会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)厚生労働本省 | (項)医療保険給付諸費 |
(項)生活保護費 | |||
(項)障害保健福祉費 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険料等交付金 | ||
平成20年度以前は、 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費及保険者納付金 | ||
平成19年度以前は、 | (項)児童保護費 | ||
一般会計(組織)厚生労働本省 | (項)生活保護費 | ||
(項)障害者自立支援給付諸費 | |||
(項)身体障害者保護費 | |||
(項)精神保健費 | |||
(項)老人医療・介護保険給付諸費 | |||
(項)国民健康保険助成費 | |||
年金特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
平成18年度以前は、 | |||
厚生保険特別会計(健康勘定) | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
船員保険特別会計 | (項)疾病保険給付費及保険者納付金 | ||
平成19 年度以前は、 | |||
船員保険特別会計 | (項)保険給付費 | ||
(項)老人保健拠出金 | |||
(項)退職者給付拠出金 | |||
部局等 | 厚生労働本省、社会保険庁(平成21年12月末まで)、8地方厚生(支)局(指導監督庁。平成20年10月以降)、35都道府県 | ||
国の負担の根拠 | 健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。平成20年3月31日以前は「老人保健法」)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等 | ||
医療給付の種類 | 健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、生活保護法等に基づく医療 | ||
実施主体 | 国、全国健康保険協会、都道府県18、市419、特別区23、町238、村26、後期高齢者医療広域連合40、国民健康保険組合40、計806実施主体 | ||
医療機関及び薬局 | 医療機関155、薬局30 | ||
過大に支払われた医療費に係る診療報酬等 | 入院基本料、入院基本料等加算、調剤報酬等 | ||
過大に支払われた医療費の件数 | 152,129件(平成17年度〜21年度) | ||
過大に支払われた医療費の額 | 1,110,261,210円 | (平成17年度〜21年度) | |
不当と認める国の負担額 | 529,404,655円 | (平成17年度〜21年度) |
厚生労働省の医療保障制度には、老人保健制度(平成20年3月以前)、後期高齢者医療制度(20年4月以降)、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。
ア 20年3月以前は、老人保健制度の一環として、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が老人保健法に基づき、健康保険法、船員保険法、国民健康保険法等(以下「医療保険各法」という。)による被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)のうち、当該市町村の区域内に居住する老人(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して行う医療
イ 20年4月以降は、上記アに代わるものとして創設された後期高齢者医療制度において、高齢者の医療の確保に関する法律(以下「高齢者医療確保法」という。)に基づき、各都道府県の区域内に住所を有する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して後期高齢者医療の事務を処理するために当該都道府県の区域内のすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)が行う医療
ウ 医療保険制度の一環として、医療保険各法に規定する保険者が、医療保険各法に基づき被保険者(老人及び後期高齢者を除く。)に対して行う医療
エ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法に基づき被保護者に対して行う医療等
これらの医療給付においては、被保険者(上記エの被保護者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受け、又は薬局で薬剤の支給等を受けた場合、市町村、保険者又は都道府県(以下「保険者等」という。)及び患者がこれらの費用を医療機関又は薬局(以下「医療機関等」という。)に診療報酬又は調剤報酬(以下「診療報酬等」という。)として支払う。
診療報酬等の支払の手続は、次のとおりとなっている(図
参照)。
ア 診療等を担当した医療機関等は、診療報酬等として医療に要する費用を所定の診療点数又は調剤点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定する。
イ 医療機関等は、上記診療報酬等のうち、患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬等(以下「医療費」という。)については、老人保健法に係るものは市町村に、高齢者医療確保法に係るものは広域連合に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、生活保護法等に係るものは都道府県又は市町村に請求する。
このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。
(ア) 医療機関等は、診療報酬請求書又は調剤報酬請求書(以下「請求書」という。)に医療費の明細を明らかにした診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを、国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。
(イ) 審査支払機関は、請求書及びレセプトに基づき請求内容を審査点検した後、医療機関等ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。
ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認の上、審査支払機関を通じて医療機関等に医療費を支払う。
保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。
ア 老人保健法に係る医療費(以下「老人医療費」という。)については、老人の居住する市町村が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している。
