会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)義務教育費国庫負担金 | |
部局等 | 文部科学本省、17都府県 | |
国庫負担の根拠 | 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号) | |
国庫負担の対象 | 公立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等 | |
17都府県に対する国庫負担金交付額の合計 | 1兆3179億7717万余円 | (平成16年度〜19年度) |
上記のうち過大に交付されている国庫負担金交付額 | 3億9339万円 |
(平成22年3月12日付け 文部科学大臣あて)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
記
義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に要する経費のうち、都道府県が負担する教職員の給与及び報酬等に要する経費について、その実支出額を国庫負担対象額とし、その3分の1(平成17年度以前は2分の1)を国が負担するものである。そして、教職員給与等の実支出額が「義務教育費国庫負担法第2条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)により算定した額(以下「算定総額」という。)を超える都道府県については、当該算定総額の3分の1(17年度以前は2分の1)を最高限度として負担することとなっている。
限度政令において、負担金の交付額は次のとおり算定することとなっている。
上記の教職員定数は、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)に基づき算定した教職員の標準定数に、当該年度の5月1日現在における休職者、産休代替教職員、育児休業代替教職員の実数を加えるなどして算定した数とされている。
ただし、上記の休職者のうち、一般職の国家公務員であると仮定した場合に給与が支給されないこととなる者については、教職員定数には含めないこととされている。
すなわち、国の場合、公務中でない時に生じた心身の故障(結核性疾患を除く。以下「私傷病」という。)により休職したときは、その休職の期間が満1年に達するまでの間は給与を支給するが、休職の期間が1年を超える者には支給しないこととなっていることから、都道府県において私傷病による休職の期間が1年を超える者について給与を支給している場合であっても、これらの者については教職員定数に含めないこととなる。
貴省の初等中等教育局財務課給与執行・調査係(以下「本省給与係」という。)は、都道府県の教職員の給与関係の事務を所掌する給与係等の担当者(以下「県給与担当者」という。)から「公立義務教育諸学校教職員の現員現給等調書」(以下「現員現給等調書」という。)の提出を受け、都道府県ごとの教職員の平均給与単価を算定している。そして、現員現給等調書の一部である休職者の休職事由別人員調(以下「休職者人員調」という。)には、休職の事由別に休職者の実数を記入することとなっている。ただし、私傷病による休職者については、上記(2)の理由から、休職期間が1年を超えない者の実数とすることとしている。
また、貴省の初等中等教育局財務課定数企画係(以下「本省定数係」という。)は、都道府県の教職員の実数を算定する事務を所掌する定数係等の担当者(以下「県定数担当者」という。)から「公立義務教育諸学校教職員実数調(各年度5月1日現在)」(以下「教職員実数調」という。)の提出を受け、これを基に教職員定数を算定することにしている。そして、この教職員実数調には休職者、産休代替教職員、育児休業代替教職員及び育児休業者の実数を記入することとなっており、このうち休職者については、私傷病による休職の期間が1年を超える者等の実数が含まれている場合には、その実数を内数で記入し、上記(2)の理由から、この内数を減じたものを休職者の実数とすることとしている。
本院は、合規性等の観点から、負担金の算定は適正に行われているかなどに着眼し、貴省が16年度から19年度までに負担金を交付している47都道府県を対象として、現員現給等調書、教職員実数調、教職員定数の関係資料等を照査するなどの方法により検査を行った。検査に当たっては、31都道府県については会計実地検査を行い、残りの16県については教職員定数の関係資料等の提出を受け検査した。
検査したところ、47都道府県のうち17都府県(注1) において、次のような事態が見受けられた。
8都府県(注2) 負担金の過大交付額 2億7780万余円
これらの8都府県では、教職員実数調の提出に当たり、内数で記入することとなっている私傷病による休職の期間が1年を超える者の実数を誤ったため、休職者の実数が過大に集計されるなどしていて、教職員定数が計110人過大に算定されており、これに係る負担金計2億7780万余円が過大に交付されていた。
9県(注3) 負担金の過大交付額 1億1559万余円
