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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

還付金が高額となっている申告について他の還付申告と区分するなどして支払事務に要する日数を短縮することなどにより、還付加算金の節減を図るよう国税庁長官に対して改善の処置を要求したもの


2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

 貴庁が支払った還付加算金を含む還付金支払決定済額は、17年度5兆9705億余円、18年度7兆1215億余円、19年度7兆5423億余円となっていて、年々増加している。
 そして、前記のとおり、還付加算金は、支払までの日数に応じて還付金の額に一定の割合を乗じて計算されるものであることから、還付金が高額であるほど、また、支払事務に多くの日数を要するほど多額となる。
 そこで、経済性等の観点から、還付申告に係る支払事務に要する日数が長期間となっているものについて、税務署等における還付金の支払事務等が適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。

(検査の対象及び方法)

 還付金支払決定済額の多い源泉所得税、法人税及び消費税について、全524税務署が20年1月から12月までの間に支払った還付金のうち、法人の還付申告書により生じた1件300万円を超える還付金(還付加算金を含む。)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき提出された国税収納金整理資金支払命令額計算書及び同計算書証拠書類により検査した。
 また、3国税局及び38税務署において会計実地検査を行い、還付金の支払事務の実態を確認するとともに、貴庁に対して調査、報告及び関係資料の提出を求めるなどして検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 524税務署が支払った上記の検査の対象とした還付金の件数、金額及びそのうちの還付加算金の金額は、表1のとおり、支払件数計76,277件、還付金計4兆1811億8382万余円、還付加算金計338億2540万余円となっている。
 そして、上記の検査の対象とした還付金のうち、高額還付金(本院において、国税局等別に1税務署当たりの還付処理件数を勘案して設定した1件当たり一定金額(注2) 以上の還付金)は、表1のとおり、支払件数計1,157件、還付金計2兆1198億5637万余円、還付加算金計118億5261万余円となっていて、その割合は件数比では1.5%と低いものの、金額比では35.0%と3分の1を上回るものとなっている。
 そこで、高額還付金について、支払事務の状況や還付保留の解除の状況について検査した。

表1
 検査の対象とした還付金の支払件数及び支払額(平成20年1月〜12月)
(単位:千円)

税目 検査の対象とした還付金
(A)
左のうち高額還付金
(Aに占める割合)
件数
(件)
還付金額 件数
(件)
還付金額
うち還付加算金額 うち還付加算金額
源泉所得税 3,985 347,402,974 101
(2.5%)
200,170,885 (57.6%)
842,324 438,286 (52.0%)
法人税 23,806 759,206,325 201
(0.8%)
321,094,921 (42.2%)
17,311,199 6,646,179 (38.3%)
消費税 48,486 3,074,574,521 855
(1.7%)
1,598,590,570 (51.9%)
15,671,883 4,768,146 (30.4%)
合計 76,277 4,181,183,822 1,157
(1.5%)
2,119,856,377 (50.6%)
33,825,407 11,852,612 (35.0%)
(注)
 円単位で集計した後、千円未満を切り捨てているため、各税の金額を合計しても合計額とは一致しない。


 一定金額  〔1〕 東京国税局管内の税務署は10億円、〔2〕 大阪国税局管内の税務署は7億円、〔3〕 名古屋国税局管内の税務署は5億円、〔4〕 関東信越国税局管内の税務署は3億円、〔5〕 広島、福岡両国税局管内の税務署は2億円、〔6〕 札幌、仙台、金沢、高松、熊本各国税局及び沖縄国税事務所管内の税務署は1億円

(1) 高額還付金の支払事務に要した日数

 高額還付金の支払事務に要した日数を検査したところ、表2のとおりとなっている。

表2
 高額還付金の支払事務に要した日数及び支払額(平成20年1月〜12月)
(単位:千円)

日数 源泉所得税 法人税 消費税 合計
件数
(件)
還付金額 件数
(件)
還付金額 件数
(件)
還付金額 件数
(件)
還付金額
うち還付加算金額 うち還付加算金額 うち還付加算金額 うち還付加算金額
10日
以内
10 36,039,547 17 40,212,045 107 270,567,685 134 346,819,278
28,855 740,304 231,746 1,000,906
11日
以上
91 164,131,338 184 280,882,876 748 1,328,022,885 1,023 1,773,037,099
409,430 5,905,875 4,536,400 10,851,706
  11日以上
20日以内
25 52,739,970 65 98,858,329 285 633,029,530 375 784,627,829
86,934 2,068,821 1,247,528 3,403,283
21日以上
30日以内
55 98,621,142 102 154,415,757 320 493,899,396 477 746,936,296
274,595 3,108,650 1,913,791 5,297,036
31日
以上
11 12,770,225 17 27,608,789 143 201,093,958 171 241,472,972
47,901 728,404 1,375,081 2,151,386
合計 101 200,170,885 201 321,094,921 855 1,598,590,570 1,157 2,119,856,377
438,286 6,646,179 4,768,146 11,852,612
(注)
 円単位で集計した後、千円未満を切り捨てているため、各日数の金額を合計しても合計額とは一致しない。

