会社名
|
(1)
|
首都高速道路株式会社
|
|
(2)
|
阪神高速道路株式会社
|
||
科目
|
管理費用
|
||
部局等
|
(1)
|
本社、3管理局
|
|
(2)
|
本社
|
||
契約名
|
(1)
|
土木維持補修19-1等3件
|
|
(2)
|
保全管理工事(平成19年度)等2件
|
||
契約の概要
|
交通事故復旧等の緊急応急対策工、舗装補修工、構造物補修工等の土木維持補修工事を実施するもの
|
||
契約の相手方
|
(1)
|
首都高メンテナンス西東京株式会社等3会社
|
|
(2)
|
阪神高速技術株式会社
|
||
契約
|
(1)
|
平成19年7月 交渉合意契約(単価契約)
|
|
(2)
|
平成19年4月、20年4月 随意契約(単価契約)
|
||
上記契約に係る土木維持補修工事の支払額
|
(1)
|
144億8325万余円
|
(平成19年度)
|
(2)
|
124億3894万余円
|
(平成19、20両年度)
|
|
上記のうち諸経費相当額
|
(1)
|
31億8979万余円
|
|
(2)
|
27億2119万余円
|
||
節減できた諸経費相当額
|
(1)
|
1億1086万円
|
(平成19年度)
|
(2)
|
8559万円
|
(平成19、20両年度)
|
首都高速道路株式会社(以下「首都会社」という。)の西東京、東東京、神奈川各管理局及び阪神高速道路株式会社(以下「阪神会社」という。)は、高速道路の保全工事の一環として、交通事故復旧等の緊急応急対策工、舗装補修工、構造物補修工等(以下「各工種」という。)の土木維持補修工事を毎年度多数実施している。
土木維持補修工事は、いつ、どの場所において、どの程度の数量が発生するか特定できないことから、契約に当たっては、あらかじめ各工種について契約単価を決定しておき、原則として1か月ごとに出来高数量に応じて支払を行う単価契約方式を採用している。
各工種の契約単価は、各会社制定の積算基準等に基づき以下のとおり決定されている。
ア 首都会社における契約単価
〔1〕 材料費と労務費等を合計した施工費等の単価(以下「施工単価」という。)を算定し、これに過去の実績数量等を基に算出した予定数量を乗じて直接工事費を算出する。
〔2〕 〔1〕 により算出した各工種の直接工事費等の額の合計額(以下「対象金額」という。)に積算基準に定められた計算式により算出した諸経費率を乗じて諸経費を算出し、その諸経費を対象金額に加算して設計金額を算出する。
〔3〕 〔2〕 により算出した設計金額と契約予定者からあらかじめ提出される提示価格内訳書の金額を基に、契約予定者と価格交渉を行って、当初契約時の支払額(以下「予定支払額」という。)を決定し、予定支払額を設計金額で除して算出した落札率及び諸経費率を施工単価に乗じて契約単価(以下「当初契約単価」という。)を決定する。
イ 阪神会社における契約単価
〔1〕 ア〔1〕 と同様の方法により施工単価、対象金額及び諸経費率を算出する。
〔2〕 〔1〕 により算出した諸経費率を施工単価に乗じて予定単価を算出し、工事の受託予定者と価格交渉を行って、予定単価と同額又はこれを下回る金額で当初契約単価を決定する。
そして、上記ア〔2〕 及びイ〔1〕 の計算式によると、諸経費率は、対象金額が増加するにつれて逓減するようになっている。
土木維持補修工事における契約変更の方法は以下のように行われている。
ア 首都会社における契約変更
契約変更は、契約後に新たに追加される工種(以下「追加工種」という。)が発生した場合に行い、その契約単価(以下「追加契約単価」という。)は、当初契約時に適用した諸経費率を適用するなどして決定することとしている。
イ 阪神会社における契約変更
契約変更は、アと同様に追加工種が発生した場合に行い、追加契約単価は、当初契約時の対象金額と追加工種の対象金額を合算した額に対応する新たな諸経費率(当初契約時に適用した諸経費率より低くなる。)を適用するなどして決定することとしている。
首都会社及び阪神会社が管理する高速道路は、供用後40年を超える路線もあり、経年劣化が進んでいることから、土木維持補修工事の必要性は更に高まり、今後も多額の費用をかけて実施していくことになる。
そこで、本院は、経済性等の観点から、土木維持補修工事に係る契約事務は適切に行われ、支払額の節減が図られているかなどに着眼して、首都会社本社及び各管理局において、平成19年度に実施された3工事(工期19年7月から20年7月まで)、支払額計144億8325万余円を、阪神会社本社において、19、20両年度に実施された2工事(工期19年7月から20年6月まで、及び20年7月から21年6月まで)、支払額計124億3894万余円をそれぞれ対象として、契約書、工事の設計図書等の書類等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、上記の各工事においては、各工種の出来高数量が予定数量を大幅に上回ったり、緊急な補修が必要になるなどして追加工種が発生したりしていて、上記の支払額144億8325万余円及び124億3894万余円は、予定支払額、首都会社計92億2830万余円及び阪神会社計80億2436万余円に比べて、それぞれ5割以上の大幅な増加となっていた。
しかし、前記のとおり、対象金額が増加すれば諸経費率は逓減するようになっていることから、出来高数量が予定数量を上回るなどしたことにより増加した対象金額に対応する新たな諸経費率を基に予定単価等を算出し、これにより価格交渉を行った上で契約単価を減額する契約変更を行うべきであったと認められた。
首都会社神奈川管理局が平成19年7月に締結した契約は、排水補修工の予定数量が約2,300m(予定支払額5093万余円)であったのに対し、出来高数量が約5,100m(支払額7622万余円)となるなどして数量が大幅に増加したり、劣化損傷した橋りょうの床版補修工(支払額3億3907万余円)や鶴見つばさ橋等の舗装補修工(支払額4億5439万余円)などの追加工種が発生したりしていた。このため、本件工事の支払額は38億9193万余円となり、予定支払額の20億0197万余円の約2倍となっていた。
そこで、本件工事について、工期の途中で契約単価を減額する契約変更を行い、この契約単価により契約変更後の出来高数量に対する支払を行ったとすれば、上記支払額のうちの諸経費相当額8億8332万余円は、8億4534万余円となり、差引き3797万余円が節減できたと認められる。
このように、出来高数量が予定数量を大幅に上回ったり、追加工種が発生したりするなどして、土木維持補修工事の支払額が予定支払額を大幅に上回っているのに、契約単価を減額する契約変更を行っていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記により、本件各工事について、契約単価を減額する契約変更を行い、この契約単価により、契約変更後の出来高数量に対する支払を行ったとすれば、首都会社における前記3工事の支払額計144億8325万余円のうちの諸経費相当額31億8979万余円は1億1086万余円が、また、阪神会社における前記2工事の支払額計124億3894万余円のうちの諸経費相当額27億2119万余円は8559万余円がそれぞれ節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、両会社において、単価契約方式により契約したという認識から、出来高数量の大幅な増加等に伴う諸経費率の低減による契約単価の見直しについて検討を行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、首都会社は21年7月、阪神会社は21年8月にそれぞれ関係部署等に通知を発して、予定支払額の大幅な増加が見込まれる場合には、諸経費率の低減により契約単価を減額する契約変更を行うこととし、それぞれ同年7月及び9月から適用する処置を講じた。