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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
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  • 平成21年9月

国土交通省の地方整備局等における庁費等の予算執行に関する会計検査の結果について


3 契約内容、契約金額などの状況

(1) 契約内容の状況

 庁費等に係る対象契約の内容について、契約方式、発注単位、業務範囲、実施方法の点から経済的、効率的なものにならないかなどについて検査した。その結果、次のとおり、少額随契の一括化、発注単位の設定及び業務範囲の設定や実施方法を検討すべきものなどの事態が見受けられた。

ア 少額随契の一括化

 物品の購入のうち事務用消耗品は1品ごとの単価は比較的安価であるが、各部局等で共通的に使用するものについては、大量に購入されるため年間を通じた支払金額は多額なものとなっている。
 そこで、そのような事務用消耗品としてプリンタで使用するトナーカートリッジを選定して、これに係る契約方式、件数及び支払金額を分析した。
 検査対象の組織では、18、19両年度に、毎年8億円を超えるトナーカートリッジを購入しているが、その購入に係る契約方式をみると、19年度では随意契約が金額割合で約3割となっている。さらに、随意契約のほとんどが少額随契となっていて、18年度においては1,648件、3億4698万円、19年度においても1,297件、2億6266万円のトナーカートリッジを少額随契により購入している。
 これは、物品の購入に当たり少額随契によることができるのは予定価格が160万円を超えない場合とされており、多くのカートリッジの個々の契約の予定価格が、この160万円を超えていないことによる。このような少額随契の件数は毎年度1,000件以上と多く、少額随契について、18、19両年度のトナーカートリッジに係る1契約当たりの平均支払金額は、20万円程度となっている。
 しかし、このような複数回の少額随契のうち年間を通じた総支払金額が160万円を上回っているものは、18、19両年度では件数割合で70.3%(1,159件)、60.3%(782件)、支払金額割合で84.6%(2億9368万円)、79.8%(2億0958万円)となっている。
 トナーカートリッジはプリンタのメーカーや機種別に規格が異なっていることや、特定のトナーカートリッジはプリンタが専用機器であり販売会社が限られていることなどもあり、必ずしもすべてのトナーカートリッジの購入を一括して契約するには困難な面もある。しかし、数量をまとめることにより契約価格も有利となることや事務手続の簡素化にも役立つことから、既往年度の使用実績等に基づく計画的な購入を図ることにより、個別に少額随契を行うことなく一括化して、一般競争契約による購入を検討すべき事態が見受けられた。その事例を示すと次のとおりである。

<事例6>

[計画的な購入を検討すべきもの]

 北海道開発局は、平成18、19両年度に、トナーカートリッジを他の事務用消耗品と合わせて総価契約による随意契約で購入しており、その件数は18年度計95件、19年度計86件となっている。そして、トナーカートリッジに係る1件当たりの支払金額は18年度16,800円から851,053円、19年度8,862円から461,685円となっており、これらに係る契約は、すべて、予定価格が少額(160万円未満)である場合に適用できる少額随契となっていた。
 しかし、トナーカートリッジの年間を通じた総支払金額は、18年度18,827千円、19年度12,626千円であり、少額随契によることができる範囲を超えており、既往年度の実績等から年間の予定数量を想定して、計画的に購入することを検討していれば、一般競争契約で購入することが可能であったと認められる。
 なお、同開発局は、20年度におけるトナーカートリッジの購入については、一般競争契約による単価契約を行っている。

 なお、国土交通省は、「国土交通省行政効率化推進計画」(16年6月行政効率化関係省庁連絡会議決定。20年12月改定)において、消耗品の調達については、今後の取組として、単価契約による調達の推進などにより件数の縮減を推進するとともに、少額随契による契約の単位をまとめるなどの見直しにより、一般競争契約の拡大を図ることとし、特にコピー用紙、トナー類及び文具用品類については、調達事務の集約化等を行うとともに、集約化によってかえってコストが高くなる場合を除き、単価契約による調達を行うこととしている。

イ 発注単位の設定

 地方支分部局は、本局の下に支局、事務所等が設置され、更にその下に出張所等が設置される重層型の組織となっており、これらが、行政範囲内に点在している。これらの各組織における職員の健康診断、庁舎の清掃等の業務を実施する場合、発注単位をどのように設定し、どこまで集約化すべきかについて画一的な基準を設定することは難しいが発注単位の集約化を検討すべき事態も見受けられた。その事例を示すと、次のとおりである。