 高額還付金の支払事務に要した日数は、10日以内のものが134件(11.5%)、11日以上のものが1,023件(88.4%)となっていて、平均23日となっている。
 多くの税務署では、高額還付金があっても他の還付申告と区分することなく、申告書の受付順に50件程度のバッチに取りまとめて支払事務を行っているが、一方、高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分して支払事務を行っている税務署もみられた。
 高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分することなく支払事務を行っている事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 麹町税務署は、A株式会社の消費税の還付金の還付申告書を法定申告期限の平成20年6月2日に受け付けた。
 賦課部門は、その還付申告に係る整理表を他の還付申告と区分することなく通常どおり50件程度のバッチに取りまとめてから、OCRによりデータ入力を行い、受付から3日後の同月5日に管理部門に整理表を送った。
 そして、管理部門は、還付金照合リストと当該整理表の照合等に12日間を要して、同月17日に照合等を終えたが、他の還付金の支払に併せて支払うこととしていたため、A株式会社の照合等が終了してから10日後の同月27日に25日分の還付加算金を含む還付金を他の還付金の支払と併せて支払った。

 一方、高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分して支払事務を行っている参考事例を示すと次のとおりである。

<参考事例>

 直方税務署は、B株式会社の消費税の還付金の還付申告書を法定申告期限の平成20年6月2日に受け付けた。
 賦課部門は、通常、整理表を50枚程度のバッチとして取りまとめてからOCRによりデータ入力を行うところ、B株式会社の還付申告金額が多額であることなどから、その還付申告書の整理表1件を他の還付申告と区分して、速やかにデータ入力を行い、受付の翌日の同月3日に管理部門に整理表を送った。
 そして、管理部門は、還付金照合リストと当該整理表との照合等を速やかに行い、3日後の同月6日に4日分の還付加算金を含む還付金を支払った。

 高額還付金に係る申告については、他の還付申告に比べて同じ支払事務1件でも還付加算金の額が多額となることから、他の還付申告と区分して支払事務を行うことによりその日数を短縮することで、還付加算金を節減することが可能であると認められる。

(2) 上場法人等及び輸出業者の還付申告に係る審査

 高額還付金のうち、上場法人等に係る申告の状況は858件、還付金計1兆8749億3464万余円、還付加算金計92億9684万余円となっており、高額還付金の大宗を占めている。
 上場法人等の還付申告については、前記のとおり、20年5月から還付保留を解除するための審査を簡素化していることから、審査に要する日数を短縮することができ、これにより支払事務に要する日数をより短縮することが可能であると認められる。
 また、消費税に係る高額還付金のうち、上場法人等を除く輸出業者で課税期間が1か月及び3か月のものは56件、還付金計451億5740万余円、還付加算金計1億2635万余円となっている。
 消費税の課税期間を1か月(年12回申告)又は3か月(年4回申告)としている輸出業者の還付申告については、還付の理由が輸出による免税であることが明らかであることから、還付保留を解除するための審査に要する日数を短縮することができ、これにより支払事務に要する日数を短縮することが可能であると認められる。

(3) 還付保留解除の迅速化

 高額還付金で還付保留となっていたもののうち、還付申告書(電子)以外の還付申告書の受付から還付保留の解除決定までの日数が確認できた121件について、支払事務に要した日数を検査したところ、平均で30日となっており、このうち、賦課部門において整理表のデータ入力を行ってから還付保留の解除までに要した日数は平均で16日となっていた。
 還付保留を解除するための審査は、月次処理により出力された調査票等に基づき行われていることから、整理表のデータ入力を行ってから月次処理までの間は還付保留を解除するための審査ができないこととなり、その日数は平均で3日となっていた。
 前記のとおり、貴庁は、20年5月から、還付申告書(電子)の還付保留に係るものについては、月次処理を待つことなく随時に調査票等を出力できるようにKSKシステムを変更するなどして還付保留解除の迅速化を図っていることから、還付申告書(電子)以外の通常の還付申告に係る還付保留についても同様の取扱いとすることにより、還付保留を解除するまでの日数を短縮することが可能であると認められる。

 上記(1)、(2)及び(3)のことから、還付金額が高額な申告、特に上場法人等の還付申告や輸出業者の消費税に係る還付申告については、他の還付申告と区分して支払事務を行うことにより、また、還付保留となったものについては、保留解除までの日数を短縮することにより、支払事務に要する日数を短縮することが可能であると認められ、ひいては還付加算金を節減することが可能であると認められる。
 そこで、支払事務に要する日数が11日以上の高額還付金1,023件に係る還付加算金108億5170万余円について、その支払事務に要する日数を、10日(注3) として計算すると、還付加算金の額は計80億6228万余円となり、27億8942万余円節減できたと認められる。

 10日  高額還付金に係る申告を他の還付申告と区分していた税務署における高額還付金の支払事務に要した最長日数が8日であることを考慮して10日とした。

(改善を必要とする事態)

 還付加算金は、所定の日の翌日から還付金の支払決定日までの日数に応じて加算される利子に相当するものであり、還付金額が高額であるほど、また、支払事務に要する日数が長くなるほど多額となる。
 したがって、還付金額が高額な申告、特に上場法人等の還付申告や輸出業者の消費税に係る還付申告を他の還付申告と区分していないことなどから支払事務に多くの日数を要していて、その結果、還付加算金を多額に支払っている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴庁において、還付金額が高額な申告を他の還付申告と区分して支払事務を短縮するよう、国税局等及び税務署に対して指導及び監督を十分に行っていないこと、また、還付金額が高額なもので還付保留となった申告に係る調査票等を月次処理による出力としているなどのため、還付保留の解除までに日数を要していることなどによると認められる。