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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第4 内閣府|
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  • 不当事項|
  • 物件

花園院宸記コロタイプ複製製造契約において、関係者との間の費用の負担割合を誤ったなどのため、予定価格が過大となり契約額が割高となっていたもの


(5) 花園院宸記コロタイプ複製製造契約において、関係者との間の費用の負担割合を誤ったなどのため、予定価格が過大となり契約額が割高となっていたもの

所管、会計名及び科目 皇室費 一般会計 (組織)皇室費 (項)宮廷費
部局等 宮内庁
契約名 「花園院宸記第22巻」コロタイプ複製製造契約等6契約
契約の概要 花園院宸記の複製品を製造等するもの
契約の相手方 株式会社便利堂
契約 平成17年2月ほか 契約6件(随意契約3件、一般競争契約3件)
契約額
82,472,998円
(平成16年度〜21年度)

支払 平成17年3月ほか
割高となっていた契約額
800万円
(平成16年度〜21年度)

1 契約の概要等

 宮内庁は、皇室伝来の古文書である花園院宸記(はなぞのいんしんき)(花園天皇による日記で全35巻からなる。)が有する文化的価値を確実に後世に継承するなどのため、花園院宸記コロタイプ(注) 複製製造契約を、平成16年度から18年度までの間は随意契約により、19年度から21年度までの間は一般競争契約により、いずれも株式会社便利堂(以下「便利堂」という。)との間で締結している。
 宮内庁は、本件契約を締結するに当たり、宮内庁と同様に花園院宸記の複製品を製造発注する意向があったA社との間で発注内容等について協議を行って、A社は、毎年度宮内庁が発注する巻について、自らが必要とする部数を便利堂に発注している。
 本件契約に当たって、宮内庁は、毎年度、便利堂から製造工程ごとの単価等が記載された見積書を徴して、この単価を基にするなどして宮内庁とA社の発注部数の合計部数に係る製造等に要する費用の額を算定し、この額に宮内庁の発注部数の割合を乗ずるなどして予定価格を算定している。
 そして、宮内庁及びA社は、便利堂とそれぞれ別個に契約を締結していて、便利堂からの請求に基づきそれぞれ別個に代金の支払を行っている。

 コロタイプ  版にガラス板を使用する印刷技術で、多色刷りにより色彩の微妙なニュアンスや筆線の繊細さが原本同様に再現される印刷技術

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、16年度から21年度までの各年度に締結した契約(予定価格計85,731,471円、契約額計82,472,998円)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき本院に提出された証拠書類等により検査するとともに、宮内庁において、見積内訳明細書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。
 本件複製品の製造工程は、写真撮影、製版の製作、刷版の製作、印刷、仕立等からなっている。そして、この製造の各工程に要する費用には、製造部数の多寡にかかわらず必要となる固定費用と、製造部数の多寡に応じて増減する変動費用とがある。宮内庁は、16年度の契約に当たって、宮内庁の発注予定部数が100部であったのに対しA社の発注予定部数が55部であったことから、宮内庁及びA社に便利堂を加えた三者で協議した結果、製造工程に要する費用の性質に応じて、写真撮影、紙焼の作成、製版の製作及びテスト校正に要する費用は固定費用であるとして宮内庁及びA社が折半して負担する一方で、その他の費用は変動費用であるとして宮内庁及びA社がそれぞれの発注部数に応じて案分して負担する旨を合意していた。そして、宮内庁は、17年度から21年度の契約(各年度の発注部数は、宮内庁、A社ともに16年度と同じ。)においても、この合意に基づき費用を負担することとしていた。
 しかし、宮内庁は、本件契約に係る予定価格の積算に当たり、上記の合意に基づき固定費用については両者で折半して負担することとすべきであったのに、両者の発注部数に応じた案分により負担することとして過大に算定するなどしていた。
 したがって、本件契約の予定価格を適正な費用負担の割合によるなどして修正計算すると、他の項目において積算過小となっていた費用を考慮しても計74,461,725円となり、本件契約額計82,472,998円はこれに比べて約800万円が割高となっていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、宮内庁において、本件契約の予定価格の積算における審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。