<事例7>

[発注単位の集約化を検討すべきもの]

 北海道運輸局は、平成19、20両年度に、本局庁舎及び管内の事務所等11庁舎における健康診断業務について、庁舎別に随意契約(契約金額:19年度12契約計1,528千円、20年度(12月まで)12契約計1,450千円)を行っている。そして、本局及び分任契約担当官が設置されていない事務所に係る健康診断業務については、本局が事務所に見積りの徴取を依頼するなどして随意契約を行っていて、その他の事務所等に係る健康診断業務については各事務所等が随意契約を行っている。
 しかし、上記の契約のうち本局庁舎と札幌運輸支局庁舎に係る健康診断業務については、いずれも札幌市内の庁舎において行われており、契約相手方も同一の者となっていた。このような場合には、一括して発注するなど契約の集約化を検討し、その際、一般競争契約の導入等契約方式の変更も視野に入れるべきであったと認められる。

 契約内容の発注単位の設定については、一般に、契約内容の集約化による経済的効果や、事務の効率化への寄与が期待できるため、入札状況も考慮しながら適宜見直すことが必要である。

ウ 業務範囲の設定や実施方法

 検査対象の組織は、業務等の確実な遂行を図るため、様々な業務を民間企業等に請け負わせるなどしている。業務の実施に当たっては、契約する業務の範囲等を年間の計画等に基づいて適切に設定することが必要であり、また、継続的に実施する業務の場合、財政事情が厳しい現状では、当該業務の継続の可否や業務の実施方法の見直しが必要となる場合もある。検査対象の契約内容についてみたところ、次のとおり、業務範囲の設定や実施方法について検討すべき事態が見受けられた。

(ア) 業務範囲の設定や実施方法の検討等

 今回検査した中で、契約した業務範囲の設定が適切でない事態や、業務の実施方法について検討すべき事態が2事項見受けられた。この事例を示すと次のとおりである。

<事例8>

[業務範囲の設定が適切でないもの]

 東京航空交通管制部は、平成20年度に、庁舎等の清掃作業について一般競争入札を実施したところ、応札者がなかったことから、予決令第99条の2の規定に基づき、民間企業と随意契約(契約金額:20年度(12月まで)18,585千円)を行っていた。
 上記の契約について仕様書等に記載の清掃作業の実施内容をみると、作業面積は管制室1,186.4m を含めた計27,459.1m としていたが、このうち管制室は20年9月から21年3月まで新たな管制卓の設置工事が行われており、この影響で1,186.4m のうち798.6m (契約金額相当額876,647円)は清掃が実施できなくなっていた。しかし、同交通管制部の担当者はこの状況を検査時点(20年12月)においても十分把握しておらず、当該業務期間中の各作業床の工事実施の状況等を十分に把握し、作業の必要性についての検討をすべきであったと認められる。
 なお、同交通管制部は、会計検査院の検査を踏まえ、20年12月に、設計変更により減額の措置を執った。

<事例9>

[業務の実施方法を検討すべきもの]

 関東地方整備局常陸河川国道事務所は、平成18年度から20年度に、同事務所が保有する技術資料等の資料整理、管理運用、資料管理システム改良、文書所在確認等の業務について、民間企業と18年度は指名競争契約(契約金額:24,675千円)、19、20両年度は一般競争契約(契約金額:19年度24,937千円、20年度(12月まで)26,145千円)を行っていた。
 上記業務のうち管理運用業務は、同事務所の書庫等に文書保存されている資料を職員からの依頼により貸し出すなどのために、同事務所の水戸庁舎、太田庁舎に管理要員を1名ずつ常駐させている。
 同管理運用業務は、一般には事務所職員が自ら実施しているものについて、資料の多様化等に対応した業務の効率化の一環として外部に請け負わせることとしたものである。しかし、同事務所内においては既に資料検索システムも整備され、同システムを使用すれば職員自らが必要な資料を持ち出すことも可能な環境となっており、また、1日当たりの貸出し依頼件数の実績は数件程度であり、これらを考慮すると、管理運用業務を外部に請け負わせ、各庁舎に常駐させる実施方法について、見直しの検討をすべきであったと認められる。

