部局等 | 独立行政法人国立印刷局本局 | ||
設置根拠法 | 独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号) | ||
久我山運動場の概要 | 印刷局特別会計から承継した役職員等のための野球場、テニスコート等 | ||
久我山運動場に係る平成21年3月31日現在の帳簿価額 | 建物 | 2525万円 | |
用地 | 37億4660万円 | ||
計 | 37億7186万円 |
独立行政法人国立印刷局(以下「印刷局」という。)は、独立行政法人国立印刷局法(平成14年法律第41号)に基づき、平成15年4月に、日本銀行券の製造、官報の編集・印刷等の事業を行う独立行政法人として設置された。その際に、印刷局は、印刷局特別会計から本局、工場等の施設・設備等と共に保養所、宿泊所(以下、両者を合わせて「保養所」という。)、運動施設等を事業用資産として承継しており、原則として、これら保養所等を役員及び職員、その家族等(以下「役職員等」という。)のための福利厚生施設として管理運営している。
印刷局が本局、工場等の敷地の外に独立して保有する福利厚生施設は、保養所4か所及び久我山運動場の計5か所であり、そのうち、久我山運動場は、21年3月31日現在で、建物の延床面積558.1m2
及び敷地面積28,820.0m2
(建物の帳簿価額2525万余円、用地の帳簿価額37億4660万余円、帳簿価額計37億7186万余円)であり、野球場、テニスコート等を備えた施設として役職員等の用に供されている。福利厚生施設は、役職員等のための施設であるが、役職員等が利用するのに支障を来さないと認められる場合に限り、役職員等以外の者から利用料金を徴して利用させることができるとされている。
政府は、19年12月24日に「独立行政法人整理合理化計画」(以下「合理化計画」という。)を閣議決定している。合理化計画は、独立行政法人の保有資産の見直しについて、独立行政法人において保有する合理的理由が認められない土地・建物等の実物資産の売却、国庫返納等を着実に推進して、適切な形で財政貢献を行うこと、売却等対象資産以外の実物資産についても、その保有の必要性について不断に見直しを実施することとしている。そして、合理化計画によると、印刷局の保有資産の見直しについて、保養所は、「次期中期目標期間(本院注:平成20年4月から25年3月までの5年間)中に段階的に廃止する」、久我山運動場は、「杉並区民も利用可能としていることを踏まえつつ、在り方を検討する」とされている。
印刷局は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第29条の規定に基づき財務大臣が合理化計画を踏まえて定めた第2期中期目標を達成するための計画(計画期間は20年4月から25年3月までの5年間。以下「第2期中期計画」という。)を作成して、20年3月に、財務大臣の認可を受けている。印刷局は、第2期中期計画の中で、保有資産の有効活用を図るとともに、遊休資産の処分による国の財政への貢献を図るため資産の見直しなどを実施することとしており、保養所及び久我山運動場について、合理化計画と同じ趣旨の定めをしている。
そして、印刷局は20年度末に保養所4か所を廃止した。
なお、合理化計画が想定している上記のような独立行政法人の保有する資産を政府等による出資に係る資産も含めて国庫返納等を行う制度については、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案が20年4月25日に国会に提出されたが、21年7月に廃案となったため、同年10月現在、資産を国庫に返納する仕組みは法的に整備されていないままとなっている。
本院は、経済性、有効性等の観点から、印刷局が事業用資産として承継した久我山運動場について、資産として保有する合理的理由があるか、また、有効に活用されているかなどに着眼して、印刷局本局において、久我山運動場日誌等の関係書類の提出を受けるなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような状況となっていた。
福利厚生施設である久我山運動場について、印刷局は、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる財産(以下「不要資産」という。)と位置付けた上で、杉並区民の利用も認めていることから、杉並区と久我山運動場の処分に向けて調整中であるとしていた。しかし、21年7月の会計実地検査時点において久我山運動場の処分に関する明確な計画や方針は作成されておらず、合理化計画策定以後、久我山運動場の在り方の検討に特段の進展がない状況となっていた。
久我山運動場の16年度から20年度までの各年度の利用状況について、役職員等以外の者も含めた久我山運動場の利用日数の年間の日数(定休日を除く年間307日又は308日)に対する割合をみると、野球場が35.0%から41.8%、テニスコートが16年度は61.3%と高率になっているものの17年度以降は24.4%から38.9%となっていた。
そして、久我山運動場の維持管理費用についてみると、印刷局が16年度から20年度までに支払った業務委託費、光熱水費、樹木せん定費等は、計7210万余円となっていた。一方、同期間に徴した利用料金は、計653万余円であり、上記5年間の維持管理費用から利用料金を差し引いた久我山運動場に対する印刷局の負担額は、計6557万余円と多額となっていた。
このように、国の特別会計から承継した久我山運動場について、多額の維持管理費用が今後も継続して発生すると見込まれるのに、杉並区への譲渡を含む適切な処分に向けた調整が進展しておらず、在り方の検討が十分に進んでいない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、印刷局において、久我山運動場の処分について杉並区との調整を積極的に進めてこなかったこと、国庫返納に備えるための処分計画を作成するなどの久我山運動場についての在り方の検討が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、印刷局は、合理化計画等の趣旨を早急かつ着実に実現するために、21年9月に、不要資産とされている久我山運動場について、杉並区への適正な対価による譲渡を含む適切な処分に向けた調整を積極的に進めること及び同区との調整が難航して調整がつかない場合には、国庫返納のための法的整備が整い次第、速やかに国庫へ返納することとする処分計画を作成する処置を講じた。