会計名及び科目 | 一般会計 (組織)外務本省 (項)地域別外交費 |
(平成19年度以前は、(項)外務本省) | |
部局等 | 外務本省 |
補助の根拠 | 予算補助 |
補助事業者 (事業主体) |
財団法人交流協会 |
補助事業 | 交流協会補助 |
補助事業の概要 | 財団法人交流協会本部及び在外事務所における事務運営等のための経 費について補助するもの |
取り崩す可能性が極めて低い給与税金引当金 | 1億5336万余円(平成21年度末) |
上記のうち外務省が交付した国庫補助金相当額 | 1億3510万円 |
財団法人交流協会(以下「協会」という。)は、昭和47年に台湾の在留邦人、旅行者等に各種の便宜を図ること、我が国と台湾との間の民間の貿易、経済、技術交流等の諸関係が支障なく維持、遂行されるよう必要な調査を行うことなどを目的として設立された法人である。協会は、東京に本部を置くほか、台湾の台北及び高雄にそれぞれ在外事務所を置いており、両在外事務所には、我が国から赴任した職員(以下「在外職員」という。)のほか、現地採用の職員が勤務している。
外務省は、交流協会補助金交付要綱に基づき、協会に対して、本部及び在外事務所における事務運営等の経費を補助するために交流協会補助金を交付し、同補助金の実績報告書の添付資料として決算書の提出を義務付けている。また、経済産業省(平成13年1月5日以前は通商産業省)は、交流協会事業費補助金交付要綱に基づき、協会に対して、我が国と台湾との間の貿易経済の円滑な発展に資するのに必要な経費を補助するために交流協会事業費補助金を交付しており、同補助金の交付申請の際に資産及び負債に関する事項を記載した書面の提出を義務付けて貸借対照表の提出を受けている。そして、協会は、業務の内容に応じて、これらの補助金のいずれかを財源にして職員に給与を支給している。
協会が在外職員給与規程(昭和48年交流協会規程第9号)に基づき在外職員に支給する給与には、在勤本俸(注1)
、住居手当等の台湾において米ドルで支給するものと、在勤加俸(注2)
、期末手当及び扶養手当の国内給とがある。このうち、国内給に対しては、所得税法(昭和40年法律第33号)の規定により、我が国の所得税が課されているが、在勤本俸、住居手当等に対しては、我が国の所得税は課されていない。また、台湾当局からも在外職員のこれらの給与に対して租税は課されていない。
本院は、有効性等の観点から、外務、経済産業両省(以下「両省」という。)が協会に交付した補助金が補助の目的に沿った効果を上げているかなどに着眼して、外務本省及び協会本部において協会の決算書等により会計実地検査を行うとともに、経済産業本省から関係書類の提出を受けるなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
協会は、在外職員給与規程により、台湾当局が在外職員の給与に対して租税を課することにしたときは、当該在外職員に、その租税の額に相当する額(以下「租税相当額」という。)を支給することとしている。そして、協会は、租税相当額を支給するときに備えて、昭和47年度から56年度までの間の毎年度に、両省の前記補助金を財源にして、在外職員に支給した在勤本俸、住居手当等の10%程度の額を給与税金引当金として引き当てていた。そして、協会が、47年度決算以降、毎年度の決算で貸借対照表の固定負債の部に計上してきた給与税金引当金の累計額は、平成21年度決算で153,364,737円(外務省分135,105,989円、経済産業省分18,258,748円)に上っていた。
一方、協会設立の昭和47年から現在まで、台湾当局が協会の在外職員の給与に対して租税を課して、協会が給与税金引当金を取り崩して在外職員に租税相当額として支給し、在外職員が納税したことはなかった。そして、台湾の租税関係法規によれば、台湾当局が租税をそ及して課することができるのは最長7年前までであることから、8年以上前の在外職員の給与に課税されることはないと認められる。また、今後も含め7年前以降の在外職員の給与についても、これまで課税されてこなかったことや現在の協会と台湾当局との関係等からみて、台湾当局が課税する可能性は極めて低いと認められる。
したがって、協会が、前記補助金を財源にして引き当てていた給与税金引当金について、これを取り崩して在外職員に租税相当額として支給して、在外職員が納税することになる可能性が極めて低いにもかかわらず、貸借対照表に固定負債として長期間計上するとともにこれに見合う資金を長期間にわたって保有している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、協会において、在外職員の給与に対して租税が課される可能性についての検討が十分でなかったことにもよるが、両省において、協会が補助金を財源にして引き当てた給与税金引当金が取崩しのないまま長期間にわたって貸借対照表に計上されているのに、給与税金引当金を計上することの必要性について十分に検討しなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、両省は、給与税金引当金、外務省分135,105,989円、経済産業省分18,258,748円、計153,364,737円について、平成22年9月に、協会に対して、これを取り崩して国庫に返納するよう求める処置を講じ、同月及び10月に、協会から返納を受けた。