これらの9県では、県定数担当者が、育児休業代替教職員の実数が育児休業者の実数より多くなっているなど各教育事務所等から報告された育児休業代替教職員等の実数が誤っているのにこれを見過ごしたり、集計を誤ったりしたため、教職員定数が計41人過大に算定されており、これに係る負担金計1億1559万余円が過大に交付されていた。
上記(1)及び(2)のとおり、17都府県において、16年度から19年度までに交付を受けた負担金に係る教職員定数が計151人過大に算定されていて、負担金計3億9339万余円が過大に交付されていた。
教職員実数調の作成に当たって、内数で記入することとなっている1年を超えて休職している者の実数を誤ったり、内容の確認が十分でなかったりなどしていて教職員定数が過大に算定され、負担金が過大に交付されている事態は適正とは認められず、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによるものと認められる。
ア 都府県において
(ア) 休職者人員調と教職員実数調とで休職者の実数が異なって記入されているのに、県給与担当者と県定数担当者との間で休職者の実数を照合するなどの確認が十分に行われていないこと
(イ) 県定数担当者が、各教育事務所等から報告された育児休業代替教職員等の実数の内容の確認を十分に行っていないこと
(ウ) 県定数担当者が、5月1日現在の休職者、産休代替教職員、育児休業代替教職員及び育児休業者の実数は負担金の交付額の算定に直接反映されるものであることについて認識が十分でないまま教職員実数調を作成していること
イ 貴省において
(ア) 都道府県に対する調書の作成の依頼に当たり、休職者の実数を記入する場合の国の休職制度に関する説明や注意書きの具体性が乏しく、都道府県の担当者や各教育事務所等において1年を超えて休職している者の取扱いについて誤解が生じやすいものとなっていること
(イ) 休職者人員調と教職員実数調とで休職者の実数が異なって報告されているのに、本省給与係と本省定数係との間で休職者の実数を照合するなどの確認を十分に行っていなかったり、育児休業代替教職員の実数が育児休業者の実数より多く報告されているのにそれぞれの実数について確認を十分に行っていなかったりしていること
貴省は、今後とも都道府県に対して法令等に基づいて多額の負担金を交付していくこととなっている。
ついては、貴省において、前記の17都府県に対して過大に交付されている負担金の返還措置を速やかに講ずるよう是正の処置を要求し、及び負担金の算定を適正なものとするよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 1年を超えて休職している者を誤って報告させることのないよう、調書の注意書きに「一般職の国家公務員の休職期間の給与は、私傷病による場合、休職開始から1年を超える者については支給しないこととなっているので、休職開始から1年を超えて給与を支給されている者は休職者の実数に含めないこと」など国の休職制度について具体的な説明の記述をすること
イ 休職者人員調と教職員実数調との休職者の実数が一致しているかなどについて点検項目を設けるなど都道府県から報告された実数を確認するための方策を講ずること
ウ 都道府県に対して、休職者人員調と教職員実数調との休職者の実数が一致しているかなどについての点検項目を示したり、関係資料等と照合することなど各教育事務所等から報告された育児休業代替教職員等の実数を集計する際の留意事項を示したりして、実数を確認する態勢を整備させること
エ 負担金に関する説明会において、5月1日現在の休職者、産休代替教職員、育児休業代替教職員及び育児休業者の実数は負担金の交付額の算定に直接反映されるものであることを都道府県に対して周知徹底すること
17都府県 東京都、大阪府、岩手、宮城、秋田、栃木、千葉、神奈川、富山、長野、滋賀、兵庫、鳥取、山口、長崎、大分、宮崎各県
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8都府県 東京都、大阪府、秋田、千葉、長野、山口、長崎、大分各県
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9県 岩手、宮城、栃木、神奈川、富山、滋賀、兵庫、鳥取、宮崎各県
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本院は、文部科学本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、文部科学省は、本院指摘の趣旨に沿い、17都府県に対して22年3月に、過大に交付されていた負担金に係る返還命令を発し、同年4月までに全額返還させるとともに、次のような処置を講じていた。
すなわち、同省は、1年を超えて休職している者を誤って報告させることのないよう、現員現給等調書及び教職員実数調に国の休職制度について具体的な説明を注記するとともに、都道府県から報告された休職者等の実数を確認するために点検項目を設けるなどの方策を講じ、これを都道府県に対しても示すなどして休職者等の実数を確認する態勢を整備させ、また、同年4月に説明会を開催して、休職者等の実数は負担金の交付額の算定に直接反映されるものであることを周知徹底した。