会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)総務本省 | (項)総務本省 |
(項)沖縄特別振興対策事業費 | |||
部局等 | 総務本省 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 | 道県10、市8、町3、村1(うち事業主体、市3、町3、村1) | ||
間接補助事業者(事業主体) | 市17、町3、村2(うち事業主体、市2、町2、村1) | ||
第三セクター19(事業主体) | |||
補助事業等 | 地域情報通信基盤整備推進交付金、電気通信格差是正、沖縄特別振興対策 | ||
補助事業等の概要 | 地域における高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、高度情報通信ネットワーク等先導的な情報通信基盤の施設等を整備するもの | ||
利用率が低調な情報通信設備の事業数 | 37事業 | ||
上記に係る事業費 | 93億9445万余円
(平成14年度〜19年度)
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上記に対する国庫補助金交付額 | 26億6754万円
(背景金額)
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(平成22年10月22日付け 総務大臣あて)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
貴省は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)等に基づき、高速、大容量のデータ通信が可能なブロードバンドに係る情報通信基盤の整備を、民間主導原則の下に国庫補助事業により進展させてきている。そして、貴省が毎年実施している「通信利用動向調査」によると、調査世帯のうち過去1年間にブロードバンド回線の中のケーブルテレビ回線、光回線及び固定無線回線を利用したサービス(以下「ブロードバンドサービス」という。)によりインターネットを利用したことがある世帯の割合(以下「全国BB利用率」という。)は、平成19年度末37.1%、20年度末45.4%、21年度末49.8%となっている。
また、貴省は、国庫補助金を交付して、第三セクターや市町村等が行う地域の住民に有線で映像情報を提供するサービス(以下「ケーブルテレビサービス」という。)等に必要となる施設及び設備の整備も推進している。そして、貴省が毎年取りまとめている「ケーブルテレビの現状」によると、全国の住民基本台帳世帯数に対するケーブルテレビ加入世帯数の割合(以下「全国CATV利用率」という。)は、19年度末41.9%、20年度末43.5%、21年度末46.2%となっている。
貴省は、地域における情報通信基盤を整備し高度情報化社会の均衡ある発展を図るため、地域情報通信基盤整備推進交付金事業、電気通信格差是正事業等の補助事業等を行う都道府県、市町村等に対し、その事業に要する経費の一部として、21年度までに、地域情報通信基盤整備推進交付金、電気通信格差是正事業費補助金等の補助金を交付している。そして、補助金の交付を受けて事業主体が実施する事業のうち、ブロードバンドサービスやケーブルテレビサービス(以下、これらを合わせて「ブロードバンドサービス等」という。)の提供に必要な光ファイバケーブル等からなる線路設備等(以下「情報通信設備」という。)の整備に係る事業として、地域情報通信基盤整備推進交付金事業、新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業、離島ブロードバンド環境整備事業及び北部広域ネットワーク整備事業の4補助事業がある。
これらの補助事業の実施や事業完了後の運用体制については、「補助事業等の適正執行に関する手引き」(平成19年7月総務省策定)等によると、次のようになっている。
ア 事業主体は、補助事業の実施に先立ち、原則として事業実施前に当該事業の整備によってブロードバンドサービス等を利用することが可能となる世帯や事業所等(以下「利用可能者」という。)の意向を調査した上で整備計画を立てること
イ 事業完了後、ブロードバンドサービス等の利用状況について、定期的に申請時に掲げた利用目標等と比較検討し、利用率が低調な場合、その原因を分析し、利用率向上のための対応策を実施すること
本院は、経済性、有効性等の観点から、補助金により整備した情報通信設備は有効に利用されているか、利用が低調な事業において加入促進活動は十分に実施されているかなどに着眼して、13道県(注) における91事業主体が14年度から20年度までの間に実施した139事業(補助対象事業費計463億7301万余円、国庫補助金計148億4172万余円)を対象に、交付申請書、実績報告書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
上記の139事業のうち、ブロードバンドサービスを提供している事業は135事業、ケーブルテレビサービスを提供している事業は121事業となっている。
そして、ブロードバンドサービス等の利用可能者の数に対して、実際に当該サービスを利用している世帯や事業所等(以下「利用者」という。)の数の割合(以下「利用率」という。)は、21年度末において、次表のとおりとなっていた。
表 ブロードバンドサービス等の利用率(平成21年度末)
(単位:事業、%)
利用率
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10%未満
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10%以上30%未満
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30%以上50%未満
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50%以上70%未満
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70%以上
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計
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139事業の平均利用率
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全国利用率
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ブロードバンドサービス
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29
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79
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20
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2
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5
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135
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17.0
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49.8
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128
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ケーブルテレビサービス
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4
