会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)在外公館(項)在外公館共通費 |
部局等 | 外務本省 | |
赴任旅費の概要 | 職員が赴任する際に支給する旅費 | |
赴任旅費のうち支給した航空賃 | 2,349件 | 19億1731万余円(平成21年度) |
旅費法で原則エコノミークラスの運賃を支給することとされている職員に支給された本邦からの赴任に係る航空賃 | 337件 | 4億0606万余円(平成21年度) |
節減できた航空賃 | 321件 | 9601万円(平成21年度) |
外務省は、諸外国において相手国政府との交渉、邦人保護等の事務を行うため、職員を各国に所在する大使館、総領事館及び政府代表部(以下、これらを合わせて「在外公館」という。)へ本邦や他の在外公館から転任させたり、在外公館から本邦へ帰任させたりしている(以下、これらの転任及び帰任を合わせて「赴任」という。)。そして、赴任を命じた職員に対して、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号。以下「旅費法」という。)に基づき、当該職員とその同伴家族の旅費(以下「赴任旅費」という。)として航空賃等を支給している。外務省が支給する赴任旅費は、毎年度多額に上っており、平成21年度は延べ2,349人の職員に対して計37億0987万余円(同伴家族の分を含む。)が支給されており、このうち航空賃は、計19億1731万余円であった。
旅費法によると、職員に支給する航空賃の額は、航空会社が設定している運賃の等級区分、職員の職務等により定められている。これによれば、11年度以前は、航空会社が設定している運賃の等級が三つに区分されている場合には、指定職の職務にある者等は最上級(ファーストクラス)の、それ以外の職員はすべて最上級の直近下位の級(ビジネスクラス)の運賃とされていた。しかし、12年3月に旅費法が改正されて、12年度以降は、次表のとおりとされた。
対象となる職員 | 航空賃(利用クラス) | |
航空賃の等級が三つ以上に区分されている場合 | 航空賃の等級が二つに区分されている場合 | |
〔1〕 指定職の職務にある者のう ちの一部の者等 | 最上級(ファーストクラス)の運賃 | 上級(ビジネスクラス)の運賃 |
〔2〕 7級以上の職務にある者、長時間航空路による旅行をする6級又は5級の職務にある者等 | 最上級の直近下位の級(ビジネスクラス)の運賃 | |
〔3〕 6級以下の職務にある者 (〔2〕 に該当する者を除く。) | 最上級の直近下位の級の直近下位の級(エコノミークラス)の運賃 | 下級(エコノミークラス)の運賃 |
すなわち、旅費法改正以前はビジネスクラスの運賃が支給されることもあった6級以下の職員については、長時間航空路による旅行をする6級又は5級の職務にある者を除き、すべてエコノミークラスの運賃が支給されることとなった。ただし、上記のエコノミークラスの運賃の支給を受ける者は、赴任のための航空旅行の場合には、国家公務員等の旅費に関する法律の運用方針について(昭和27年蔵計第922号。以下「運用方針」という。)により、携帯手荷物が20を超える場合は、その超える部分について10を限度として荷物の超過料金(以下「超過料金」という。)を加算した額の支給を受けることができるとされ、さらに、超過料金の加算額を勘案すれば直近上位の級(ビジネスクラス)の運賃によることが経済的と認められる場合は、当該運賃の支給を受けることができるとされていた。
しかし、外務省は、前記の旅費法改正時に、エコノミークラスの運賃が支給されることとなる職員であっても、赴任の場合は家族が同伴することなどの事情から、ビジネスクラスの運賃を支給できるよう、財務省と協議を行い、その了承を得たとしていた。そして、外務省は、赴任の手続を定めた「発令から赴任まで」(平成13年2月大臣官房人事課作成。以下「手引」という。)において、赴任の際の航空賃について、旅費法及び運用方針の規定にかかわらず、すべての職員にビジネスクラスの運賃を支給すると定めていた。
国際旅客航空運賃には、国際航空運送協会が設定した普通運賃のほか、各航空会社が設定した割引運賃(以下、この割引運賃を「キャリア運賃」という。)等がある。キャリア運賃は、日程変更等に制限があるものの普通運賃に比べて安価な運賃であり、20年度以降、日本発の路線にも片道のキャリア運賃が設定され始め、以後もこれを設定する航空会社が増えている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、赴任旅費が旅費法等に基づき適正に支給されているか、航空賃が経済的なものになっているかなどに着眼して、外務本省において会計実地検査を行った。そして、外務省が21年度に支給した赴任旅費のうち、旅費法上原則エコノミークラスの運賃を支給することとされている職員に対して支給されたビジネスクラスの運賃による本邦からの赴任に係る航空賃337件、計4億0606万余円(同伴家族の分を含む。)について、旅費請求書等により検査した。
検査したところ、赴任に係る航空賃が適正に支給されていないと認められる事態が次のとおり見受けられた。
赴任の際の航空賃については、前記のとおり、外務省は、財務省の了承を得たとして、手引において、職員はすべてビジネスクラスの運賃とすると定めていた。
しかし、このビジネスクラスの運賃の適用について本院から財務省に確認したところ、同省はこのことに関して了承したことはないとのことであった。
したがって、赴任の際の航空賃は、旅費法に基づき原則エコノミークラスの運賃とする必要があると認められた。そして、前記のビジネスクラスの運賃による本邦からの赴任に係る航空賃337件について、運用方針に沿って、片道のエコノミークラスの普通運賃に10の超過料金を加算した額とそれぞれ比較したところ、337件のうち321件は、エコノミークラスの普通運賃によった方が経済的であった。
また、前記のとおり、20年度から一部の路線において、より安価な片道のキャリア運賃が流通していたため、これによると、より一層経済的になると認められた。
このように、赴任に係る航空賃の支給について、運用方針に定められたとおり、エコノミークラスの運賃に超過料金を加算した額と比較することなく、ビジネスクラスの運賃を一律に支給することとし、また、より経済的なキャリア運賃の利用を検討していない事態は適正又は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記により、赴任に係る航空賃について、旅費法及び運用方針に定められたとおり、エコノミークラスの運賃に超過料金を加算した額とすることとし、また、キャリア運賃の設定がある路線についてこれを利用することとして計算すると、前記の337件の航空賃4億0606万余円は3億1004万余円となり、21年度の赴任に係る航空賃を9601万余円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、外務省において、赴任の場合には、家族が同伴することなどの事情に配慮した特別の扱いとして、ビジネスクラスの運賃を支給できるようにすることについて財務省の了承を得たと誤認し、これに基づいて手引を作成していたこと及び経済的なキャリア運賃の利用を検討していなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、外務省は、22年8月に手引を改正するなどして、赴任に係る航空賃の支給について、運用方針どおりに旅費請求を行うなど旅費法等の規定に従い適正に、かつ、キャリア運賃等を利用して経済的に行う処置を講じた。