(イ) 定期刊行物の調達等

 国土交通省は、国土交通行政全般に関する情報、国土交通省所管の各事業に関連する情報、管内の地域のイベント・各種話題等に関する情報等を内外の関係各機関へ広報することを目的とした定期刊行物(以下「広報誌」という。)を購入又は制作しており、18、19両年度における本省及び地方支分部局(本局)別の広報誌の種類及び支払金額をみると、図表3-1 のとおりとなっている。

図表3-1
 本省及び地方支分部局(本局)別の広報誌の種類及び支払金額(平成18、19両年度)

(単位:部、千円、%)
年度
本省及び地方支分部局(本局)
平成18年度 19年度
種類 調達部数 支払金額 割合 種類 調達部数 支払金額 割合
本省 1 37,920 18,960 4.3 1 37,920 17,615 4.2
地方整備局 65 1,890,205 413,364 93.4 56 1,861,216 38,912,9 92.9
北海道開発局 4 36,640 7,930 1.8 4 64,160 10,167 2.4
地方運輸局等 3 10,440 2,115 0.5 3 10,690 1,911 0.5
地方航空局
航空交通管制部
合計 73 1,975,205 442,370 100 64 1,973,986 418,824 100

 本省及び地方支分部局(本局)別にみると、特に地方整備局の支払金額は、18年度で413,364千円、19年度で389,129千円と多額に上っており、両年度とも本省及び地方支分部局(本局)の合計額の90%以上を占めている。
 地方整備局の広報誌については、主に全国に配布される広報誌(以下「全国誌」という。)と、主に地方整備局管内に配布される広報誌(以下「地方誌」という。)に分けられる。これら広報誌の19年度の調達部数及び支払金額をみると、図表3-2 のとおりとなっている。

図表3-2
 地方整備局別の広報誌の調達状況(平成19年度)

(単位:種類、部、千円)
地方整備局 広報誌の種類 調達部数 支払金額
東北 全国誌 3 18,880 10,829
地方誌 4 446,900 21,868
7 465,780 32,697
関東 全国誌 4 82,549 28,041
地方誌 1 264,000 46,095
5 346,549 74,136
北陸 全国誌 3 23,910 16,373
地方誌 2 182,000 48,365
5 205,910 64,738
中部 全国誌 6 54,094 16,163
地方誌 3 248,300 37,170
9 302,394 53,333
近畿 全国誌 3 23,595 17,939
地方誌 6 165,450 70,384
9 189,045 88,323
中国 全国誌 5 39,051 11,760
地方誌 1 24,426 6,595
6 63,477 18,355
四国 全国誌 3 8,148 8,361
地方誌 3 130,520 5,268
6 138,668 13,629
九州 全国誌 6 48,013 20,177
地方誌 3 101,380 23,737
9 149,393 43,915
合計 全国誌 33 298,240 129,646
地方誌 23 1,562,976 259,483
56 1,861,216 389,129

 地方整備局では、上記の広報誌のうち、国土交通行政全般に関する情報、管内の地域のイベント・各種話題等に関する情報等の広報誌は広報担当課において、また、国土交通省所管の各事業に関連する情報の広報誌は各事業課において、それぞれ配布先、配布部数を決定している。
 上記について、19年度の広報誌の配布先をみると、図表3-3 のとおりとなっている。

図表3-3
 広報誌の配布先の状況(平成19年度)

広報誌の種類 適用 配布先数
省内 他省庁 地方公共団体 学校 図書館等 病院 民間企業 道の駅 その他 合計
全国誌 最小 6 - - - - - - - - 6
最大 114 1 371 281 344 2 16 4 859 1,186
平均 24 - 55 20 18 - - - 67 187
地方誌 最小 1 - - - - - - - - 1
最大 112 278 896 5,904 904 426 1,998 122 1,728 8,362
平均 60 33 193 563 118 32 249 41 390 1,682
全体 最小 1 - - - - - - - - 1
最大 114 278 896 5,904 904 426 1,998 122 1,728 8,362
平均 39 13 111 243 59 13 103 17 200 801
注(1)
 配布先数は、広報誌1発行当たりの各配布先の最小値、最大値、平均値を示したもので、合計も同様に広報誌1発行当たりの配布先の合計の最小値、最大値、平均値を示す。