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18
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21
|
10
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68
|
121
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52.0
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46.2
|
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42
|
ブロードバンドサービスを提供している135事業における同サービスの平均利用率は17.0%となっていて全国BB利用率の49.8%を大きく下回っており、このうち29事業は利用率が10%未満と著しく低調となっていた。
また、ケーブルテレビサービスを提供している121事業における同サービスの平均利用率は52.0%となっていて全国CATV利用率の46.2%を若干上回っていたが、121事業のうち42事業は全国CATV利用率を下回っており、このうち4事業は利用率が10%未満と著しく低調となっていた。
以上のように利用率が全般的に低調となっている結果、前記の139事業における21年度末の利用者1件当たりの平均国庫補助金相当額は、利用可能者1件当たりの平均国庫補助金相当額(約24,000円)の約1.9倍(約45,000円)となっており、利用率の最も低い事業においては約9,639,000円と著しく高額となっていた。
ブロードバンドサービスの19年度末から21年度末までの各年度末の利用率についてみると、いずれの年も前記の全国BB利用率を大きく下回っており、19年度末から21年度末までの間の利用率の伸びも3.2ポイントと、全国BB利用率の伸び12.7ポイントを大きく下回っていた。
また、ケーブルテレビサービスの各年度末の利用率は、前記の全国CATV利用率をいずれも約5ポイント上回っていた。そして、2年間の利用率の伸びは4.5ポイントであり、全国CATV利用率の伸び4.3ポイントと同程度となっていた(次図参照)。
図 利用率と全国BB利用率及び全国CATV利用率の過去3年間の推移
前記の139事業のうち、毎年度、利用率が全国BB利用率及び全国CATV利用率(以下「全国BB利用率等」という。)を下回っていた事業は52事業あり、このうち、20年度末から21年度末までの利用率の伸びが全国BB利用率の伸び(4.4ポイント)及び全国CATV利用率の伸び(2.7ポイント)を下回っている事業が37事業(補助対象事業費計93億9445万余円、国庫補助金計26億6754万余円)見受けられた。これら37事業は、利用率が継続して低調であり、情報通信設備が十分に利用されていないまま推移していると認められた。
そして、上記の37事業を実施した事業主体では、利用率が低調な主な原因について、当該事業の実施地域において、高齢者が多かったり、他の通信事業者がブロードバンドサービス等を提供していたり、実施地域が地上波テレビ放送を個別に受信できない地域の少ない地域であったりすることなどを挙げていた。
また、複数の第三セクターでは、当該第三セクターの全サービス提供地域における利用率が営業上の目標値を満たす水準であったことなどから、利用率が低調となっている当該事業の実施地域における加入促進活動を積極的に行っていないとのことであった。
Aケーブルテレビ会社は、平成14年度に補助事業により、情報通信設備の整備を補助対象事業費68,000,000円(国庫補助金17,000,000円)で実施していた。しかし、補助事業完了から7年が経過した21年度末においても、ケーブルテレビサービスへの加入が進まず、利用可能者2,440件に対して利用者は53件(利用率2.1%)と利用率が著しく低調となっていたのに、同社は積極的な加入促進活動を行っていなかった。
これらのことが背景となって、利用率の低調な事業が多数生じていると認められた。
利用率が全国BB利用率等を上回っている補助事業の事業主体では、利用可能者に対してブロードバンドサービス等の加入促進活動を積極的かつ継続的に行っていたり、提供するサービス内容の多様化や利用料金の低廉化を図って利用可能者への需要を喚起したりなどしていた。
B県は、平成18年度に補助事業により、情報通信設備の整備を補助対象事業費214,600,000円(国庫補助金171,680,000円)で実施していた。そして、同県は、補助事業完了後、利用率の向上を図るための加入促進活動が重要であるとして、事業実施地域の町村やサービス提供事業者にIT講習会等の開催を促したり、自治体の防災無線による広報活動を積極的に実施させたりして、19年度に利用者を約320件、利用率を12.6ポイント増加させていた。また、同県は事業を実施した地域の町村を対象に加入促進活動の実施状況についてモニタリングを行い加入促進活動の参考としていた。
貴省は、前記のとおり、補助事業完了後、事業主体は、定期的に申請時に掲げた利用目標等と比較検討し、利用率が低調な場合、その原因を分析し、利用率向上のための対応策を実施することとしている。
しかし、事業主体は、補助事業における地域の利用率を把握していたが、その利用率の利用目標等との比較検討や、利用率が低調な原因の分析を行っておらず、利用率向上のための対応策を実施していないものが多数見受けられた。また、貴省は、補助事業における地域の利用率等を十分に把握していなかったため、前記のように多数の補助事業において利用率が低調となっている実態を把握しておらず、事業主体に対して、原因の分析、利用率向上に向けた対応策の実施を十分に指導していない状況となっていた。
補助事業の実施地域は、民間事業者によるブロードバンドサービス等の提供が進みにくいことから、公的な事業主体によって情報通信設備の整備が実施された地域であり、補助事業の実施当初から高い利用率を期待し難い面もある。
しかし、補助事業により整備された情報通信設備には、多額の国費が投入されてきていることなどから、利用可能者がブロードバンドサービス等の利便性を享受できるようその利用率を一層向上させることが重要となる。
したがって、情報通信設備が十分に利用されていないまま、利用率が継続して低調となっているにもかかわらず、原因の分析、利用率向上のための対応策の実施を十分行っていない事業主体が多数見受けられる事態は、当該情報通信設備が国庫補助金により整備されたものであることなどを考慮すると適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、主として次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において、事業完了後の利用率が低調である原因の分析や利用率向上のための対応策の実施を十分に行っていなかったこと
イ 貴省において、事業主体に対して、事業完了後、利用率が低調な原因を分析し、利用率向上のための加入促進対策を講じるよう指導するなど実効のある措置を執っていなかったこと
情報格差を是正し、地域の活性化を図るためには、民間事業者によるブロードバンドサービス等の提供が進みにくい地域の住民がブロードバンドサービス等の利便性を享受することが重要であり、国庫補助金により整備した情報通信設備について、利用者の需要を喚起するための加入促進活動を積極的に行わせることなどにより、利用率を一層向上させることが肝要である。
ついては、貴省において、利用率が低調な補助事業について、次のような処置を講ずるなどして、事業の効果が十分に発現されるよう情報通信設備の利用率の一層の向上を図り、もって利用可能者がブロードバンドサービス等の利便性を享受することができるよう意見を表示する。
ア 事業主体に、補助事業における地域の利用率を調査し、利用率が低調な原因等を分析し、加入促進対策を講じるなど、利用率の向上のための適切な対応策を講じさせること
イ 他の事業主体の加入促進活動の実施状況に係る情報を提供するなどして、加入を一層促進させるよう指導すること