ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 法務省|
  • 不当事項|
  • 予算経理(67)—(84)

刑務所の常勤医師が正規の勤務時間中に兼業を行っているのに、これにより勤務しなかった時間に係る給与を減額することなく給与を支給していたもの


(67) 刑務所の常勤医師が正規の勤務時間中に兼業を行っているのに、これにより勤務しなかった時間に係る給与を減額することなく給与を支給していたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)矯正官署 (項))矯正官署共通費
  (平成19年度以前は、(項)矯正官署)
部局等 宮崎刑務所
常勤医師の給与の概要 常勤医師に対して支給される俸給及び諸手当
常勤医師に対して支給された給与の総額 80,135,929円(平成17年1月〜22年6月)
上記のうち減額すべきであった給与額及び勤勉手当額の合計 3,351,242円

1 常勤医師の勤務の概要

(1) 常勤医師の給与等の概要

ア 常勤医師の配置

 宮崎刑務所では、刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規則(平成13年法務省令第3号) により、保健、衛生、防疫、医療及び薬剤に関する事務を所掌する医務課が設置され、 同課に常勤で勤務する医師(以下「常勤医師」という。)が配置されている。

イ 常勤医師の給与

 常勤医師には、国家公務員法(昭和22年法律第120号。以下「公務員法」という。)、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)及び一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号)等が適用され、同刑務所は、常勤医師の勤務時間の管理等を行い、また、所定の給与を支給している。
 公務員法では、一般職の国家公務員である職員は、勤務時間中職務に専念しなければならないこととされており、給与法により、休日である場合又は休暇による場合その他その勤務しないことにつき特に承認があった場合等を除いて正規の勤務時間中に勤務しなかった時間(以下、単に「勤務しなかった時間」という。)は、給与を減額して支給することとされている。
 この減額する給与額は、給与法等によると、勤務しなかった時間数に勤務1時間当たりの給与額を乗じて得た額とされている。
 また、職員に支給される勤勉手当は、給与法等によると、当該職員の俸給の月額等に勤務期間(注) による割合(以下「期間率」という。)を乗ずるなどして算出することとされており、この期間率は、勤務期間に応じて0から100/100の割合とされている。

 勤務期間  勤務期間勤勉手当支給の基準日となる6月1日及び12月1日以前の6か月以内の期間において、給与法の適用を受ける職員として在職した期間から給与法により給与を減額された期間等を除算した期間

(2) 兼業の許可の手続

 公務員法第104条は、「職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。」と規定している。
 この兼業の許可に係る申請は、職員の兼業の許可に関する内閣府令(昭和41年総理府令第5号)等により定められた兼業許可申請書を職員が提出することとなっており、また、兼業の許可については、特別の利害関係がなく、又はその発生のおそれがなく、かつ、職務の遂行に支障がないと認めるときに限り許可することができるなどとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、常勤医師の給与は適正に算定されているか、常勤医師が兼業する場合の許可の手続は適正に行われているかなどに着眼して、給与の支給の事実が確認できる職員別給与簿が保存されている平成17年1月から21年12月までの間に常勤医師に支給された給与の総額72,905,545円を対象として、宮崎刑務所において、出勤簿、休暇簿、職員別給与簿等を確認したり、常勤医師から説明を聴取したりなどして、会計実地検査を行った。さらに、22年1月から6月までの間に支給された給与の総額7,230,3847円についても、その後同刑務所に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、常勤医師は、兼業の許可を得ることなく、民間等の2医療機関(以下「医療機関」という。)において、17年1月から22年1月までの間の延べ273日の正規の勤務時間中に、おおむね各日2時間程度、報酬を得て検診、手術等の医療業務に従事していた。そして、常勤医師が同刑務所で勤務しなかった時間数は、医療機関において従事した時間514時間15分及び移動に要した時間243時間の計757時間15分となっていた。
 したがって、勤務しなかった時間数計757時間15分については、月ごとの勤務しなかった時間数(端数処理後、1時間から43時間)にそれぞれの月ごとの勤務1時間当たりの給与額(3,838円から4,106円)を乗じた額の合計3,017,802円の給与額を減額すべきであった。
 また、勤務しなかった時間については、勤務期間の算定上、給与法により給与を減額される期間となり在職した期間から除算されることから、勤勉手当の算出基礎となる期間率は当初の100/100の割合から90/100又は95/100の割合に下がることとなり、17年6月から22年6月までの間の勤勉手当額を計333,440円減額すべきであった。
 したがって、上記のとおり、常勤医師が正規の勤務時間中に医療機関で報酬を得て医療業務に従事していたのに、宮崎刑務所は常勤医師に同刑務所で勤務しなかった時間に係る給与額及び勤勉手当額計3,351,242円を減額することなく給与を支給していて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、常勤医師において、国家公務員の服務を遵守することの認識が欠けていたこと、また、宮崎刑務所において、兼業の許可の手続を遵守するように十分な指導を行っていなかったこと、勤務時間の管理等が適切に行われておらず、実際の勤務時間を把握していなかったことなどによると認められる。