注(2)
 省内とは管内の事務所等、他の地方整備局、本省等を示す。

 広報誌の配布先は、学校、民間企業、図書館、地方公共団体等多岐にわたっている。このように、各地方整備局は多くの種類の広報誌を多数調達し、配布しているが、広報誌の種類、配布先等は担当部局によって大きく異なっていて効率的な広報誌の調達という点で疑問がある。
 これらの広報誌は、道路整備特別会計における広報広聴経費についての国会の議論等を踏まえてその必要性について検討が行われており、その多くが購入又は制作を取りやめるなどしている。その結果、20年度(12月まで)の8地方整備局の調達実績は、3種類の広報誌で1,832千円と急激に減少している。また、21年度からは新たな予算科目として広報費が設けられて予算上の明確化が図られ、支出に当たって事前審査を行うなど厳正な予算執行管理を行うこととされた。

(2) 契約金額の状況

 庁費等に係る対象契約の内容について、仕様の内容、料金設定、予定価格の算定の点から経済的、効率的なものにならないかなどについて検査した。その結果、次のとおり、経済的な仕様の設定、経済的な料金プランの利用、予定価格の算定方法を検討すべきものなどの事態が見受けられた。

ア 経済的な仕様の設定

 前記のとおり、検査対象の組織では、プリンタで使用するトナーカートリッジを毎年度多数購入しており、18年度における件数は1,748件、支払金額は8億2605万円、19年度における件数は1,421件、支払金額は8億8956万円となっている。
 現在、トナーカートリッジについては、新品のほかに、使用済みのカートリッジにトナーを詰め替えたリサイクル品も流通しているが、リサイクル品のうちには、メーカーが製造しているリサイクル品(以下「純正リサイクル品」という。)とメーカー以外の者が製造しているリサイクル品(以下「非純正リサイクル品」という。)があり、いずれも一般に新品よりも安価となっている。純正リサイクル品は、資源の有効利用や地球環境への配慮を背景に各メーカーでも順次対応機種を増やしてきており、その品質は新品と同様に厳密な管理が行われていて、万一プリンタ本体の故障の原因となっても、非純正リサイクル品と異なり新品を使用した場合と同様の保証が受けられるものとなっている。
 トナーカートリッジの購入契約における仕様の設定状況をみると、図表3-4 のとおりとなっている。

図表3-4
 トナーカートリッジの購入契約における仕様の設定状況(平成19年度)

上段:金額(単位:  千円)
下段:割合(単位: %)
契約上の仕様の規格
検査対象の組織
新品を対象とした仕様 リサイクル品を考慮した仕様 合計
件数 支払金額 件数 支払金額 件数 支払金額
本省 87
(91.6)
235,793
(93.0)
8
(8.4)
17,748
(7.0)
95
(100)
253,542
(100)
地方整備局 本局 214
(90.3)
85,094
(41.1)
23
(9.7)
121,864
(58.9)
237
(100)
206,959
(100)
事務所等 416
(91.4)
127,587
(85.8)
39
(8.6)
21,103
(14.2)
455
(100)
148,690
(100)
630
(91.0)
212,682
(59.8)
62
(9.0)
142,967
(40.2)
692
(100)
355,650
(100)
北海道開発局 本局 54
(62.8)
7,384
(58.5)
32
(37.2)
5,241
(41.5)
86
(100)
12,626
(100)
事務所等 198
(75.6)
13,027
(33.6)
64
(24.4)
25,708
(66.4)
262
(100)
38,735
(100)
252
(72.4)
20,412
(39.7)
96
(27.6)
30,949
(60.3)
348
(100)
51,361
(100)
地方運輸局等 195
(83.0)
145,778
(77.9)
40
(17.0)
41,466
(22.1)
235
(100)
187,245
(100)
地方航空局 21
(100.0)
23,205
(100.0)
-
(-)
-
(-)
21
(100)
23,205
(100)
航空交通管制部 26
(86.7)
17,137
(92.3)
4
(13.3)
1,425
(7.7)
30
(100)
18,563
(100)
合計 1,211
(85.2)
655,010
(73.6)
210
(14.8)
234,559
(26.4)
1,421