(ア) 老人保健法により、老人医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が拠出する老人医療費拠出金が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として拠出する老人医療費拠出金の納付に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法等により、国は政府管掌健康保険等の保険者として老人医療費拠出金を納付している。
イ 高齢者医療確保法に係る医療費(以下「後期高齢者医療費」という。)については、広域連合が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が以下のように負担している。
(ア)高齢者医療確保法により、後期高齢者医療費については、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1ずつを負担しており、残りの12分の6については、各保険者が納付する後期高齢者支援金及び後期高齢者の保険料が財源となっている。
(イ) 国民健康保険法により、国は市町村等が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(ウ) 健康保険法により、国は全国健康保険協会(注1) が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。
(エ) 船員保険法により、国は全国健康保険協会が管掌する船員保険事業に要する費用の一部を負担している。
ウ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、〔1〕 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である場合の医療費は全国健康保険協会が支払った額の13%を、〔2〕 船員保険の被保険者である場合の医療費は全国健康保険協会が支払った額の一部を、〔3〕 市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合の医療費は市町村が支払った額の43%を、〔4〕 国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合の医療費は国民健康保険組合が支払った額の47%を、それぞれ負担している。
エ 生活保護法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。
国民医療費は11年度以降毎年度30兆円を超えており、このうち老人医療費(20年度以降は後期高齢者医療費。以下同じ。)は、高齢化が急速に進展する中でその占める割合が3割を超えている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院は老人医療費を中心に、合規性等の観点から、医療費の請求が適正に行われているかに着眼して検査を行っている。
そして、近年では医療機関等において、医師、看護師等の医療従事者が不足していて要件を満たしていなかったり、別途介護保険制度の介護給付等として行われるものを医療費として請求したりしていて不適正と認められる事態が多く見受けられる。そこで、本年の検査に当たっても、合規性等の観点から、これらの点を中心に検査することとした。
本院は、8地方厚生(支)局(注2) 、社会保険庁の11社会保険事務局及び35都道府県において、保険者等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方厚生(支)局及び都道府県に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査の結果、35都道府県に所在する155医療機関及び30薬局に対して806実施主体が行った17年度から21年度までの間における医療費の支払が、152,129件で1,110,261,210円過大となっていて、これに対する国の負担額529,404,655円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。
これを診療報酬項目等の別に整理して示すと、次のとおりである。
診療報酬項目等 | 実施主体 (医療機関等数) |
過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 |
〔1〕 入院基本料 | 196市区町村等 (82) |
件
9,110 |
千円
636,088 |
千円
287,686 |
〔2〕 入院基本料等加算 | 196市区町村等 (22) |
16,546 | 107,326 | 57,971 |
〔3〕 処置料 | 279市区町村等 (15) |
11,776 | 83,699 | 41,191 |
〔4〕 在宅医療料 | 75市区町村等 (12) |
8,089 | 53,317 | 25,542 |
〔5〕 医学管理料 | 103市区町村等 (9) |
12,587 | 40,032 | 19,022 |
〔6〕 初診料・再診料 | 99市区町村等 (8) |
12,587 | 40,032 | 9,956 |
〔7〕 特定入院料等 | 92市区町村等 (7) |
3,358 | 93,251 | 53,269 |
〔1〕 −〔7〕 の計 | 701実施主体 (155) |
67,050 | 1,035,568 | 494,640 |
〔8〕 調剤報酬 | 213市区町村等 (30) |
85,079 | 74,693 | 34,764 |
〔1〕 −〔8〕 の計 | 806実施主体 (1852) |
152,129 | 1,110,261 | 529,404 |
注(1) | 複数の診療報酬項目について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多額な診療報酬項目で整理した。 |
注(2) | 計欄の実施主体数は、各診療報酬項目等の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬項目等の実施主体数を合計したものとは符合しない。 |
注(3) | 〔7〕 特定入院料等には、特定入院料の外に、画像診断料、検査料、入院時食事療養費・入院時生活療養費及びリハビリテーション料を含む。 |
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 実施主体及び審査支払機関において、医療機関等から不適正と認められる医療費の請求があったのにこれに対する審査点検が十分でなく、特に、診療報酬請求上の各種届出についての確認が必ずしも十分でなかったこと
イ 府県において、医療機関の医療従事者が不足していることを把握する資料があるにもかかわらず、その活用が十分でなく、また、地方厚生局等と府県との連携が必ずしも十分でなかったこと
ウ 地方厚生(支)局等及び都道府県において、医療機関等に対する指導が十分でなかったこと
