科目
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(貸付金)賃貸住宅貸付
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部局等
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独立行政法人住宅金融支援機構本店及び11支店
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貸付けの根拠
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住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号)
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賃貸住宅貸付けの概要
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賃貸住宅を建設して事業を行う者に、住宅の建設等に必要な資金の貸付けを行うもの
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賃貸住宅貸付件数
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7,584件
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(平成10年度〜12年度)
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上記に係る貸付金残高
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1兆1463億0760万余円
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(平成20年度末)
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賃貸条件の制限違反があった賃貸住宅貸付件数
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71件
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(平成10年度〜12年度)
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上記に係る貸付金残高
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90億2017万円
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(平成20年度末)
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(平成21年10月16日付け独立行政法人住宅金融支援機構理事長あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
貴機構は、平成19年4月、独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号。以下「機構法」という。)に基づき、住宅金融公庫(以下「公庫」という。)の権利及び義務を承継して設立された。公庫は、同年3月まで旧住宅金融公庫法(昭和25年法律第156号。以下「公庫法」という。)に基づき、国民が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設等に必要な資金で一般の金融機関で対応が困難なものを融通することなどを目的として、住宅を建設して賃貸する事業を行う者に対して資金の貸付け(以下「賃貸住宅貸付け」という。)を行っていた。
また、旧住宅金融公庫法施行規則(昭和29年大蔵・建設省令第1号。以下「施行規則」という。)によると、賃貸住宅貸付けにより建設された賃貸住宅(以下「賃貸住宅」という。)の賃借人の資格は、現に住宅に困窮している者で家賃の支払ができる者等とされていた。そして、貴機構が公庫から承継した賃貸住宅貸付けの残高は、21年3月末現在約3兆8655億円(約2万6千件)となっている。
そして、上記の賃貸住宅貸付けの原資についてみると、16年度までは国の財政融資資金からの借入れ、17、18両年度は、公庫が自ら債券を発行して調達した資金となっていた。また、16年度までの賃貸住宅貸付けについて、借入金利と貸付金利との逆ざやによる収支差等を補てんするため、貴機構(公庫時を含む。)は、毎年、国から補給金を受け入れている。
上記のように国の財政援助を得て実施された賃貸住宅貸付けについて、賃借人の保護を図ることなどの目的から、施行規則により借受者は、賃貸住宅の賃貸に当たって、家賃及び家賃の3か月分(貸付けの種類により6か月分又は9か月分)を超えない額の敷金を除き、賃借人から礼金等の金品を受領したり、その他賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としたりしてはならないこととされている。
そして、公庫は、賃貸住宅貸付けの条件の一つとなっている上記の賃貸条件の制限を遵守させるため、賃貸住宅貸付けの申込みを受け付ける際などに賃貸条件の制限について借受者に説明を行ったり、パンフレットを配布したりしている。さらに、公庫と借受者が締結する金銭消費貸借抵当権設定契約において、賃貸の条件について借受者は公庫法及び施行規則等に従うことを明記するとともに、同契約の締結に先立って賃貸借契約書のひな形により賃貸条件の制限違反の有無を確認するなどしていた。
そして、機構法の施行に伴い公庫法は廃止されたが、機構法附則第5条により、公庫法に基づいて行われた賃貸住宅貸付けに係る賃貸条件の制限は従前どおりとされている。