(100)
889,569

(100)

 契約上の仕様の規格で新品を対象としている契約は、件数で1,211件(85.2%)と大半であり、リサイクル品を考慮した仕様となっている契約は210件(14.8%)と少ないものとなっていた。また、仕様の規格で新品を対象としている契約に係るトナーカートリッジについて、純正リサイクル品の製造等の状況をみると、図表3-5 のとおりとなっている。

図表3-5
 純正リサイクル品の製造等の状況(平成19年度)

上段:金額(単位:  千円)
下段:割合(単位: %)
製造等の状況
検査対象の組織
純正リサイクル品が製造されているもの 純正リサイクル品が製造されていないもの 合計
件数 支払金額 件数 支払金額 件数 支払金額
本省 36
(41.4)
97,790
(41.5)
51
(58.6)
138,003
(58.5)
87
(100)
235,793
(100)
地方整備局 本局 47
(22.0)
39,247
(46.1)
167
(78.0)
45,847
(53.9)
214
(100)
85,094
(100)
事務所等 165
(39.7)
63,207
(49.5)
251
(60.3)
64,380
(50.5)
416
(100)
127,587
(100)
212
(33.7)
102,454
(48.2)
418
(66.3)
110,228
(51.8)
630
(100)
212,682
(100)
北海道開発局 本局 27
(50.0)
4,568
(61.9)
27
(50.0)
2816
(38.1)
54
(100)
7,384
(100)
事務所等 60
(30.3)
4,560
(35.0)
138
(69.7)
8,466
(65.0)
198
(100)
13,027
(100)
87
(34.5)
9,128
(44.7)
165
(65.5)
11,283
(55.3)
252
(100)
20,412
(100)
地方運輸局等 64
(32.8)
55,540
(38.1)
131
(67.2)
90,238
(61.9)
195
(100)
145,778
(100)
地方航空局 11
(52.4)
13,296
(57.3)
10
(47.6)
9,908
(42.7)
21
(100)
23,205
(100)
航空交通管制部 15
(57.7)
6,704
(39.1)
11
(42.3)
10,433
(60.9)
26
(100)
17,137
(100)
合計 425
(35.1)
284,914
(43.5)
786
(64.9)
370,095
(56.5)
1,211
(100)
655,010
(100)
(注)
 「純正リサイクル品が製造されていないもの」には不明を含む。

 契約上の仕様の規格で新品を対象としている契約に係るトナーカートリッジのうち、425件(35.1%)分については、メーカーにおいて純正リサイクル品が製造されていた。
 純正リサイクル品は、製造に必要な使用済みカートリッジの回収等の問題から必ずしも需要に応じた供給に対応できないことなどもあり、上記契約のすべてにおいて購入が可能であったとまでは断定できないが、トナーカートリッジの契約に当たっては、経済性だけでなく環境にも配慮して、供給状況に応じた純正リサイクル品の購入を図ることができるよう仕様の記載を検討すべきであったと認められる。
 一方、一部の検査対象の組織では、仕様の規格で純正リサイクル品も設定して、 実際にも安価な純正リサイクル品が納入されていたものも見受けられた。純正リサイクル品を仕様に設定しているものについて、事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>

 東北地方整備局は、平成18、19両年度に、文書事務に必要なトナーカートリッジ等の事務用消耗品の購入について、民間企業と一般競争契約による単価契約(契約金額:18年度10,950千円、19年度4,924千円)を行っていた。
 同整備局では、上記の契約に当たり、新品より安価な純正リサイクル品もプリンタの機種によっては販売されていたため、仕様書等に「純正リサイクルトナー」と明記した上で純正リサイクル品の規格を記載していた。
 そして、上記の仕様書に基づき契約を行ったことにより、18、19両年度で購入したトナーカートリッジの大半は純正リサイクル品となっていた。

