科目
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固定資産
有形固定資産
建物、構築物、機械・装置
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部局等
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独立行政法人日本原子力研究開発機構本部、3研究開発センター等
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減損処理の概要
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固定資産のサービス提供能力が当該資産の取得時の想定に比べ著しく減少しその回復が見込めないなどの場合に、当該資産の帳簿価額を適正な金額まで減額するもの
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減損処理した施設
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東海地区ウラン濃縮施設、むつ地区燃料・廃棄物取扱棟及び東濃鉱山(平成18年度)、冶金特別研究棟(平成19年度)
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上記に対する減損額の合計
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2,710,754,918円
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(平成18、19両年度)
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財務諸表において過大又は過小となっている減損額
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過大 | 840,549,234円
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(平成18、19両年度)
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過小 | 51,859,838円
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(平成18年度)
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独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という。)が保有する固定資産については、平成18年度から「固定資産の減損に係る独立行政法人会計基準」及び「固定資産の減損に係る独立行政法人会計基準注解」(17年6月29日設定。19年11月19日改訂。以下「減損会計基準」という。)等が適用されることとなっている。減損会計基準によれば、固定資産の減損とは、固定資産に現在期待されるサービス提供能力が当該資産の取得時に想定されたサービス提供能力に比べ著しく減少し将来にわたりその回復が見込めないなどの状態をいうとされている。
そして、減損会計基準においては、固定資産が使用されている業務の実績が、中期計画の想定に照らし、著しく低下していることなど、固定資産に減損が生じている可能性を示す事象(以下「減損の兆候」という。)の有無を把握した上で、減損を認識した場合は、当該固定資産の帳簿価額を正味売却価額(注1)
と使用価値相当額(注2)
のいずれか高い額まで減額する会計処理(以下「減損処理」という。)を行わなければならないこととされている。
機構は、「独立行政法人日本原子力研究開発機構の中期目標を達成するための計画(平成17年10月1日〜平成22年3月31日)」(以下「機構の中期計画」という。)に基づき、使命を終えたなどとされた施設(以下「廃止措置施設」という。)について効率的な廃止措置を計画的に進めるなどして、不要な施設を効率的かつ計画的に廃止することとしている。そして、減損会計基準に基づく減損処理の実施方法について、19年3月に、「固定資産の減損会計について(18(達)第55号)」(以下「通達」という。)等を定めて、廃止措置施設等について減損会計基準等に沿った形で減損処理を行うこととしている。ただし、取得価額が1000万円未満であること又は取得価額が1000万円以上5000万円未満で耐用年数が10年未満であることのいずれかの要件に該当する構築物、機械装置等は、重要性の乏しい資産として減損会計の対象としないこととなっている。
本院は、正確性、合規性等の観点から、減損会計の対象とすべき固定資産を正確に把握しているか、減損の兆候を適切に判定して減損を認識しているかなどに着眼して、機構本部等10か所(注3)
において減損調査計画書等の関係書類を確認するとともに、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査の結果、東海、青森両研究開発センター及び東濃地科学センターにおいて、次のとおり、減損会計の対象とすべき固定資産の把握を誤ったり、減損の兆候の有無の判定を誤ったりして、減損額840,549,234円を過大に、減損額51,859,838円を過小に計上していたため、18年度及び19年度の財務諸表の減損額及び固定資産の額が適正に表示されておらず、不当と認められる。
研究開発センター等 | 対象施設名 | 年度 | 左の施設に係る減損額 | 適正な減損額 | 過大又は過小となっている減損額 | 摘要 |
(円) | (円) | (円) | ||||
東海研究開発センター | 冶金特別研究棟 | 平成19 | 13,186,930 | 9,623,191 | 3,563,739 (過大) |
減損対象資産の把握誤り |
東海地区ウラン濃縮施設 | 18 | 493,828,175 | 495,611,024 | 1,782,849 (過小) |
減損の兆候の判定誤り | |
青森研究開発センター | むつ地区燃料・廃棄物取扱棟 | 18 | 1,961,778,338 | 1,124,792,843 | 836,985,495
(過大)
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減損の兆候の判定誤り |
東濃地科学センター | 東濃鉱山 | 18 | 241,961,475 | 292,038,464 | 50,076,989
(過小)
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減損対象資産の把握誤り |
計 | 過大
過小
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/ | / | 840,549,234
51,859,838
|
/ |
上記の減損会計の対象とすべき固定資産の把握を誤っていたもの及び減損の兆候の有無の判定を誤っていたものについて、それぞれ事例を示すと次のとおりである。
<事例1> 減損会計の対象とすべき固定資産の把握を誤っていたもの
機構は、東濃地科学センターにおいて、廃止措置施設である東濃鉱山を構成する固定資産計48件について、平成18年度決算において減損額241,961,475円を計上していた。
しかし、東濃鉱山を構成する固定資産の中には上記48件の固定資産のほか、東濃鉱山受電設備(18年度末帳簿価額28,382,705円。耐用年数12年)及び東濃鉱山捨石堆積場かん止堤(18年度末帳簿価額21,694,284円。耐用年数37年)があり、これら2件の固定資産についても、取得価額が1000万円以上5000万円未満で耐用年数が10年以上であることから、通達に定める重要性の乏しい資産には該当せず減損会計の対象とすべき固定資産として把握する必要があったのに、誤ってこれを行っておらず、18年度決算において減損処理を行っていなかった。上記2件の固定資産について適正な減損額を計算すると、50,076,989円となる。
<事例2> 減損の兆候の有無の判定を誤っていたもの
機構は、青森研究開発センターにおいて、むつ科学技術館を含む「むつ地区燃料・廃棄物取扱棟」が機構の中期計画において廃止措置施設として位置付けられていることなどから、燃料・廃棄物取扱棟及びむつ科学技術館等を構成する建物等計34件について、帳簿価額を0円とする減損処理を行い、平成18年度決算において減損額1,961,778,338円を計上していた。
しかし、上記34件の固定資産のうち、むつ科学技術館を構成する建物等計20件(18年度末帳簿価額計836,985,495円)については、原子力船むつから取り出した原子炉室等を安全に保管するなどの目的のために取得した固定資産であり、会計実地検査時(21年5月)においてもその使用目的に沿って使用されているのに、誤って減損の兆候があると判定し、18年度決算において減損処理を行って減損額836,985,495円を計上していた。
このような事態が生じていたのは、機構において、減損処理を行う際の調査確認が十分でなかったことなどによると認められる。
(注1) | 正味売却価額 固定資産の時価から処分費用見込額を控除して算定される額
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(注2) | 使用価値相当額 固定資産の全部又は一部につき使用が想定されていない部分以外の部分が有するサービス提供能力と同じサービス提供能力を有する資産を新たに取得した場合において見込まれる取得価額から、減価償却累計額(当該資産を減損が認識された資産の使用期間と同じ期間使用した場合に計上される額をいう。)を控除した価額
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(注3) | 本部等10か所 本部、敦賀本部、東海、大洗、高速増殖炉、原子炉廃止措置、青森各研究開発センター、那珂核融合研究所、東濃地科学センター及び人形峠環境技術センター
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