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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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障害基礎年金等の不正受給事案に係る返納金及び延滞金について、会計法令等に基づく債権管理等を適正に行っていなかったもの


(112) 障害基礎年金等の不正受給事案に係る返納金及び延滞金について、会計法令等に基づく債権管理等を適正に行っていなかったもの

会計名及び科目 (1) 年金特別会計 (基礎年金勘定) (項)雑収入
    (厚生年金勘定) (項)雑収入
  (2) 年金特別会計 (業務勘定) (項)雑収入
部局等 厚生労働本省(平成21年12月31日以前は社会保険庁)
不正に受給された障害基礎年金等の額   177,656,856円 (平成15年度〜20年度)
債権管理等を適正に行っていなかった返納金及び延滞金の額 (1) 返納金
67,297,902円
(平成21年度)
(2) 延滞金
13,088,134円
(平成21年度)
80,386,036円
 

1 障害基礎年金等の不正受給に係る債権管理及び徴収の事務の概要等

(1) 障害基礎年金等の支給手続

 厚生労働省(平成21年12月31日以前は社会保険庁)は、国民年金法(昭和34年法律第141号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)に基づき、障害基礎年金及び障害厚生年金(以下、これらを合わせて「障害年金」という。)の保険給付に係る事務を行っている。
 障害年金の保険給付を受ける権利は、その権利を有する者(以下「受給権者」という。)の請求に基づいて、厚生労働本省(21年12月31日以前は社会保険庁)が裁定(注1) している。そして、障害年金の支給手続は、おおむね次のとおりとなっている。
〔1〕 障害年金の裁定を請求する者は、日本年金機構の年金事務所(21年12月31日以前は社会保険庁地方社会保険事務局の社会保険事務所及び地方社会保険事務局社会保険事務室)等に、障害年金請求書を、医師の診断書等を添えて提出する。
〔2〕 厚生労働本省は、これらの書類を審査、確認の上、裁定する。
〔3〕 同本省は、裁定した受給権者に対して、障害の程度に応じた額の障害年金を支給する。

 裁定  年金の給付を受ける権利があることを確認すること

(2) 障害基礎年金等の不正受給に係る債権管理及び徴収の事務の概要

 厚生労働本省は、既に裁定した障害年金について誤りがあった場合は、裁定を変更し、又は取り消すことになっている。そして、裁定を取り消した場合には、年金の給付を受けた者は、受給した障害年金の額を返納することになっている。
 また、受給権者が、偽りその他不正の手段により障害年金の給付を受けていた場合は、悪意の不当利得者となることから、「国の債権の管理等に関する法律及びこれに基く命令の実施について」(昭和32年蔵計第105号。以下「通達」という。)等により、歳入徴収官は、これらの者に対する返納金債権について、遅延利息として、返納金債権の額につき所定の割合で、当該支給日の翌日からの日数に応じて計算した延滞金を徴収することとなっている。
 そして、返納金債権又は延滞金債権が発生したときは、歳入徴収官は、会計法(昭和22年法律第35号)、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)等の会計法令に基づき、遅滞なく、債務者の住所、氏名、債権金額等を債権管理簿に記載し、歳入の調査決定をして、債務者に対して納入の告知をしなければならないこととなっている。また、年金の不正受給に係る返納金及びこれに係る延滞金についての債権管理及び徴収の事務は、厚生労働省年金局事業管理課長(21年12月31日以前は社会保険庁総務部経理課長)が歳入徴収官として行うこととなっている。

(3) 障害基礎年金等の不正受給事案

 19年12月以降、障害の事実がないにもかかわらず、札幌市内の医師が作成した虚偽の内容の診断書により障害の認定を受け、不正に障害年金の給付を受けている者がいるとの報道がなされた。
 そこで、社会保険庁は、同医師が作成した診断書により障害年金を裁定した者に対して、障害の状況について調査を行うなどした。その結果、同医師の診断書により同庁が裁定し、15年度から20年度までの間に障害年金を支給していた42人について、実際には障害年金を裁定した当初から障害の事実がなく、障害年金計177,656,856円(障害基礎年金144,138,469円、障害厚生年金33,518,387円)を不正に受給していたと認定して、同庁は、21年4月から12月までの間に順次、これらの者に係る障害年金の裁定を取り消した。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、厚生労働本省において、上記不正受給事案の発覚に伴って障害年金の裁定を取り消した42人に係る返納金及び延滞金について、会計法令等に基づく債権管理等が適正に行われているかなどに着眼して、債権管理簿を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

ア 上記42人のうち17人について、厚生労働本省は、21年7月から12月までの間に障害年金の裁定を取り消していた。しかし、同本省は、これら17人が不正に受給していた障害基礎年金51,573,249円、障害厚生年金15,724,653円、計67,297,902円の返納金債権について、債権管理簿への記載はしていたものの、歳入の調査決定及び納入の告知をしていなかった。なお、この返納金債権については、延滞金が付されることとなる。(注2)

 延滞金の額は、返納金が完納された時に確定する。

イ 残る25人について、同本省は、21年4月から11月までの間に障害年金の裁定を取り消し、不正に受給していた年金の額の返納金債権について、債権の管理、歳入の調査決定及び納入の告知を行っており、このうち22人は障害基礎年金69,398,330円、障害厚生年金11,435,993円、計80,834,323円を完納していた(残る3人は分割返納中等)。しかし、同本省は、これら22人が不正受給者であるにもかかわらず、通達等によることなく、返納金が完納されたことによりその額が確定した(注3) 延滞金債権計13,088,134円(障害基礎年金分11,587,054円、障害厚生年金分1,501,080円)について、債権の管理をしておらず、歳入の調査決定及び納入の告知をしていなかった。

 残る3人に係る延滞金の額は、返納金が完納された時に確定する。

 したがって、同本省において、前記不正受給事案の発覚に伴って障害年金の裁定を取り消した42人のうち、17人に係る返納金67,297,902円及び22人に係る延滞金13,088,134円、計80,386,036円について、会計法令等に基づく債権管理及び徴収の事務を適正に行っておらず、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同本省において、返納金及び延滞金に係る債権管理及び徴収の事務について、会計法令等に基づき適正に行うことについての認識が十分でなかったことなどによると認められる。