イ 経済的な料金プランの利用

 本省及び地方支分部局(本局)は、業務の遂行等に当たり、他の事務所及び事業実施現場に赴いた職員との連絡等のために、固定電話及び携帯電話等を使用している。そして、固定電話については、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、KDDI株式会社等の電話会社(以下「固定電話会社」という。)と利用契約を締結しており、通話料、回線使用料等の電話料金を、19年度2億5012万円、20年度2億3863万円支払っている。固定電話から携帯電話に電話をかける場合(以下、このことを「固定電話発携帯電話着」という。)の通話料については「携帯電話会社利用分」として、携帯電話会社が設定した通話料が固定電話会社を介して請求されるものがあり、19、20両年度に、携帯電話会社利用分として支払った電話の回線数及びこれらに係る通話料をみると、図表3-6 のとおりとなっている。

図表3-6
 携帯電話会社が設定した通話料を支払った電話の回線数及び金額(平成19、20 両年度)

(単位:回線、千円)
本省及び地方支分部局(本局) 平成19年度 20年度
回線数 通話料 回線数 通話料 回線数 通話料
本省 57 8,729 60 9,359 64 18,089
地方整備局 309 9,366 277 8,314 366 17,681
北海道開発局 50 550 49 414 55 965
地方運輸局等 53 860 25 380 57 1,240
地方航空局 39 1,914 37 1,889 43 3,803
航空交通管制部 91 1,002 78 792 97 1,795
計(23か所) 599 22,423 526 21,151 682 43,574
回線数は、19、20両年度に重複するものがあるため、両年度の合計とはならない。

 上記図表3-6のとおり、固定電話発携帯電話着の通話料において、携帯電話会社が設定した通話料を支払っているものは、本省及び地方支分部局(本局)の23か所で見受けられ、19年度599回線、2242万円、20年度526回線、2115万円、計682回線、4357万円となっている。
 しかし、固定電話発携帯電話着の通話については、各固定電話会社から、経済的な料金プランが提供されており、その主なものとして、固定電話から携帯電話へ電話をかける際、固定電話会社別に決められた事業者識別番号「00XY」を携帯電話番号の前に付することで、携帯電話会社の設定した通話料(携帯電話会社A社の場合、平日3分間当たり70円)より割安な通話料(固定電話会社B社の場合、平日3分間当たり49.5円)が適用されるプランがある。
 そこで、固定電話発携帯電話着の通話料について、上記の経済的な料金プランが適用されているかについてみたところ、巻末別表3 のとおり、前記本省及び地方支分部局(本局)の23か所のうち18か所において、固定電話会社の事業者識別番号を付して通話できたのに、これを行うことなく通話しており、その回線数及び通話料は、19、20両年度で計638回線、計4311万円となっていた。
 これらの通話については、固定電話会社の事業者識別番号を付することにより、計1262万円の節減が図ることができることから、固定電話会社が設定した経済的な料金プランの利用を検討すべきであったと認められる。

ウ 予定価格の算定方法

 予定価格は、予決令第80条第2項により、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないとされている。予定価格の算定は、国土交通省又は他の信頼できる機関において定めている予定価格の積算の基準や単価を使用したり、契約の内容によってこのような基準等がない場合には、市販の積算用の資料を使用したり、業者から徴取した見積り(以下、予定価格の算定のために業者から徴取した見積りを「参考見積り」という。)を基にしたりするなどの方法がある。
 検査対象の組織における19年度及び20年度(12月まで)の対象契約のうち、予定価格の算定を参考見積りの価格としたり、参考見積りの価格に一定の査定率を乗じたりなどして決定しているものについて、参考見積りの徴取数及び徴取先の選定方法をみると、図表3-7 のとおりとなっている。

図表3-7
 参考見積りの徴取数及び徴取先の選定方法(平成19年度、20年度(12月ま で))

〔1〕 徴取数
上段:件数(単位: 件)
下段:割合(単位: %)
参考見積り徴取数 1者 2者 3者 4者 5者以上
件数
2,623
(62.0)
515
(12.2)
602
(14.2)
192
(4.5)
299
(7.1)
4,231
(100)

〔2〕 徴取先の選定方法
上段:件数(単位: 件)
下段:割合(単位: %)
参考見積り徴取数 参考見積りの徴取先の選定方法
既契約の契約者 既契約の応札者 当該契約の応札が見込まれる者 既契約の応札者と当該契約の応札が見込まれる者 その他
1者
1,578
(60.2)
28
(1.1)
950
(36.2)
60
(2.3)
7
(0.3)
2,623
(100)
2者
44
(8.5)
57
(11.1)
382
(74.2)
28
(5.4)
4
(0.8)
515
(100)

