情報通信格差是正事業費補助金等は、地域における情報基盤を整備して高度情報化社会の均衡ある発展を図るために、次の事業を実施する事業主体に対して施設や設備の整備に要する経費の一部について交付されるものである。
ア 地域公共ネットワーク基盤整備事業(地域情報通信ネットワーク基盤整備事業費補助金)及び地域イントラネット基盤施設整備事業(情報通信格差是正事業費補助金)
これらの補助事業は、光ファイバケーブル(以下「光ケーブル」という。)等から成る伝送施設、送受信装置等を整備して、地域における公共施設等を結ぶ情報通信ネットワーク(以下「地域公共ネットワーク」という。)を構築するものである。そして、これらの補助事業においては、地域公共ネットワークに必要な光ファイバの心数とケーブルテレビ事業者及び通信事業者(以下「ケーブルテレビ事業者等」という。)に開放するために必要な光ファイバ(以下「光ケーブル開放予定部分」という。)の心数とを合わせた心数の光ケーブルを整備することができ、光ケーブル開放予定部分については、補助事業の完了後できるだけ早期に開放し、利用を開始させることとなっている。
イ 地域情報通信基盤整備推進交付金事業(地域情報通信基盤整備推進交付金)
この交付金事業は、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)に基づき過疎地域に指定されている地域等における情報格差の是正を図るために必要となるセンター施設、光ケーブル等から成る線路設備、送受信装置等を整備するものである。
本院が総務省、60市町村等において会計実地検査を行ったところ、3事業主体において次のとおり適切でない事態が見受けられた。
補助事業者等
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補助事業等
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年度
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補助対象事業費等
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める補助対象事業費等
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不当と認める国庫補助金等相当額
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摘要
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千円
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千円
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千円
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千円
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(38)
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石川県小松市(事業主体)
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地域公共ネットワーク基盤整備、地域イントラネット基盤施設整備
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16、17
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296,541
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98,847
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27,028
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9,010
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計画不適切
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これらの補助事業は、小松市が、映像コミュニケーションシステム等を構築するために市役所と公民館、小中学校等の公共施設を接続する地域公共ネットワークを整備するとともに、ケーブルテレビ事業者に平成19年度を目途にケーブルテレビサービスを提供させることを目的として、地域公共ネットワークに必要な光ファイバの心数と光ケーブル開放予定部分の心数とを合わせた心数の光ケーブル等から成る伝送施設等を整備したものである。
しかし、同市は、ケーブルテレビ事業者と十分協議をしないまま本件補助事業の事業計画を策定して事業を実施したため、光ケーブル開放予定部分を整備した地域は、ケーブルテレビ事業者にとって人口の増加が見込まれないなど採算がとれないと見込んだ地区であったり、ケーブルテレビ事業者により伝送施設が既に整備された地区であったりしていて、光ケーブル開放予定部分が開放されず全く利用されていない状況となっていた。
したがって、同市が自らケーブルテレビ事業者になり利用するとした部分を除いた光ケーブル開放予定部分(整備費相当額計27,028,214円)は事業計画が適切でなかったため利用されておらず、これに係る国庫補助金相当額計9,010,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市においてケーブルテレビ事業者と光ケーブル開放予定部分を利用することについて十分協議をした上で事業計画を策定することの重要性に対する認識が十分でなかったこと、総務省において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(39)
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和歌山県西牟婁(にしむろ)郡白浜町(事業主体)
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地域イントラネット基盤施設整備
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18
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312,930
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156,465
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37,744
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18,873
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計画不適切補助の対象外
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この補助事業は、白浜町が、行政、防災、生涯学習等の行政情報提供システム等を構築するために町役場と公民館、小中学校等の公共施設を接続する地域公共ネットワークを整備するとともに、ケーブルテレビサービス等を開始することを目的として、地域公共ネットワークに必要な光ファイバの心数と光ケーブル開放予定部分の心数とを合わせた心数の光ケーブル等から成る伝送施設等を整備したものである。
しかし、同町は、光ケーブル開放予定部分の利用計画を明確に策定しないまま光ケーブル開放予定部分の心数を地域公共ネットワークに必要な心数とほぼ同数とする事業計画を策定し、その後も、公募により決定したケーブルテレビ事業者等の光ケーブル開放予定部分の具体的な利用計画を徴しないまま同事業計画に基づいて光ケーブルを敷設したため、光ケーブル開放予定部分の一部等が利用されていなかった。また、同町は、公共施設以外の施設等に接続されることになる光ケーブルの整備費を誤って補助対象経費に含めていた。
したがって、光ケーブル開放予定部分のうちの利用されていない一部等及び公共施設以外の施設等に接続される光ケーブル等それぞれに係る整備費相当額32,562,416円及び5,182,487円、計37,744,903円、これらに係る国庫補助金相当額計18,873,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、ケーブルテレビ事業者等から光ケーブル開放予定部分の具体的な利用計画を徴することなどの重要性に対する認識が十分でなかったこと、また、本件補助事業に対する補助対象経費の確認が十分でなかったこと、総務省において同町に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(40)
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山口県長門市(事業主体)
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地域情報通信基盤整備推進交付金
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19
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534,787
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178,262
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8,413
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2,804
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契約処置不適切
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この交付金事業は、長門市が、同市の旧三隅町地区の住民に地上デジタルテレビ放送の再送信等を行うために、線路設備を同軸ケーブルから光ケーブルに更新する工事を実施するなどしたものである。そして、同市は、民間通信事業者所有の電柱63本(コンクリート製、長さ約12mから17m、重量約900kgから2,740kg)を建て替えることにより更新工事を行うこととしていたが、建て替えでは工期が間に合わないことから、上記の電柱よりも小さな電柱63本(鋼管製、長さ約9m、重量約75kg又は約101kg)を新たに建柱していた。
しかし、同市は、上記のとおり更新工事の内容が変更されていたのに、設計図書の変更をせず、請負代金の変更をしないまま当初契約の請負代金を支払っていた。
したがって、適正な交付対象事業費は、光ケーブル等の敷設に係る経費の計上誤りなどを考慮しても526,374,075円となり、交付対象事業費534,787,325円との差額8,413,250円に係る交付金相当額2,804,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において工事内容を変更した場合の設計図書の変更及び請負代金の変更についての認識が十分でなかったこと、総務省において同市に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(38)—(40)の計
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1,144,259
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433,574
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73,186
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30,687
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