公立学校等施設整備費補助金(大規模改造事業)は、教育環境の改善及び建物の耐久性の確保を図ることを目的として、公立の小中学校等の建物の機能低下等に対する復旧措置及び用途変更に伴う改装等の大規模改造を行う地方公共団体に対して、当該事業に要する経費の一部を国が補助するものである。
この補助金の交付額は、耐震基準(注1)
を満たしていない公立の小中学校等の校舎、屋内運動場等の柱、壁、梁(はり)等の補強に必要な耐震補強工事等に係る経費を補助対象経費として、これに原則として補助率3分の1を乗じて算定することとなっている。
そして、公立の小中学校等の木造以外の校舎について耐震補強工事を行う事業で、当該事業が地震防災対策特別措置法(平成7年法律第111号。以下「地震特措法」という。)に基づいて都道府県知事により作成された地震防災緊急事業五箇年計画に計上されている場合(以下、この事業を「地震補強事業」という。)は、地震特措法により、上記の大規模改造事業において原則として3分の1とされている補助率が、2分の1に引き上げられている。
本院が、5府県の7市町計7事業主体において会計実地検査を行ったところ、3府県の3事業主体において、当該事業が地震特措法に基づいて作成された地震防災緊急事業五箇年計画に計上されていないのに、校舎の耐震補強工事を行う事業を誤って地震補強事業に該当するとして引き上げられた補助率2分の1を適用するなどしていたため、国庫補助金計11,305,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、上記の3事業主体において補助事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、3府県の教育委員会において実績報告書等に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。
これを、府県別に示すと次のとおりである。
部局等 | 事業主体 | 補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(106) | 京都府 | 三和町 (注2) |
三和中学校校舎地震補強 | 15 | 41,111 | 20,555 | 407 (注3) |
6,987 | 引き上げられた補助率を誤って適用していたもの |
(107) | 熊本県 | 八代市 | 文政小学校校舎地震補強 | 18 | 13,049 | 6,524 | 129 (注3) |
2,218 | 同 |
(106)(107)の計 | 54,160 | 27,079 | 536 | 9,205 |
(注2) | 平成18年1月1日以降は福知山市 |
(注3) | 地震補強事業として実施したことにより、誤って補助対象経費に計上していた事務費相当額。それ以外の補助対象経費に誤りはなかった。 |
1市1町は、地震補強事業に該当するとして平成15年度又は18年度に実施した上記の校舎の耐震補強工事等に係る補助対象経費に補助率2分の1を乗じて国庫補助金計27,079,000円の交付を受けていた。
しかし、上記の事業は、地震特措法に基づいて作成された府又は県の地震防災緊急事業五箇年計画に計上されていないため、地震補強事業として実施することができず、大規模改造を行う事業として補助率3分の1を乗じて国庫補助金を算定すべきであり、これによるなどして適正な国庫補助金を算定すると計17,874,000円となることから、国庫補助金計9,205,000円が過大に交付されていた。
(108) | 宮崎県 | 清武町 (注4) |
清武中学校校舎大規模改造 | 17 | 58,679 | 19,559 | 6,300 | 2,100 | 工事費を過大に算定していたもの |
清武町は、平成17年度に実施した上記の校舎の耐震補強工事等に係る補助対象経費を58,679,000円(国庫補助金19,559,000円)としていた。
しかし、同町は、耐震壁の設置工事において、当初の無収縮モルタルを使用した工法からコンクリートを2段打ちする工法に設計を変更していたにもかかわらず、これに対応した積算の見直しを行わなかったなどのため工事費が過大となっていた。
したがって、適正な工事費により補助対象経費を算定すると52,379,000円(国庫補助金17,459,000円)となり、国庫補助金2,100,000円が過大に交付されていた。
(106)—(108)の合計 | 112,839 | 46,638 | 6,836 | 11,305 |