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  • 平成20年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第55 東日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

レガシー系サービスの解約等により回線の切断を行うに当たり、新規加入に伴う新設作業等の際に併せてジャンパ線を撤去することにより、作業の効率化を図り、経費を節減するよう改善させたもの


レガシー系サービスの解約等により回線の切断を行うに当たり、新規加入に伴う新設作業等の際に併せてジャンパ線を撤去することにより、作業の効率化を図り、経費を節減するよう改善させたもの

科目
営業費用
部局等
東日本電信電話株式会社本社及び17支店
ジャンパ線撤去作業の概要
交換所の配線盤で、交換機、加入者宅双方からのケーブルがつなぎ止められている端子同士を接続している銅線を撤去する作業
ジャンパ線撤去作業のみを行った工事件数及び派遣費
117,446件
2億8872万余円
(平成20年7月〜21年5月)
作業を効率化することにより節減できた派遣費
 
2億8680万円
(平成20年7月〜21年5月)

1 交換所内ジャンパ線撤去作業の概要

 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)は、加入電話やISDNなど銅線ケーブルを使用したサービス(以下「レガシー系サービス」という。)を提供している。そして、レガシー系サービスの新規加入や解約等により回線の開通や切断を行う場合は、交換機からのケーブルと加入者側に敷設されたケーブルをつなぎ止める配線盤が設置された交換所に作業員を派遣して、交換機、加入者宅双方からのケーブルがつなぎ止められている端子同士を接続する銅線(以下「ジャンパ線」という。)を取り付けまたは撤去する作業(以下、撤去する作業を「ジャンパ線撤去作業」という。)を実施している。
 そして、加入者宅の保安器から配線盤までの通信設備(以下「加入者回線設備」という。)に係る工事を通信建設会社に請け負わせており、この工事の作業に要する経費(以下「作業費」という。)や現場移動に要する経費(以下「派遣費」という。)は、本社が定めた作業工程等に基づき各支店ごとに定められている。
 このうち、解約等により回線切断を必要とする場合は、加入者宅に派遣されて回線切断を行う作業班と、交換所に派遣されてジャンパ線撤去作業を行う作業班に分かれて、それぞれ別の工事として作業を行っている。これらの作業が完了すると、解約等の申込内容は、交換機を制御するシステムや課金情報を取り扱うシステムなどに伝送されて、それ以降は通話や課金は行われないようになっている。
 一方、加入者が支払う基本料では加入者回線設備の費用を賄えず、基本料部門の収支が赤字となった場合は、費用の一部を、法令で定める電気通信事業者全体で応分に負担する制度(以下「ユニバーサルサービス制度」という。)が設けられている。近年、携帯電話や光ケーブルを使用するIP電話の普及に伴う加入者数の減少により、基本料部門の収支は赤字となっていることから、NTT東日本を含むほとんどの電気通信事業者は、各社が電話番号保有数に応じて負担すべき金額を、それぞれの電話契約者に転嫁(平成20年1月から21年1月までは電話番号当たり毎月6円。21年2月からは8円)して徴収している。
 これに対して、NTT東日本は、これまでに、解約の際に加入者の了解を得てケーブル等の設備を加入者宅に残置したり、宅配便を使用して加入者宅から機器を回収したりして、工事の無派遣化を進めるなど、加入者回線設備の維持の効率化に努めている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、効率性等の観点から、加入者回線設備における工事の実施方法は適切なものになっているかなどに着眼して、NTT東日本本社及び12支店(注1) において会計実地検査を行い、入手可能である20年7月以降に実施された全17支店(注2) の工事データの提出を受けて、本院で作成したプログラムを使用して工事内容を分析するなどして検査した。

(注1)
 12支店  東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨、長野、新潟、宮城、青森、北海道各支店
(注2)
 全17支店  東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨、長野、新潟、宮城、福島、岩手、青森、山形、秋田、北海道各支店

(検査の結果)

 レガシー系サービスでは新規加入に比べて解約等が多いことから、交換所ではジャンパ線の取付作業よりも撤去作業の方が多くなっていた。20年7月から21年5月までに実施された全工事5,694,956件の中に、交換所内でのジャンパ線撤去作業を伴う工事が161,837件(派遣費4億2243万余円)含まれており、このうち117,446件(同2億8872万余円)はジャンパ線撤去作業のみのために交換所に作業班を派遣している工事となっていた。しかし、前記のように、解約等の申込内容が該当する各システムに伝送されれば、解約等の後に誤って通話や課金が行われることはないことから、解約等の度に作業員を派遣してジャンパ線撤去作業を行う必要はなく、同作業を保留して後日まとめて撤去しても特段の問題はないと認められた。
 したがって、必要な社内システムの改良を行い、新規加入に伴う新設作業等のために交換所へ作業員を派遣した際に併せて、保留していたジャンパ線撤去作業を行うように作業手順を改めることにより、派遣回数を減らすことができたと認められた。
 NTT東日本は、加入者回線設備の維持にユニバーサルサービス制度による交付金を充当しており、経営効率化に特に努める必要があるにもかかわらず、上記のように加入者回線設備に係る工事において、ジャンパ線撤去作業のみのために交換所に作業員を派遣している事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(節減できた派遣費)

 ジャンパ線撤去作業のみのために交換所に作業員を派遣することをやめて、新設作業等のために交換所に作業員を派遣しなければならない工事が発生した際に同作業を併せて行うこととすれば、前記の工事117,446件に係る派遣費2億8872万余円は必要なくなり、社内システムの改良に要する経費を考慮しても、約2億8680万円が節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、NTT東日本において、レガシー系サービスで加入者数の減少が続く現在の状況に応じた業務の見直しが十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTT東日本本社は、21年9月に、ジャンパ線撤去作業を新設作業等のために交換所へ作業員を派遣する際に併せて実施するように見直した業務手順を定めて、同業務手順を各支店へ通知して周知を図り、ジャンパ線撤去作業を効率化して経費の節減を図る処置を講じた。