進んでおり、損傷が深刻化してから対策を行う事後保全から、点検に基づき損傷が軽微な段階から対策を行う予防保全に転換して、安全な道路を確保するとともに、計画的に構造物の長寿命化を推進していくことが求められている。そして、3会社が管理する高速道路についても、供用期間が40年を経過する区間もあり、この間には、前記のとおり、車両の大型化や交通量の増加に伴う構造物の損傷の進行、構造物の高齢化に伴う損傷の顕在化、さらに、構造物の損傷等に伴い一般公衆に被害を与える事例が発生するなど、構造物を取り巻く情勢は大きく変化している。
このような状況の中、3会社は、全国的なネットワークを構成する高速道路について、安全な道路を確保し第三者被害を防止する目的で、構造物の状況を的確に把握して、計画的な補修を実施するため構造物の点検を実施しており、その費用は多額なものとなっている。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、3会社において、詳細点検及び日常点検が3会社共通の点検要領等に基づき適切に実施され、点検結果が的確に3会社共通の管理システムに登録されているかなどに着眼して会計実地検査を行った。
本院は、3会社の12支社(注1) において、17年度から20年度までに、3会社が構造物の点検業務等を行うために株式会社ネクスコエンジニアリング北海道等(以下「エンジ会社」という。)との間で締結した契約等(契約等の件数322件、契約等の金額のうち詳細点検及び日常点検に係る金額計138億9771万余円(表1 参照)。公団実施分を含む。)を対象として、同支社管内の101管理事務所等が実施した点検の報告書、管理システムに登録されている点検データを確認するなどして検査した。
会社名 | 平成17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 計 | |||||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | |
東会社 | 件 44 |
千円 1,198,660 |
件 26 |
千円 947,654 |
件 9 |
千円 1,236,317 |
件 6 |
千円 1,196,048 |
件 85 |
千円 4,578,680 |
中会社 | 20 | 751,490 | 21 | 758,350 | 20 | 786,545 | 28 | 1,197,761 | 89 | 3,494,148 |
西会社 | 40 | 1,294,217 | 64 | 1,342,782 | 28 | 1,602,959 | 16 | 1,584,927 | 148 | 5,824,886 |
計 | 104 | 3,244,368 | 111 | 3,048,786 | 57 | 3,625,822 | 50 | 3,978,737 | 322 | 13,897,714 |
管理システムの試行運用が開始された翌年度の17年度から20年度までの間に実施された詳細点検及び日常点検の点検結果の登録状況等について検査したところ、次のような状況となっていた。
東会社及び西会社の8支社(注2) 管内の77管理事務所等が実施した詳細点検及び安全点検(安全点検の一環として実施された経過観察を含む。以下同じ。)の点検データの管理システムへの登録状況についてみると、文字情報は登録されているものの、損傷位置図及び損傷写真は、表2のとおり、それぞれ多数の管理事務所等において登録されておらず、従来、点検業務を実施しているエンジ会社が開発して、保有している独自のシステムにすべての点検データが登録されていた。その結果、文字情報、損傷位置図及び損傷写真が一元化されたデータとして管理・蓄積されていない状況になっていた。
会社名 | 点検の種別 | 態 様 | 平成 17年度 |
18年度 | 19年度 | 20年度 |
東会社 | 詳細点検 | 損傷位置図が登録されていないもの | 27 | 0 | 0 | 0 |
損傷写真が登録されていないもの | 20 | 0 | 0 | 0 | ||
安全点検 | 損傷位置図が登録されていないもの | 16 | 0 | 0 | 0 | |
損傷写真が登録されていないもの | 9 | 0 | 0 | 0 | ||
西会社 | 詳細点検 | 損傷位置図が登録されていないもの | 38 | 36 | 35 | 38 |
損傷写真が登録されていないもの | 16 | 16 | 16 | 16 | ||
安全点検 | 損傷位置図が登録されていないもの | 23 | 23 | 23 | 27 | |
損傷写真が登録されていないもの | 14 | 12 | 12 | 16 |
3会社の12支社(注1) 管内の101管理事務所等が実施した詳細点検及び安全点検の補修データについてみると、文字情報、補修情報を表示した損傷位置図及び補修状況写真は、表3のとおり、それぞれ多数の管理事務所等において管理システムに登録されておらず、一元化されたデータとして管理・蓄積されていない状況になっていた。
表3 文字情報、補修情報を表示した損傷位置図及び補修状況写真が登録されていない管理事務所等数
(平成21年3月31日現在)
会社名 | 点検の種別 | 態 様 | 平成 17年度 |
