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  • 平成21年度|
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情報処理システム関係業務に係る請負契約において、契約相手方を決定する前に契約の対象となるべき業務の履行を開始させたり、契約の履行が完了する前に契約代金を支払ったりしていたもの


(1) 情報処理システム関係業務に係る請負契約において、契約相手方を決定する前に契約の対象となるべき業務の履行を開始させたり、契約の履行が完了する前に契約代金を支払ったりしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)参議院 (項)参議院
部局等 参議院
契約名 参議院情報ネットワーククライアントWindows Vista SP1他適用作業役務等11契約
契約の概要 参議院の職員用パソコンのセキュリティの維持等のために、各種ソフトウェアの導入作業を実施するものなど
契約の相手方 東芝ITサービス株式会社(平成19年度)
  東芝ITサービス株式会社、富士通株式会社(平成20年度)
契約 平成19年4月〜21年3月公募実施後の随意契約、随意契約
契約額
99,934,275円
(平成19、20両年度)

支払 平成19年8月〜21年3月
会計法令等に違背した会計事務手続により支払った金額
99,934,275円
(平成19、20両年度)

1 情報処理システム関係業務に係る調達及び会計事務手続の概要

(1) 情報処理システム関係業務に係る調達の概要

 参議院は、参議院の議員、秘書及び職員に電子メール、ウェブアクセス等のサービスを提供するLANシステムである参議院情報ネットワークシステム等、各種の情報処理システムを運用しており、その開発、改修等の情報処理システム関係業務(以下「システム関係業務」という。)を請負契約により多数実施している。
 システム関係業務は、庶務部文書課情報化推進室(以下「推進室」という。)が所掌しており、これらに係る請負契約は、推進室が、契約事務を所掌する同部会計課(以下「会計課」という。)に調達を依頼し、これに基づいて会計課が契約手続を行って、会計課長が支出負担行為担当官として契約を締結している。

(2) 契約等に関する会計法令等の規定等

 財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下「会計法令等」という。)により、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、原則として、各会計年度における経費は当該年度の歳入をもって支弁しなければならないとされている。また、国が契約を締結する際には、原則として一般競争に付することとされているが、契約の性質又は目的が競争を許さない場合等には随意契約によることができるとされており、支出負担行為担当官は、これらの契約方式により契約相手方を決定し、支出負担行為を行って契約を締結することとされている。そして、契約相手方を決定したときは、支出負担行為担当官は、原則として契約書を作成しなければならないとされている。
 契約が履行された際には、支出負担行為担当官は、自ら又は補助者として任命した検査職員に命じて、契約の履行の完了を確認するため必要な検査を行い、原則として、所定の検査調書を作成しなければならないとされていて、この検査調書に基づかなければ、当該契約の代金を支払うことができないなどとされている。そして、参議院では、システム関係業務に係る請負契約については、会計課の職員を検査職員として任命している。

(3) 公募実施の経緯

 公共調達の競争性及び透明性を担保するために財務省が定めた「公共調達の適正化について」(平成18年8月25日財計第2017号。以下「通達」という。)により、契約の履行に必要な特定の技術等を有する者が1者しかないことなどを理由に従来競争性のない随意契約を行ってきたものについては、一般競争に付すか又は随意契約によることとする場合には企画競争若しくは公募を行うことなどとされた。
 参議院では、通達に基づいて、システム関係業務に係る請負契約について、随意契約によるときは、平成20年11月から、契約ごとに情報化統括責任者(CIO)補佐官と推進室が協議を行い、その結果を踏まえて会計課が公募を行うことが可能と判断した契約について公募を行うこととしている。そして、公募の結果、参加意思を表明する業者がいる場合は企画競争を行った上で選定した業者と、いない場合は随意契約の締結を予定していた業者と、それぞれ随意契約を締結することとしている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、請負契約に係る会計事務手続が会計法令等に基づき適切に行われているかなどに着眼して、参議院において、19、20両年度に締結したシステム関係業務に係る請負契約計169件、契約金額計2,412,734,733円を対象として、契約書、仕様書、作業報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。なお、以下の事態において、3件(契約金額計35,196,000円)の契約が重複している。

ア 契約相手方を決定する前に契約の対象となるべき業務の履行を開始させていたもの

 契約相手方を決定する前に、システム関係業務を所掌する推進室が、随意契約の締結を予定していた業者に契約の対象となるべき業務の履行を開始させていたものが、19年度に1件、契約金額641,550円、20年度に6件、契約金額計67,684,050円あった。
 その内訳は、当年度中ではあるが、公募開始前に又は公募期間中に、契約の対象となるべき業務の履行を開始させていたものが、5件、契約金額計67,011,000円、前年度中から契約の対象となるべき業務の履行を開始させていたものが、2件、契約金額計1,314,600円となっていた。

イ 契約の履行が完了する前に契約代金を支払っていたもの

 契約の履行が完了していないのに、これを確認しないまま完了したとして事実と異なる検査調書を作成して、契約代金を支払っていたものが、20年度に7件、契約金額計66,804,675円あった。
 検査職員は、これらの契約について、契約の履行が契約書及び仕様書のとおり行われたことを確認したとする検査調書を作成していたが、自ら契約の履行の完了を確認しておらず、実際には契約の履行がまだ完了していなかったのに、契約書に定められた履行期限日直後の日付や契約相手方から請求書が提出された日付等を検査調書に記入していた。

 上記ア及びイのとおり、参議院におけるシステム関係業務に係る請負契約において、契約相手方を決定する前に契約の対象となるべき業務の履行を開始させたり、契約の履行が完了する前に契約代金を支払ったりしていたことは、会計法令等に違背しており、これらに係る契約金額計99,934,275円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、参議院において、システム関係業務に係る会計事務手続の執行に当たり、会計法令等を遵守することの認識が十分でなかったことなどによると認められる。