貴機構(公庫時を含む。)は、賃貸住宅について、貸付条件違反の事実を把握し、速やかに是正させることを目的として、内部規程に基づき実態調査を行っている。そして、具体的な調査の対象、件数、方法等については、毎年、本店から各支店に対して通達を発して指示することにしており、この指示に基づき、各支店が実態調査を実施し、その調査結果を本店に報告することとなっている。
本院は、合規性、有効性等の観点から、賃貸住宅貸付けについて賃貸条件の制限が遵守され、賃借人の保護が図られているかなどに着眼して、貸付けから10年前後が経過している10年度から12年度までの間に実施された賃貸住宅貸付け7,584件のうち、賃貸条件が入居募集広告等に掲載されていた1,550件について賃貸条件の調査を行ったところ、賃貸条件の制限に違反している可能性のあるものが161件見受けられた。このうち23件については、7支店(注1) において実地に検査を行うとともに、借受者に対して賃借人との賃貸借契約書の提示を依頼するなどして実地に調査した。さらに、この23件を除いた11支店(注2) の138件については、貴機構に調査を求め、その調査結果を確認するなどして検査を行った。また、本店において、賃貸住宅の実態調査の実施状況を実地に検査した。
(注1) | 7支店 北海道、東北、東海、近畿、北陸、四国、九州各支店
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(注2) | 11支店 北海道、東北、首都圏、北関東、東海、近畿、北陸、四国、中国、九州、南 九州各支店
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検査したところ、次のような事態が見受けられた。
上記161件のうち11支店の71件(20年度末貸付金残高90億2017万余円)において、借受者が賃借人から礼金を受領しているなど賃貸条件の制限に違反している事態が見受けられた。
そして、この71件(総戸数1,282戸)の違反内容についてみると、次表のとおり、礼金を受領していたものが43件329戸、敷金を過大に受領していたものが17件84戸、敷引き(注3)
を設定していたものが21件158戸、一定期間内に賃貸借契約を解約した場合には違約金を支払うことなど賃借人の不当な負担となることを賃貸の条件としていたものが59件525戸、合計726戸となっていた。
賃貸条件の制限に違反している事態 | 件数 | 違反戸数 | 礼金等の合計額 |
(件) | (戸) | (円) | |
礼金の受領 | 43 | 329 | 43,332,600 |
敷金の過大受領 | 17 | 84 | 8,322,500 |
敷引きの設定 | 21 | 158 | 29,574,270 |
その他賃借人の不当な負担 | 59 | 525 | — |
合計 | 71 | 726 | / |
(総戸数1,282戸) |
前記のとおり、貴機構(公庫時を含む。)は、本店の指示に基づき各支店において賃貸住宅の実態調査を行うこととしており、その際、16年度までは、調査対象の相当数について賃貸借契約書によって賃貸条件の制限違反の有無の確認を行っていた。そして、賃貸条件の制限に違反している事態が判明した場合には、礼金等を返還させるなどの処置を講じていた。
しかし、貴機構(公庫時を含む。)は、これまでの実態調査で賃貸条件の制限に違反している事態が依然として見受けられるにもかかわらず、業務運営の効率化が求められる独立行政法人化を控え、17年度以降、本店から各支店に発した実態調査に関する通達において賃貸条件の制限違反の有無の確認を行うよう明確な指示をしていなかった。このため、近年の実態調査においては、外観からの用途変更の有無の確認にとどめ、賃貸借契約書によって賃貸条件の制限違反の有無を確認することは、ほとんど行っていなかった。
上記のように、借受者が礼金等を受領するなど施行規則で規定された賃貸条件の制限を遵守していない事態や、貴機構において借受者に賃貸条件の制限を遵守させるための措置を講じていない事態は適切とは認められず、早急に是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、借受者や借受者から委託を受けて入居募集業務等を行っている不動産仲介業者等(以下「不動産業者」という。)において、施行規則に規定する賃貸条件の制限に関する認識が欠如していることなどにもよるが、貴機構(公庫時を含む。)において、次のことなどによると認められる。
ア 借受者及び不動産業者に対して、賃貸条件の制限について十分に周知徹底していなかったこと
イ 賃借人に対して、賃貸条件の制限について十分に広報していなかったこと
ウ 賃貸住宅の実態調査に当たり、各支店に対して賃貸条件の制限違反の有無の確認を行うよう本店が明確な指示をしていなかったこと
賃貸住宅貸付けは、国民が健康で文化的な生活を営むに足る住宅の建設等に必要な資金を融通するなどの目的を達成するため、国の財政融資資金からの借入れなど国の財政援助等により行われたものである。そして、これにより建設された賃貸住宅については、賃借人の保護を図るなどの目的で賃貸条件の制限が設けられており、今後も貸付条件の適正な履行を確保するための管理が重要となっている。
ついては、貴機構において、賃貸条件の制限に違反している前記の71件について、借受者に対して賃借人に礼金等を返還させたり、賃貸借契約書の内容を賃貸条件の制限に適合するよう変更させたりするなどの処置を講ずるとともに、他のすべての賃貸住宅貸付けについて、賃貸条件の制限違反の有無を調査して、違反しているものがあれば速やかに同様の処置を講ずるよう是正の処置を要求する。
また、賃貸条件の制限が遵守されるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 借受者に対して、賃貸条件の制限について周知徹底するとともに、不動産業者に対して、業界団体を通じて賃貸条件の制限の周知を図ること
イ 賃借人に対して、公庫が融資した賃貸住宅は、賃貸条件の制限により礼金等を支払う必要のない物件であることを、貴機構のホームページなどを通じて周知すること
ウ 賃貸住宅の実態調査について、毎年本店から各支店に対して発する通達に、賃貸条件の制限違反の有無の確認を一定件数以上計画的に行うことなどを明記し、各支店において、これを毎年確実に実施すること