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  • 平成21年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
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  • 役務

「ねんきん特別便」の作成及び発送準備業務に係る委託契約において、委託業者に対する指示等が適切でなかったため、共済組合に発送した「ねんきん特別便」が組合員へ配布できずに返送されており、再度、発送するための費用を支出するなどしていたもの


(120) 「ねんきん特別便」の作成及び発送準備業務に係る委託契約において、委託業者に対する指示等が適切でなかったため、共済組合に発送した「ねんきん特別便」が組合員へ配布できずに返送されており、再度、発送するための費用を支出するなどしていたもの

会計名及び科目 年金特別会計(業務勘定) (項)業務取扱費
部局等 社会保険庁(平成22年1月1日以降は厚生労働本省)
契約名 ねんきん特別便の作成及び発送準備業務〔4〕 B等10契約
「ねんきん特別便」の作成及び発送準備業務に係る委託契約の概要 社会保険庁が貸与する磁気テープに基づき「ねんきん特別便」の作成から、指定の送付先住所及び配列順による整理、郵便局への差出処理までの一連の作業を行うもの
契約の相手方 9会社
契約 平成20年5月、6月、8月一般競争契約
委託業者に対する指示等が適切でなかったため再発送等をした「ねんきん特別便」の件数 524,441件
上記の再発送等に係る支出額 30,700,730円 (平成20年度)

1 「ねんきん特別便」の発送の概要

(1) 民間の被保険者及び共済組合等の組合員等に対する「ねんきん特別便」の発送の概要

 社会保険庁(平成22年1月1日以降は厚生労働本省)は、19年11月から20年10月までの間に、年金受給者、被保険者等約1億0873万人に対して、年金記録の漏れや間違いの有無を確認してもらうために、その加入履歴等を記載した「ねんきん特別便」を発送している。これらの「ねんきん特別便」のうち、20年6月以降に、民間の被保険者又は共済組合等(共済組合及び私立学校教職員共済の加入者を使用する学校法人等。以下同じ。)の組合員等に対して発送するものについては、これらの者に確実に配布するために、原則として、事業主又は共済組合等を経由して行うこととされた。
 このうち、共済組合等を経由して発送するものについて、同庁は、各共済組合等が指定した組合員等の所属する支所、部、課等の勤務先(以下「勤務先」という。)の順に「ねんきん特別便」を配列し、それらをまとめて各共済組合等に発送することにより、各共済組合等を経由して組合員等に配布している。
 また、事業主を経由して発送するものについては、事業主から配布に協力する旨の回答を得られた場合に、その事業主名を地方社会保険事務局の社会保険事務所又は地方社会保険事務局社会保険事務室(以下、これらを合わせて「社会保険事務所等」という。)において把握する。その後、地方社会保険事務局がこれを取りまとめ、同庁に報告する。同庁は、この報告を受けて、配布の協力を得られた事業主に発送することにより、各事業主を経由して被保険者に配布している。

(2) 「ねんきん特別便」の作成及び発送準備業務に係る委託契約の概要

 社会保険庁は、「ねんきん特別便」の作成から、その送付先住所及び勤務先の配列順での整理、郵便局への差出処理までの一連の作業を民間業者に委託(以下、当該業務の委託を受けた民間業者を「委託業者」という。)している。この業務を実施するため、同庁は、20年5月から8月までの間に、共済組合等を経由して発送するものについて4会社と4契約、事業主を経由して発送するものについて7会社と7契約、計10会社(うち1会社は重複)と11契約を締結して、計3,191,333,367円を支払っている。
 そして、上記の業務を実施するため、同庁は、共済組合等から指定があった送付先住所及び勤務先の配列順に係るデータ等が記録されている磁気テープを委託業者に貸与している。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、年金記録問題について、20年6月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づく検査要請を受け、その検査結果を21年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「年金記録問題に関する会計検査の結果について」 )。そして、その中で、共済組合経由の「ねんきん特別便」の発送に当たり、共済組合の各支部の発送先住所を誤ったり、共済組合が指定した配列順と異なるものとしたりしてしまったため、共済組合から組合員への配布が困難となり、再発送に係る経費を社会保険庁が負担していたことについて、その事態の概要を報告している。
 本年次は、引き続きその事態の詳細及び発生原因を明らかにするなどのため、合規性等の観点から、社会保険庁が締結した契約に係る仕様書等において適切な指示等がされていたかなどに着眼して、社会保険庁の業務を引き継いだ厚生労働本省等において会計実地検査を行った。検査に当たっては、前記の11契約等を対象に、委託契約書、仕様書、配布の協力依頼に対する事業主からの回答書、地方社会保険事務局及び社会保険庁への報告書等により検査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、9会社と締結した10契約において、次のような事態が見受けられた。

