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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 予算経理

契約を締結せずに災害復旧に伴う工事を実施し、翌年度に架空の契約を締結してその代金を当該工事の請負代金の支払に充てるなど不適正な会計経理を行っていたもの


(114) 契約を締結せずに災害復旧に伴う工事を実施し、翌年度に架空の契約を締結してその代金を当該工事の請負代金の支払に充てるなど不適正な会計経理を行っていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国立ハンセン病療養所
  (項)国立ハンセン病療養所共通費
(項)国立ハンセン病療養所運営費
平成19 年度は、
  (項)国立ハンセン病療養所運営費
(項)国立ハンセン病療養所施設費
部局等 国立駿河療養所
契約名 国立駿河療養所老朽配管更新等整備工事等22契約
契約の概要 災害復旧に伴い実施した工事等
契約金額計 286,808,787円 (平成19、21両年度)
契約の相手方 渡邊工業株式会社等2社
不適正な会計経理により支払われた金額の計 286,808,787円
(平成19、21両年度)

1 会計経理等の概要

(1) 療養所の概要

 国立駿河療養所(以下「療養所」という。)は、厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)に基づき設置された国立ハンセン病療養所であり、入所者に対して医療を行い、併せて医療の向上に寄与することを目的とした業務を行っている。

(2) 災害復旧に伴う工事等の概要

 療養所は、平成19年9月に発生した台風による集中豪雨により、療養所の各所において倒木や土砂災害が発生したため、早急に災害復旧工事等を実施する必要があるとして、法面補強工事、護岸保護工事等を実施している。

(3) 療養所における会計経理の概要

 療養所が行う会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき行うこととされている。すなわち、会計法令等では、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までと定められており、各会計年度における経費は、原則として当該年度の歳入をもって支弁しなければならないとされている。また、歳出の会計年度の所属については、相手方の行為の完了があった後交付するものはその支払をなすべき日の属する年度に所属するものとされている。そして、契約を締結する場合には、原則として、契約書を作成しなければならないとされている。さらに、契約が履行された場合には、原則として、給付の完了を確認するために必要な検査を行い、所定の検査調書を作成しなければならず、この検査調書に基づかなければ当該契約の代金を支払うことができないなどとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、契約は会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、療養所が19年度及び21年度に締結した災害復旧に伴う工事等に係る25契約、支払金額計425,419,995円を対象に、契約書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、上記25契約のうち、22契約、支払金額計286,808,787円において、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた(イ及びウには事態が重複しているものが2契約、計30,378,100円ある。)。

ア 契約を締結せずに災害復旧に伴う工事を実施し、翌年度に架空の契約を締結してその代金を当該工事の請負代金の支払に充てていたもの

(16契約 支払金額計 6,999,300円)

 療養所は、21年度に上地区除草等16契約について、渡邊工業株式会社(以下「渡邊工業」という。)と契約金額計6,999,300円で随意契約を締結し、契約に定められたとおりに履行されたとして、同額を支払っていた。
 しかし、上記の契約はすべて架空の契約であり、これらに係る支払額は、契約を締結せずに渡邊工業に実施させた20年度の調整池に係る工事の未払の請負代金(同額)の支払に充てられていた。

イ 工事がしゅん工していないのにしゅん工したとして検査調書を作成し、請負代金を支払っていたもの

(3契約 支払金額計 35,086,100円)

 療養所は、19年度に渡邊工業と契約を締結した国立駿河療養所調整池法面補強工事等3契約について、契約期間内にしゅん工したとして検査調書を作成し、請負代金を支払っていた。
 しかし、実際には、3契約とも契約期間内にしゅん工しておらず、契約年度内においてもしゅん工していなかった。

ウ 契約の締結前に工事等を実施させるなどしていたもの

(5契約 支払金額計 275,101,487円)

 療養所は、19年度の国立駿河療養所老朽配管更新等整備工事等5契約について、19年11月から20年3月までの間にそれぞれ契約を締結して、契約に定められたとおりに履行されたとして、請負代金を支払っていた。
 しかし、実際には、上記の5契約は契約を締結する前から渡邊工業に工事等を実施させ、後日、同社と契約を締結するなどしていた。

 上記のとおり、療養所は、会計法令等に違反して、契約を締結せずに災害復旧に伴う工事を実施し、翌年度に架空の契約を締結してその代金を当該工事の請負代金の支払に充てるなど不適正な会計経理を行っていたもので、22契約に係る支払金額計286,808,787円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、療養所において、早急に災害復旧に伴う工事等を実施しなければならない事情があったとしても、契約の締結等に当たって会計法令等を遵守することなどの基本的な会計経理を適正に行う認識が欠けていたこと、厚生労働本省において、療養所に対して予算の執行に当たり会計法令等を遵守するよう指導が十分でなかったことなどによると認められる。