科目
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一般勘定 (款)事業支出 (項)国内放送費等
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部局等
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日本放送協会本部
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契約の概要
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国内放送等の業務を遂行するためコンピューター製品及びサービスの調達を行うもの
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検査対象とした契約件数及び契約金額
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1,868件
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2917億1027万余円
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(平成20年度)
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適切な契約事務を実施する要があると認められた契約件数及び契約金額
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57件
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88億4825万円
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(平成20年度)
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日本放送協会(以下「協会」という。)は、放送法(昭和25年法律第132号)により、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行うことなどを目的として設立された法人で、その運営財源は、主として受信契約者が負担する受信料で賄われている。
国、地方公共団体等(以下「国等」という。)の機関における調達については、政府調達に関する協定(平成7年条約第23号。以下「協定」という。)により、内外無差別原則の確立と手続の透明性の確保を目的として、一定金額以上のものについては、原則として一般競争入札によるとともに、官報による公告・公示等の手続を行うこととされている。そして、協定を受けて「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号)等が定められており、協定の国内における実施を確保している。
上記のとおり、協定の適用対象となる機関は、国等となっているが、日本国政府においては、内外無差別原則の確立等をより一層推進するため、内閣に設置されたアクション・プログラム実行推進委員会において協定を上回る自主的措置を策定していて、特定分野の調達については、対象となる機関を国等以外に広げるなどしている。
そして、平成4年1月20日の第17回アクション・プログラム実行推進委員会において、上記特定分野の調達のうち、公共部門におけるコンピューター製品及びコンピューターサービス(注1)
の調達(以下「特定調達」という。)について、無差別待遇、透明性及び公正でかつ開かれた競争という原則に立脚した取引機会を拡大するために、「日本の公共部門のコンピューター製品及びサービスの調達に関する措置」(以下「アクション・プログラム」という。)が決定されている。アクション・プログラムにおいては、公正かつ平等な競争機会が与えられるよう、一般競争入札による手続が原則とされ、随意契約は例外的な場合に限り用いられることとされている。
そして、協定では対象となっていない協会も、アクション・プログラムにおいては、その他の準政府機関として対象とされたことから、協会においても10万SDR(注2)
(以下「基準額」という。)以上の特定調達については、入札によるとともに、官報による公告・公示等の手続を行うこととなった。
協会は上記のとおりアクション・プログラムの対象とされたことなどから、「コンピューター調達手続き」(平成4年3月31日制定。以下「特定調達規程」という。)等の規程を定め、基準額以上の特定調達に該当する契約については原則として一般競争入札によるとともに、官報による入札の公告を行い、落札者を決定したときは、落札者、落札金額等を官報に公示しなければならないこととし、既存の供給品や設備との互換性が損なわれるなどの場合にのみ、例外的に随意契約によることができることとした。ただし、その場合でも、随意契約の妥当性に関し潜在的供給者による苦情の申立ての機会を確保などして公正かつ開かれた競争を確保するため、事前に調達の内容、契約予定日、随意契約によることの理由、予定している契約相手方を官報に公示したり、契約の相手方を決定したときは契約相手方、契約金額等を官報に公示したりしなければならないこととされている。
そして、協会は、毎年度末の時期に、各部局に対して、新年度における基準額以上の特定調達実施品目の有無について事前に報告させるなどして、特定調達の対象案件であるとの報告を受けた契約案件について特定調達規程等に定められた官報への入札公告等の契約事務を行っている。
(注1) | コンピューターサービス コンピューターの運用及びメンテナンス、コンピューターシステム開発、コンピューターソフトウェアの開発及びメンテナンス、その他の関連役務
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(注2) | SDR SDRはIMF(国際通貨基金)の特別引出権(Special Drawing Rights)であり、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの加重平均方式により決定されている。邦貨換算額は2年ごとに見直されており、10万SDRの邦貨換算額は平成20、21両年度が1700万円となっている。
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協会はアクション・プログラムの対象とされており、自らも特定調達規程等の規程を整備するなどしている。このため、本院は、合規性、経済性等の観点から、特定調達に該当する契約について、アクション・プログラム、特定調達規程等に基づく契約事務が適切に行われ、透明性、公正性及び競争性が確保されているかなどに着眼して、協会本部ほか53全放送局(注3) において20年度に締結された契約(出演料、著作権料等に係る契約を除く。)のうち契約金額1700万円以上の契約(1,868件、2917億1027万余円)について、入札・契約状況等に関する調書の作成、提出を求めるとともに、協会本部において、契約書類等によりアクション・プログラム等に基づく契約事務の実施状況について会計実地検査を行った。
検査したところ、特定調達に該当する契約について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
協会は、20年度においては、各部局から特定調達に該当するものとして報告を受けた「平成20年度上期国際調達パソコン全国一括購入」等3件(契約金額計1億9990万余円)について官報への入札公告等の契約事務を行っていた。
しかし、コンピューターサービスに関する調達については特定調達に該当しないと誤認していたため、これに係る契約を含めていなかった。このため、特定調達規程等に定められた一般競争入札を行っていなかったり、随意契約による場合の官報への事前公示等を行っていなかったりしていた契約が57件、契約金額計88億4825万余円あった。
このように、特定調達に該当する契約の多くのものについて特定調達規程等に反し、適正な契約事務が執られていない事態は、特定調達に求められている透明性、公正性及び競争性の確保を損なうもので適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、協会において、アクション・プログラム、特定調達規程等の適用範囲についての理解が十分でなく、コンピューターサービスは特定調達の対象とならないと誤認していたことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、協会は、特定調達に係る契約事務の透明性、公正性及び競争性を確保するため、次のような処置を講じた。
ア 21年8月及び9月に、協会の担当者会議を開催するなどして、コンピューターサービスについても特定調達規程等に基づいた契約事務が必要であることを各部局に周知徹底した。
イ 21年9月に、特定調達に該当するコンピューターサービスに係る契約に関して、特定調達規程等に基づいた仕様書の策定等の作業に着手した。