ア 共済組合経由で配布するとしていた「ねんきん特別便」について配列順や送付先住所を誤って発送したため、再度、発送するなどしていたもの

(ア) 社会保険庁は、「ねんきん特別便」を共済組合経由で配布するために締結した4契約において、共済組合が指定した勤務先の配列順に「ねんきん特別便」を発送しなければならないことを仕様書に明示していなかった。そして、このうち地方職員共済組合本部等55か所(組合員451,306人)に係る1契約において、同庁は、業務を委託した会社から、基礎年金番号順に「ねんきん特別便」を配列してよいかとの電話による照会を受けた際、共済組合が指定した勤務先の順に配列するよう、明確な回答及び適切な指示をしていなかった。
 このため、上記の1契約に係る「ねんきん特別便」は、地方職員共済組合本部等が指定した勤務先の配列順ではなく、基礎年金番号順に配列して発送されていた。この結果、これを受け取った地方職員共済組合本部等は、各地に散在する勤務先への配布が困難であるとして、同庁に対して返送したり回収を依頼したりしていた。

(イ) 上記(ア)の契約とは別の2契約において、2市町村職員共済組合が指定した送付先104か所(組合員47,369人)を経由して配布するものについて、社会保険庁は誤った送付先住所が記録された磁気テープを委託業者に貸与していた。このため、上記の104か所に係る「ねんきん特別便」は、指定の送付先住所に届かず同庁に返送されていた。

 上記(ア)の組合員451,306人及び(イ)の組合員47,369人、計498,675人について、社会保険庁は、同庁に返送されるなどした「ねんきん特別便」を指定の配列順に並び替えたり、あて先を正しい送付先住所に書き直したりした上で再発送しており、この経費として郵便料金等計29,553,633円を支出していた。

イ 事業主経由で配布するとしていた「ねんきん特別便」を被保険者に対して直接発送していたもの

 福岡社会保険事務局管内の11社会保険事務所等は、同事務局に対し、17,220事業主(被保険者712,889人)から配布の協力を得られた旨報告していた。しかし、同事務局は、これを取りまとめる際、管内の3社会保険事務所から報告があった事業所の名称等の一部を社会保険庁に対する報告書に記載することを失念したため、社会保険庁に対して、これより1,107事業主(被保険者25,766人)少ない16,113事業主(被保険者687,123人)を配布の協力が得られた事業主として報告していた。
 このため、同庁は、上記の1,107事業主からは配布の協力を得られなかったとして、当該事業主に係る被保険者25,766人に対して「ねんきん特別便」を直接発送しており、事業主を経由して配布する場合に比べて、郵便料金を1,147,097円多く支出することとなっていた。

 したがって、上記ア及びイの事態に係る組合員498,675人及び被保険者25,766人、計524,441人に対する「ねんきん特別便」の再発送等の費用計30,700,730円は、社会保険庁が委託業者への指示等を適切に行っていれば支出する必要がなかったもので、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、社会保険庁及び福岡社会保険事務局において、共済組合や事業主を経由して「ねんきん特別便」を組合員や被保険者に確実に配布することの年金記録を確認する上での重要性について認識が十分でなく、本件事業をより慎重に実施するという配慮に欠けていたことによると認められる。