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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成21年9月

厚生労働省において、国民健康保険の財政調整交付金の交付額の算定を適切なものにするため、退職被保険者等のそ及適用に伴う一般被保険者数の調整を的確に行うよう改善させたもの


2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院が平成16年度及び19年度の決算検査報告(注1) において、退職被保険者等に係る資格の適用を的確に行うよう指摘したこともあり、市町村は、その適用の適正化を図ってきていることから、そ及適用件数は増加しており、これに伴い、財政調整交付金の交付額の算定に当たって一般被保険者数から控除すべきそ及退職被保険者等の数も増加している状況にある。
 そこで、本院は、28都府県(注2) の、18年度1,140市区町村等、19年度1,125市区町村等を対象として、合規性、経済性等の観点から、財政調整交付金の交付額の算定に当たって退職被保険者等のそ及適用に伴う一般被保険者数の調整が的確に行われ、ひいては財政調整交付金の交付額が適切に算定されているかに着眼して検査を行った。そして、検査に当たっては、上記のうち301市区町村については会計実地検査を行い、それ以外の18年度839市区町村等、19年度824市区町村等については、それぞれの都府県を通じて調書の提出を受けるなどして検査を行った。

(注1)  平成16年度の決算検査報告は「国民健康保険における退職被保険者の適用の適正化を図るよう改善させたもの」、19年度の決算検査報告は「療養給付費負担金の交付額の算定を適切なものにするため、国民健康保険における退職被保険者の被扶養者の適用を的確に行うよう改善させたもの」である。
(注2)
 28都府県  東京都、京都、大阪両府、岩手、山形、福島、茨城、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、長野、静岡、愛知、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、徳島、香川、高知、福岡、長崎、宮崎、鹿児島各県

(検査の結果)

 検査したところ、平均一般被保険者数を算定するに当たって、各月末時点の一般被保険者数からそ及退職被保険者等の数を控除して一般被保険者数の調整を行うことは、前記のとおり説明書において示されているものの、調整の具体的な方法については、算定省令、通知、説明書及び事務連絡のいずれにおいても明記されていなかった。また、通知で定めている実績報告の様式上も、各月末時点の一般被保険者数を記載する欄が設けられているのみであり、各月の一般被保険者数から控除すべきそ及退職被保険者等の数の記載欄等は設けられていなかった。
 そこで、検査の対象とした市区町村等のうち、普通調整交付金の交付を受けていなかったなどの市町村を除いた18年度28都府県1,044市区町村等、19年度28都府県1,005市区町村等についてみたところ、18年度28都府県943市区町村等、19年度25都府県661市区町村等においては、一般被保険者数の調整を行っていなかった。これら市区町村等に交付された財政調整交付金は、18年度3924億7915万余円、19年度3207億8616万余円、計7132億6532万余円(普通調整交付金6059億7968万余円、特別調整交付金1072億8563万余円)となっていた。
 このように一般被保険者数からそ及退職被保険者等の数を控除する調整を行っていない場合、平均一般被保険者数が過大になることから、1人当たり調整対象需要額は過小となる。この結果、一部で調整対象収入額に変動のない場合もあるが、多くの場合は、調整対象収入額が過小となり、ひいては、普通調整交付金の交付額が過大に算定されることとなる。また、同様に平均一般被保険者数を算定要素としている一部の特別調整交付金についても、交付額が過大に算定されることがある。
 上記のことから、本院が、前記の各市区町村等の各年度におけるそ及退職被保険者等の数を調査して、これにより一般被保険者数の調整を行った場合の財政調整交付金の交付額への影響額を一定の条件に基づいて計算(注3) したところ、財政調整交付金は、18年度3906億7967万余円、19年度3197億2270万余円、計7104億0238万円となり、前記の交付額はこれに比べて、18年度17億9948万余円、19年度10億6345万余円、計28億6294万余円(普通調整交付金28億4110万余円、特別調整交付金2183万余円)が過大に算定される結果となっていた。

 計算に当たっては、各市町村から報告された前年度の2月1日以降当該年度の12月末日時点までに退職被保険者等の資格の適用があり、かつ、適用月の前月以前にさかのぼって資格を取得したそ及退職被保険者等の数で一般被保険者数を調整することとした。また、この調整に伴う所得限度額の異動の影響については考慮していない。

 また、財政調整交付金の交付額の算定に当たって、一般被保険者数の調整を実施しているとしていた市町村についてみても、一般被保険者数から控除すべきそ及退職被保険者等の数の把握方法等が市町村ごとに区々となっている状況であった。
 このように、多くの市町村において、一般被保険者数からそ及退職被保険者等の数を控除する調整が本来行われるべきであったのにそれが行われていなかったことにより財政調整交付金が過大に算定される結果となっているなどしている事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、通知等にそ及退職被保険者等の数を控除するための具体的な調整方法を明示していなかったこと、また、通知で定めている実績報告の様式においても、控除すべきそ及退職被保険者等の数を記載する欄を設けていなかったことなどによると認められた。