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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第16 独立行政法人日本貿易保険|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

貿易保険情報システムの国の利用等に関する契約において、国の利用に供することに伴って発生する費用の額に対応する対価を収受するよう改善させたもの


貿易保険情報システムの国の利用等に関する契約において、国の利用に供することに伴って発生する費用の額に対応する対価を収受するよう改善させたもの

科目 経常収益 その他 その他の経常収益
部局等 独立行政法人日本貿易保険本店
契約名 貿易保険情報システムの利用及び保守運用支援に関する契約
契約の概要 第IV期貿易保険情報システムのうち、再保険特別会計システム等を国の利用に供するとともに、利用料等について、国の負担額を定めるもの
契約に基づき収受した金額 1億7582万余円 (平成19、20両事業年度)
上記の金額と発生した費用の額との差額 1億0415万円 (平成19、20両事業年度)

1 貿易保険事業等の概要

(1) 貿易保険事業の概要

 貿易保険は、貿易上生ずる危険のうち、通常の保険では補償されない戦争・内乱、収用、外貨送金停止等の非常危険及び取引相手方の破産、債務不履行等の信用危険をてん補し、被保険者である海外取引企業等に対して信用を供与して我が国の貿易の健全な発展に資するなどの役割を担っている。
 この業務は、従来国が特別会計で実施していた貿易保険の引受け等の基本的業務を効率的かつ効果的に行うため、平成13年4月に独立行政法人日本貿易保険(Nippon Exportand Investment Insurance。以下「NEXI」という。)が引き継いだものである。これに伴い、国は、貿易保険法(昭和25年法律第67号)に基づき、NEXIとの間で貿易再保険契約を締結してその再保険を引き受けることとなり、旧貿易保険特別会計は13年度から貿易再保険特別会計に改編されている。

(2) 貿易保険情報システムの概要

 NEXIは、13年4月に本業務を引き継いだ際に、それまで国が使用していた本業務を電算処理するための第III期貿易保険情報システムも引き継いでいたが、業務運営の一層の効率化・迅速化を実現するため、18年12月に、同システムに続く第IV期貿易保険情報システム(以下「IV期システム」という。)を開発経費46億1872万余円で完成させ、翌19年1月から運用を開始している。IV期システムは、専ら国の再保険業務を処理するための再保険特別会計システム(開発経費2億8000万余円、以下「再保険システム」という。)を含む各種のサブシステムから構成されており、NEXIは、IV期システムを一体的に管理するため、保守、運用支援等の業務を、19、20両事業年度に計37億4487万余円で業者に委託するなどして実施している。

(3) IV期システムの利用及び保守運用支援に関する契約

 NEXIは、19事業年度から国と貿易情報システムの利用及び保守運用支援に関する契約(以下「利用契約」という。)を精算条項を付さない確定契約として締結して、再保険システム等を国の利用に供することに伴い発生する費用の額に対応する対価を収受することとしている。
 そして、NEXIは、利用契約に基づき、IV期システムのソフトウェア、機器等の開発経費を基に算定する対価(以下「利用料」という。)及びIV期システムの保守費、運用支援費等を基に算定する対価(以下「保守料」という。)として、19事業年度に9520万余円、20事業年度に8062万余円、計1億7582万余円を国から収受している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、19、20両事業年度の利用契約について、合規性、経済性等の観点から、IV期システムを国の利用に供することに伴い発生する費用の額に対応する対価を適切に収受しているかなどに着眼して、NEXIと国との利用契約に関する書類等により、NEXI本店及び経済産業本省において会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 再保険システムに係る保守料について

 前記のとおり、再保険システムは専ら国の利用に供するものである。そして、NEXIは、再保険システムに係る利用料については、開発経費を予定利用年数(10年)で除して得た額2800万余円を各事業年度に国から収受しているが、保守料については、19事業年度に契約締結時に見積もった1200万余円を収受しているのみで、20事業年度は同事業年度に発生する費用が不明であるなどとして全く収受していなかった。
 しかし、NEXIは、再保険システムに係る保守、運用支援業務を委託して、19事業年度に9261万円、20事業年度に9437万余円を委託費として支払っており、これに比べて、各事業年度に保守料として国から収受した金額は、それぞれ8060万余円、9437万余円過小となっていた。

(2) 再保険システム以外のサブシステムに係る利用料及び保守料について

 国は、再保険システム以外の各種のサブシステムについても再保険業務に関連して利用することがある。NEXIは、これらのサブシステムに係る利用料及び保守料について、前々事業年度のサブシステムに係る国の利用実績に基づいて、19事業年度5520万余円、20事業年度5262万余円収受していた。しかし、国の利用実績が年々減少している状況にあることから、サブシステムを国の利用に供することに伴い発生する費用も19事業年度1519万余円、20事業年度681万余円と減少していて、これに比べて、各事業年度に利用料及び保守料として国から収受した金額は、それぞれ4000万余円、4580万余円過大となっていた。

(3) システムの開発経費や保守費、運用支援費等以外の経費について

 NEXIは、IV期システムの運用に伴い負担している委託業者の入居スペース等に係る賃借料、電気代等について、これに係る国の利用相当額、19事業年度756万余円、20事業年度741万余円を国から収受していなかった。
 上記(1)から(3)までの結果、NEXIにおいて実際に発生した費用の額を基に国の利用に係る19、20両事業年度の利用料等を修正計算すると、19事業年度1億4337万余円、20事業年度1億3660万余円、計2億7997万余円となることから、NEXIが19、20両事業年度に国から収受した計1億7582万余円は、これに比べて計1億0415万余円過小となっていた。
 このように、NEXIが、国との利用契約において、実際に発生した費用の額に基づいて利用料等を精算することなく、費用の一部を収受していない事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、NEXIにおいて、国に対し、IV期システムの運用に伴い発生する費用の額に基づいて適切な費用負担を求めるという認識が十分でなかったことなどによると認められる。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NEXIは、国と協議の上、IV期システムを国の利用に供することに伴って発生する費用の額に対応する対価を収受することができるよう、21年9月に利用契約を変更するとともに、22事業年度以降の利用契約においても、発生する費用の実績額に基づいて契約金額の精算を行うこととするなどの処置を講じた。