18年度 | 19年度 | 20年度 |
東会社 | 詳細点検 | 文字情報が登録されていないもの | 20 | 0 | 1 | 2 |
補修情報を表示した損傷位置図が登録されていないもの | 27 | 20 | 21 | 20 | ||
補修状況写真が登録されていないもの | 32 | 32 | 36 | 29 | ||
安全点検 | 文字情報が登録されていないもの | 6 | 0 | 0 | 0 | |
補修情報を表示した損傷位置図が登録されていないもの | 29 | 21 | 21 | 21 | ||
補修状況写真が登録されていないもの | 38 | 37 | 37 | 37 | ||
中会社 | 詳細点検 | 補修状況写真が登録されていないもの | 22 | 22 | 23 | 23 |
安全点検 | 補修状況写真が登録されていないもの | 21 | 21 | 21 | 21 | |
西会社 | 詳細点検 | 文字情報が登録されていないもの | 11 | 13 | 11 | 0 |
補修情報を表示した損傷位置図が登録されていないもの | 38 | 36 | 35 | 38 | ||
補修状況写真が登録されていないもの | 38 | 36 | 35 | 38 | ||
安全点検 | 文字情報が登録されていないもの | 11 | 11 | 11 | 0 | |
補修情報を表示した損傷位置図が登録されていないもの | 38 | 38 | 38 | 27 | ||
補修状況写真が登録されていないもの | 27 | 27 | 27 | 27 |
点検要領によると、簡易診断は、管理区間における構造物の量的質的な状態を総合的に捉え、中長期的な視点を踏まえた維持管理計画(点検・修繕計画)を策定することを目的として行う重要な点検とされている。
しかし、3会社の12支社(注1)
管内の101管理事務所等において、簡易診断の点検データは管理システムに登録されておらず、また、構造物の損傷の進行状況を確認しているものが一部見受けられたものの、支社等からの指示を受けてエンジ会社が簡易診断を実施している状況はほとんど確認できないものとなっていた。
構造物の計画的、効率的な管理を実施するためには、予防保全の見地からその健全度評価や劣化予測をすることが必要となり、点検結果の損傷から補修までの一貫した履歴をデータベースとして登録、蓄積及び更新することが必要とされている。
したがって、(1)、(2)及び(3)のような事態が常態化すると、構造物の健全度評価や劣化予測の実施等に支障を来すことになる。
3会社の本社、支社等において、構造物の点検に多額の費用を投じているのに、上記のように、詳細点検、安全点検及び簡易診断の点検結果が、点検要領及びマニュアルに基づき適切に管理システムに登録されていないなどしていて、損傷原因の分析、維持管理計画(点検・修繕計画)の立案等に十分活用できるものとなっていない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 本社において、
(ア) 管理システムに登録すべき事項等を支社及び管理事務所等に対して明確に指示していなかったこと
(イ) 点検要領において、簡易診断を実施する構造物の損傷状況、点検手法等を明確にしていなかったこと
イ 支社及び管理事務所等において、
(ア) 管理システムへの点検結果の登録は構造物の中長期的な視点を踏まえた維持管理計画(点検・修繕計画)を策定するための重要なものであることについての認識が十分でなかったこと
(イ) 管理システムへの点検結果の登録を点検要領及びマニュアルに基づき実施することについての認識が十分でなかったこと
ウ 支社において、エンジ会社との契約等の関係書類で管理システムに登録すべき事項等を具体的に記載していなかったこと
3会社は、前記のとおり、機構から借り受けた道路を常時良好な状態に保つように適正かつ効率的に維持、修繕その他の管理を行うこととされており、全国的なネットワークを構成する高速道路について一定の管理水準を確保するため、今後も引き続き多額の費用を投じて構造物の点検を実施していくことが見込まれる。
ついては、3会社において、構造物が計画的かつ効率的に管理されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 支社及び管理事務所等に対して、
(ア) 管理システムへの点検結果の登録は、中長期的な視点を踏まえた維持管理計画(点検・修繕計画)を策定するために重要であること、点検要領及びマニュアルに基づき確実に実施されなければならないことを周知すること
(イ) 管理システムに登録すべき事項等を明確に指示すること
イ 支社に対して、契約等の関係書類に管理システムに登録すべき事項等を具体的に記載するよう指示すること
ウ 点検要領等において、簡易診断を実施する構造物の損傷状況、点検手法等を明確にすること
12支社 北海道、東北、関東、新潟、東京、名古屋、八王子、金沢、関西、中国、四国、九州各支社
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8支社 北海道、東北、関東、新潟、関西、中国、四国、九州各支社
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