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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(122) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等 厚生労働本省(支給庁)
121 公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 339 人
支払額
失業等給付金の支給額の合計 求職者給付 231,560,309円 (平成18年度〜22年度)
就職促進給付 19,345,601円 (平成18年度〜22年度)
250,905,910円
不当と認める支給額 求職者給付 77,360,373円 (平成18年度〜22年度)
就職促進給付 19,345,601円 (平成18年度〜22年度)
96,705,974円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち、基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注1) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。また、特例一時金は、被保険者であって季節的に雇用される者等が失業した場合に支給される。

イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上(注2) 残して安定した職業に就いた場合に支給される。

(注1)
受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること)
(注2)
所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上  平成21年3月31日から24年3月31日までの間は、暫定措置として「45日以上」の要件は適用されないこととなっている。

(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当等は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。

ア 基本手当及び特例一時金については、受給資格者等から提出された失業認定申告書等に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上、支給決定を行う。

イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の437公共職業安定所(平成22年3月末現在)のうち、21労働局管内の208公共職業安定所において会計実地検査を行い、主として19年度から21年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)から12,686人を選定して、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。
そして、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、19労働局の121公共職業安定所管内における18年度から22年度までの問の受給者339人については、再就職した後も引き続き失業等給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する失業等給付金の支給額250,905,910円のうち96,705,974円は支給の要件を満たしていないなどしていたもので支給が適正でなく、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 121公共職業安定所管内の受給者335人に対する失業等給付金の支給額231,560,309円(基本手当230,427,909円、特例一時金1,132,400円)のうち、77,360,373円(基本手当76,227,973円、特例一時金1,132,400円全額)は支給の要件を満たしていないなどしていた。

イ 就職促進給付

 55公共職業安定所管内の受給者71人に対する再就職手当の支給額19,345,601円全額が支給の要件を満たしていないなどしていた。

 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったなどのため、失業認定申告書や再就職手当支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、前記の121公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不当と認める支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 以上を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
千円 千円
北海道 札幌 等7 391 29 21,702 12,044
札幌東 等2 50 2 228 228
小計 21,931 12,272
栃木 宇都宮 等7 494 20 9,218 2,755
宇都宮 等6 209 11 2,298 2,298
小計 11,516 5,053
埼玉 川口 等5 395 8 5,159 2,192
川口 等3 136 4 689 689
小計 5,848 2,881
千葉 市川 等6 434 11 7,614 2,842
小計 7,614 2,842
東京 品川 等8 610 16 13,619 5,993
品川 等2 89 2 455 455
小計 14,075 6,448
山梨 甲府 等4 194 7 4,775 955
甲府 25 2 522 522
小計 5,298 1,477
長野 長野 等9 628 29 17,069 4,909
長野 等6 196 7 1,389 1,389
小計 18,459 6,298
岐阜 岐阜 等6 373 18 17,398 4,790
大垣 等2 45 2 890 890
小計 18,289 5,681
愛知 名古屋中 等11 760 26 18,291 6,352
名古屋中 等5 144 6 2,848 2,848
小計 21,139 9,200
滋賀 長浜 等5 273 15 9,945 5,780
長浜 等3 55 3 1,265 1,265
小計 11,210 7,046
京都 京都西陣 等8 519 29 23,943 8,397
京都西陣 等5 181 6 1,897 1,897
小計 25,840 10,294
大阪 大阪東 等9 577 11 8,743 4,654
大阪東 等3 133 3 623 623
小計 9,367 5,277
兵庫 神戸 等6 440 23 13,912 3,801
神戸 等4 194 6 1,323 1,323
小計 15,236 5,125
奈良 奈良 等5 311 11 8,904 2,383
奈良 等2 74 3 1,285 1,285
小計 10,189 3,669
広島 広島 等3 254 6 2,185 639
三次 39 2 622 622
小計 2,807 1,262
香川 高松 等5 252 11 6,766 1,336
高松 等3 67 3 974 974
小計 7,740 2,310
愛媛 松山 等4 286 18 13,647 1,462
八幡浜 等2 49 3 731 731
小計 14,379 2,194
熊本 熊本 等7 471 21 16,698 2,824
熊本 等4 147 5 1,192 1,192
小計 17,891 4,017
宮崎 宮崎 等6 511 27 11,962 3,245
都城 16 1 105 105
小計 12,067 3,350
求職者給付計 121か所 8,172 335 231,560 77,360
就職促進給付計 55か所 1,849 71 19,345 19,345
合計 250,905 96,705
(注1)
上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
(注2)
求職者給付計」の「本院の調査に係る受給者数」及び「不適正受給者数」は、同一の受給者が複数の労働局で失業等給付金の支給を受けているものがあり、その重複分を控除している。
(注3)
公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ121か所、339人である。

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、受給資格者に対する指導を強化するとともに受給資格者から提出された失業認定申告書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。