ページトップ
  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

添加物の安全性に関する試験等及び報告書作成の業務に係る請負契約において、契約が履行期間内に履行されていないのに履行されたとする事実と異なる内容の関係書類を作成するなどの不適正な会計経理を行い、代金を支払っていたもの


(113) 添加物の安全性に関する試験等及び報告書作成の業務に係る請負契約において、契約が履行期間内に履行されていないのに履行されたとする事実と異なる内容の関係書類を作成するなどの不適正な会計経理を行い、代金を支払っていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)厚生労働本省
(項)食品等安全確保対策費
部局等 国立医薬品食品衛生研究所
契約名 国際的に汎用されている添加物(香料)の指定に向けた試験(90日間反復投与毒性試験)等62契約
契約の概要 添加物の安全性に関する試験等を行うものなど
契約の相手方 10公益法人
契約 平成16年12月〜20年12月 契約62件(随意契約39件、一般競争契約23件)
契約額 592,570,855円 (平成16年度〜20年度)
支払 平成17年4月、18年4月、19年4月、20年4月、21年4月
不適正支払額 592,570,855円
(平成16年度〜20年度)

1 添加物の安全性に関する試験等及び報告書作成の業務に係る会計経理の概要

 国立医薬品食品衛生研究所(以下「研究所」という。)は、平成16年度から20年度までの問に、添加物の安全性に関する試験や残留農薬の分析法開発等の業務を公益法人に請負契約により行わせている。研究所が作成した仕様書等によると、業務の内容は、添加物等に関する情報収集及び試験等を実施し、報告書を作成、提出するものであり、それぞれ請負契約を締結した日の属する年度内の定められた期限までに履行することとなっている。
 国が行う会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき行うこととされている。すなわち、会計法令等では、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、各会計年度における経費は、原則として当該年度の歳入をもって支弁しなければならないとされている。また、歳出の会計年度の所属については、相手方の行為の完了があった後交付するものはその支払をなすべき日の属する年度に所属するものとされている。さらに、契約が履行された場合には、原則として、給付の完了を確認するために必要な検査を行い、所定の検査調書を作成しなければならず、この検査調書に基づかなければ当該契約の代金を支払うことができないなどとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、契約が適正に履行されているか、会計経理が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して、研究所が16年度から20年度までの間に12公益法人と締結した91契約、契約金額計850,108,205円を対象に、契約書、検査調書、報告書等の関係書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
 研究所は、上記の91契約すべてについて、それぞれ業務が完了し履行期間内に適正に履行されたとして、契約金額と同額の請負代金を支払っていた。
 しかし、実際には、これらのうち10公益法人(注) と締結した62契約、契約金額計592,570,855円については、履行期間内に業務が完了していないのに、業務の給付の完了を確認するための検査等を適正に行わないまま、契約が履行期間内に適正に履行されたとする事実と異なる検査調書を作成して、請負代金を支払っていた。そして、これらのうち、契約を締結した年度内に業務が完了していたと認められるものは2契約、契約金額計27,745,000円に過ぎず、残りの60契約、契約金額計564,825,855円については、業務が完了したのは翌年度以降になっていた。この中には履行期限を3年9か月以上超えて業務が完了しているものがあった。

 10公益法人  財団法人化学物質評価研究機構(平成22年4月1日以降は一般財団法人化学物質評価研究機構)、財団法人残留農薬研究所、財団法人食品環境検査協会、財団法人食品農医薬品安全性評価センター、財団法人食品薬品安全センター、財団法人畜産生物科学安全研究所、財団法人日本食品化学研究振興財団、財団法人日本食品分析センター、財団法人日本冷凍食品検査協会、社団法人日本食品衛生協会

 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 研究所は、平成20年1月25日に、「トランスジェニックマウス遺伝子突然変異試験」(注) について、試験等を実施し、報告書を提出させることとして、公募による随意契約により、財団法人食品農医薬品安全性評価センターに契約額3,675,000円で請け負わせている。そして、研究所は、本契約が履行期限である同年3月19日までに適正に履行されたとする検査調書を同月25日に作成し、請負代金を同年4月18日に支払っていた。
 しかし、試験の実施記録等によれば、同センターが試験に使用するトランスジェニックマウスを入手して試験を開始したのは履行期限を半年近く過ぎた同年9月12日であり、試験が終了したのは21年1月20日となっていて、報告書が研究所に提出されたのは同日以降であった。

 トランスジェニックマウス遺伝子突然変異試験  既存添加物の安全性確認のため、トランスジェニックマウス(遺伝子を人為的に導入して作られたマウス)を用いて行う遺伝毒性試験

 したがって、研究所において、上記のとおり、契約が履行期間内に履行されていないのに履行されたとする事実と異なる内容の検査調書を作成するなどの不適正な会計経理を行い、契約金額計592,570,855円を支払っていたことは、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究所において、会計法令等を遵守することなどの基本的な会計経理を適正に行う認識が欠如していたこと、厚生労働本省において、研究所に対して、予算の執行に当たり会計法令等を遵守することなどの指導が十分でなかったことなどによると認められる。