会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)外務本省 | (項)外務本省 |
(項)地域別外交費 | |||
(項)分野別外交費 | |||
(項)広報文化交流及報道対策費 | |||
(項)経済協力費 | |||
部局等 | 外務本省 | ||
契約の概要 | 外務本省の所管事務に関する調査・研究等の実施 | ||
契約の相手方 | 14公益法人 | ||
契約 | 平成18年4月〜21年2月 一般競争契約、随意契約 | ||
支払額 | 40億2798万余円(平成18年度〜20年度) | ||
(1)低減できた出向者に係る人件費の額 | 4854万円(平成18年度〜20年度) | ||
(2)従事実績の確認ができない人件費の額 | 5億9510万円(背景金額)(平成18年度〜20年度) |
外務本省は、毎年度、多数の調査・研究の事業等を委託契約等により公益法人(注1)
に行わせている。この委託契約等の中には、概算額で契約を締結し、事業完了後に、実際に事業の実施に要した経費(以下「実績金額」という。)により精算する旨の条件を付しているものがあり、このような契約については、外務本省があらかじめ定めた基準額と、実績金額とを比較して、いずれか低い額を支払額とすることとしている(以下、このような契約を「精算条項付契約」といい、この契約に基づいて実施する調査・研究等の事業を「委託事業等」という。)。そして、実績金額のうち人件費は、従事者の1日又は1時間当たりの人件費単価に、従事実績(日数又は時間数)を乗じて従事者ごとの人件費を算出し、これらを合算して算定している。
外務本省は、精算条項付契約において、契約先に、当該委託事業等に係る支出を明らかにした帳簿及び証拠書類等を整備・保管させることとしていて、これにより他の業務の会計経理と区分して当該契約の精算を行うことにしている。
本院は、委託契約等により国から多額の支出を受けている公益法人もあることなどを踏まえて、経済性等の観点から、外務本省が公益法人に行わせている委託事業等について、人件費が事業の従事者に対する給与支給等の実態を反映したものとなっているか、証拠書類等による従事実績の確認を経て適切に人件費の精算が行われているかなどに着眼して検査を実施した。
検査に当たっては、外務本省において、平成20年度に14公益法人と締結した精算条項付契約33件、支払額計17億3783万余円について、精算報告書等の書類を徴するなどして会計実地検査を行うとともに、上記の14公益法人のうち4公益法人及び外務本省において、18年度から20年度までに同4公益法人と外務本省との間で締結された精算条項付契約計45件、支払額計33億7495万余円について、会計帳簿やその証拠書類等により実地に検査し、合計66件、支払額合計40億2798万余円(注2)
の委託事業等について検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
人件費単価については、契約先の多くが、正職員の給与等の額を基に職階等に応じた日単価又は時間単価を定めており(以下、この単価を「受託単価」という。)、受託単価を委託事業等における従事者の人件費単価としている。しかし、契約先が給与等の全部又は一部を負担していない他の法人からの出向者を委託事業等に従事させている場合には、受託単価をそのまま精算時に人件費単価として適用すると、当該契約は契約先が実際に負担している人件費を上回る額で精算されることになる。
前記の4公益法人に係る精算条項付契約計45件を検査したところ、8件(2公益法人(注3)
)の契約において、当該委託事業等の従事者の中に契約先が給与等の全部又は一部を負担していない出向者が含まれていた。
しかし、外務本省は、このような場合の人件費単価の算出方法を具体的に定めていなかった。このため、契約先が実際に負担した給与等の額を反映して算出した人件費単価(以下「実単価」という。)を大幅に上回る受託単価がそのまま適用されて精算が行われていた。
そこで、上記の出向者に係る人件費計7191万余円について、実単価により修正計算(注4)
すると計2336万余円となり、計4854万余円が低減できたと認められた。
精算条項付契約に係る精算においては、当該委託事業等に係る支出を明らかにした帳簿及び証拠書類等により、実績金額を確認することが求められている。人件費については、前記のとおり、人件費単価に当該事業に係る従事実績を乗じて算出しているため、賃金台帳等の証拠書類等による確認に加えて、従事者ごとの当該事業に係る従事実績と他の業務に係る従事実績との区分を明確にした業務日誌等の証拠書類等に基づき、当該事業に係る従事実績を確認する必要がある。
しかし、外務本省は、前記の計66件のすべての契約で、契約先において業務日誌等を整備することを契約書等で義務付けていなかった。そして、このうち、18件(7公益法人(注5)
)の精算条項付契約(支払額計25億4453万余円、うち他の業務にも従事している従事者の人件費計5億9510万余円)においては、当該委託業務等の従事者の中に、契約期間中に他の業務にも従事していた者が含まれていたが、業務日誌等が作成されていないため、当該委託事業等に係る従事実績と他の業務の従事実績との区分が明確にされないまま、精算報告書等に記載された従事実績に基づいて人件費の精算が行われていた。
上記(1)及び(2)のとおり、人件費の算定において従事者に対する給与支給等の実態を反映していない人件費単価を適用して精算が行われたり、業務日誌等の証拠書類等による従事実績の確認ができないまま精算が行われたりしている事態は適切でなく、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、外務本省において、委託事業等の従事者が出向者である場合の人件費の算定方法や、人件費の算定の根拠となる従事実績に係る証拠書類等の整備方法を具体的に定めていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、外務本省は、22年9月に、精算条項付契約における人件費の算定が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
ア 精算条項付契約について、委託事業等の従事者が出向者等である場合の人件費単価の算出方法及び人件費の算定の根拠となる従事実績に係る証拠書類等の整備方法を示したマニュアル等を策定した。
イ 外務本省内に事務連絡を発して、上記のマニュアルを入札の公募時等に競争参加者等に対して周知することとした。