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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成21年10月

精液採取用種雄牛の貸付けに当たり、貸付けを無償とせず貸し付けた牛から生産される凍結精液の販売による収入に応じ対価を徴収するなどするとともに、貸付先の選定を競争により行うなどして増収を図るよう独立行政法人家畜改良センター理事長に対して改善の処置を要求したもの


2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、効率性等の観点から、貴法人が無償で行っている種畜の貸付けについて、貸付けを無償で行っているのは適切か、貸付先の選定方法は適切かなどに着眼して検査した。
 そして、貴法人が15年度から19年度までの間に貸し付けた貸付牛計31頭を対象として、貴法人本所において、貸付契約書、貸付牛名簿等の書類及び本院の求めに応じて貴法人に提出された事業団の財務諸表や凍結精液の販売状況等の資料を分析するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、貴法人は、前記のとおり、精液採取用種雄牛の貸付けについては、事業団に対して無償で行っているが、貸付牛に係る凍結精液の生産・販売に関する経理について報告させておらず、その販売実績を把握していなかった。
 そこで、事業団における貸付牛に係る凍結精液の販売状況について調査したところ、事業団は、貸付牛に係る凍結精液の販売価格を、時価を勘案して1本当たり1,000円から5,000円と設定しており、15年度から19年度までの販売実績は、15年度399,652本、11億6822万余円、16年度254,286本、5億9684万余円、17年度241,557本、4億3149万余円、18年度222,255本、4億6263万余円、19年度289,080本、7億1659万余円、計1,406,830本、33億7579万余円となっていた。
 このように、貴法人が貸付牛を事業団に無償で貸し付けている一方、事業団は、貸付牛の飼養管理や貸付牛に係る凍結精液の販売等の費用を負担しているものの、貴法人の費用で一定の段階まで育成された貸付牛に係る凍結精液の生産・販売を独占的に行って多額の販売収入を得ている。
 しかし、近年の状況をみると、事業団以外にも、インターネットを通じて保有種雄牛の情報を公開したり、問い合わせを受け付けたりなどして凍結精液の全国販売を行っている団体が見受けられるなど、凍結精液の生産、流通及び販売を取り巻く環境は変化している。このような状況の中で、貴法人は、独立行政法人に移行してからも、貸付先の選定方法について見直しを行うことなく、継続して事業団のみに対して無償で貸付けを行っていた。

(改善を必要とする事態)

 上記のように、精液採取用種雄牛の貸付先は事業団以外にもあると認められるのに、事業団のみが貸付けを無償で受け、貸付牛に係る凍結精液の生産・販売を独占的に行って多額の販売収入を得ていて、貸付牛を一定の段階まで育成し、所有している貴法人が貸付けの対価を得ていない事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、精液採取用種雄牛について、凍結精液の生産、流通及び販売を取り巻く環境の変化や、貸付牛に係る凍結精液の事業団における販売実績等について十分検討を行わないまま、過去の経緯から事業団に対して無償貸付けを継続してきたことなどによると認められる。