 参考見積りの徴取数は1者が62.0%を占めている。
 参考見積りの徴取数を1者又は2者としている契約は、既契約の契約者又は応札者、当該契約の応札が見込まれる者など限られた範囲から参考見積りを徴取しているものがほぼ100%となっている。この中には、他に適当な参考見積りの徴取先がない場合もあるが、入札に参加する意欲のある者からの参考見積りの方が他の者よりも信頼性があるなどとして、徴取先を当該契約の応札が見込まれる者等に制限した結果少数となっている場合もある。
 予定価格の算定に当たって、参考見積りの徴取先を既契約者等に限定していた事態が、巻末別表3 のとおり6事項見受けられた。その事例を示すと次のとおりである。

<事例10>

[予定価格の算定に当たり、参考見積りの徴取先を限定しているもの]

 近畿地方整備局は、平成18、19両年度に、プリンタのトナーカートリッジ等の購入について、民間企業と一般競争契約による単価契約(契約金額:18年度3,253千円、19年度2,870千円)を行っていた。
 上記の契約の予定価格の算定に当たっては、いずれも参考見積りを基にしており、当該契約の応札が見込まれる者からの参考見積りの方が信頼性が高いとして、それぞれの契約に応札が見込まれる18年度1者、19年度2者を参考見積りの徴取先としていた。
 しかし、特にトナーカートリッジのように対象となる者が多数存在することが想定される契約については、参考見積りの徴取先を当該契約の応札が見込まれる者に限定することなく、より多くの者を対象とすることが適正な予定価格の算定に寄与するものと認められる。

 また、予定価格の算定に当たり、予定数量の算出を誤ったり、適用すべき積算基準、単価が定められているのに使用していなかったりしていた事態が、巻末別表3 のとおり11事項見受けられた。その事例を示すと次のとおりである。

<事例11>

[予定数量を誤って予定価格を算定していたもの]

 九州運輸局は、平成20年度に、小荷物の輸送契約について、民間企業と一般競争契 約を行っていた。
 上記の契約は、当該年度に予定される小荷物の輸送業務の総価を予定価格として契約相手方を選定することとして、選定後に入札価格の基となった単価により単価契約(契約金額:20年度(12月まで)2,354千円)を行っている。予定価格の算定に当たっては、前年度の輸送実績に余裕を見込んで10%割増しした数量を当該年度の予定数量とすることとし、小荷物の送付元、送付先に応じて算出した予定数量に単価を乗じた価格を合計するなどして、予定数量を9,883個、予定価格を7,201,220円と算定していた。
 しかし、上記の予定価格のうち一部の送付元の予定数量の算出に当たり、前年度の送付実績の106個に1.1を乗じて117個とすべきところ、表計算ソフトへの入力を誤るなどして1,147個としていた。したがって、正しい予定数量は8,853個、予定価格は6,479,780円となり721,440円過大に算定されていた。
 なお、入札による落札額は3,434,999円であり、修正後の予定価格6,479,780円を下回っていた。

<事例12>

[適用すべき積算基準以外の資料等で予定価格を算定していたもの]

 関東運輸局は、平成19、20両年度に、同運輸局栃木運輸支局等における構内車両の誘導・警備を行う業務について、いずれも民間企業と一般競争契約による単価契約(契約金額:19年度4,640千円、20年度(前半)6,117千円、(後半(12月まで))2,467千円)を行っていた。
 上記の契約について予定価格の算定方法をみたところ、1人1日当たりの費用を予定価格とすることとし、インターネット上に公表されている民間の試算例を基にするなどして警備業務に要する同費用を19、20両年度の3契約ともに17,994円と算定していた。
 しかし、庁舎の警備業務の積算に使用する基準としては、国土交通省官庁営繕部が策定した建築保全業務積算基準等があり、これにより積算すれば、19年度契約は13,799円、20年度契約は12,945円となり、本件業務の1人1日当たり積算額は19年度契約は4,195円、20年度契約は5,049円が過大に算定されていた。
 なお、入札による落札額は19年度10,290円、20年度(前半)9,660円、(後半(12月まで))9,240円であり、いずれも修正後の予定価格を下回っていた。