上記の医療費の支払が過大となっていた事態について、診療報酬項目等の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。
〔1〕 入院基本料
入院基本料は、患者が入院した場合に1日につき所定の点数が定められている。入院基本料のうち療養病棟入院基本料等は、患者の疾患、状態等について厚生労働大臣が定める五つの区分に従い、所定の点数を算定することとされている。
検査の結果、25都道府県に所在する82医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが9,110件あった。その主な態様は、療養病棟入院基本料等に定められた区分のうち、より低い点数の区分の状態等にある患者に対して高い区分の点数で算定していたものである。
このため、上記9,110件の請求に対して196市区町村等が支払った医療費が636,088,818円過大となっていて、これに対する国の負担額287,686,278円は負担の必要がなかったものである。
〔2〕 入院基本料等加算
入院基本料等加算には、特殊疾患入院施設管理加算、療養病棟療養環境加算、超重症児(者)入院診療加算、難病患者等入院診療加算等があり、それぞれ所定の点数が定められている。そして、これらの加算の多くは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長(20年10月以降は地方厚生(支)局長。以下同じ。)に届け出た医療機関において、その基準に掲げる区分に従い所定の点数を算定することとされている。ただし、療養病棟療養環境加算等は、医師の数が医療法(昭和23年法律第205号)に定める標準となる数(以下「標準人員」という。)を満たしていないなどの場合には算定できないこととされている。
また、超重症児(者)入院診療加算等は、厚生労働大臣が定める超重症等の状態にある患者に対して算定することとされている。ただし、この加算は、一般病棟等に入院している後期高齢者の患者に対しては、算定できないこととされている。
さらに、難病患者等入院診療加算は、厚生労働大臣が定める疾患を主病として医療機関に入院している患者に対して算定することとされている。ただし、この加算は療養病棟入院基本料を算定している患者に対しては、算定できないこととされている。
検査の結果、15都道府県に所在する22医療機関において、入院基本料等加算等の請求が不適正と認められるものが16,546件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 地方社会保険事務局長への届出を行っていないのに、特殊疾患入院施設管理加算等を算定していた。
イ 医師の数が標準人員を満たしていないのに、療養病棟療養環境加算等を算定していた。
ウ 一般病棟等に入院している後期高齢者の患者に対して、超重症児(者)入院診療加算等を算定していた。
エ 療養病棟入院基本料を算定している患者に対して、難病患者等入院診療加算を算定していた。
このため、上記16,546件の請求に対して196市区町村等が支払った医療費が107,326,523円過大となっていて、これに対する国の負担額57,971,057円は負担の必要がなかったものである。
〔3〕 処置料
処置料には、一般処置料、栄養処置料等があり、それぞれの処置の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、特別養護老人ホーム等の職員が入所者に対して行った処置は、処置料として算定できないこととされている。
また、療養病棟入院基本料を算定している患者に対して行った鼻腔栄養等の処置の費用については、同基本料に含まれているものであるため別に算定できないこととされている。
さらに、処置に当たって薬剤を使用した場合は、実際に使用した薬剤の総量に基づいた薬剤料の点数を合算して算定することとされている。
検査の結果、10道県に所在する15医療機関において、処置料等の請求が不適正と認められるものが11,776件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 特別養護老人ホームの職員が入所者に対して行った創傷処置等について処置料を算定していた。
イ 療養病棟入院基本料を算定している患者に対して行った鼻腔栄養等について処置料を算定していた。
ウ 人工腎(じん)臓の処置に使用される薬剤について、実際に使用した量よりも多い量により薬剤料を算定していた。
このため、上記11,776件の請求に対して279市区町村等が支払った医療費が83,699,363円過大となっていて、これに対する国の負担額41,191,864円は負担の必要がなかったものである。
〔4〕 在宅医療料
在宅医療料のうち在宅患者訪問看護・指導料等は、医療機関が、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、看護師等を訪問させて看護又は療養上必要な指導を行った場合等に算定することとされている。また、歯科診療の訪問歯科衛生指導料等は、歯科医師が歯科訪問診療を行った患者等に対して、歯科医師の指示に基づき、歯科衛生士等が訪問して、療養上必要な実地指導を行った場合等に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、これらの診療が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問看護・指導料、訪問歯科衛生指導料等は算定できないこととされている。
また、在宅患者訪問診療料等は、医療機関が、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合等に算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等の入所者に対しては、在宅患者訪問診療料等は算定できないこととされている。
検査の結果、11都道府県に所在する12医療機関において、在宅医療料等の請求が不適正と認められるものが8,089件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して、在宅患者訪問看護・指導料又は訪問歯科衛生指導料等を算定していた。
イ 特別養護老人ホームの入所者に対して行った診療について、在宅患者訪問診療料等を算定していた。
このため、上記8,089件の請求に対して75市区町村等が支払った医療費が53,317,951円過大となっていて、これに対する国の負担額25,542,639円は負担の必要がなかったものである。
〔5〕 医学管理料
医学管理料のうち特定疾患療養管理料等は、生活習慣病等を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合等に算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等の施設に配置されている医師(以下「配置医師」という。)が、これらの施設の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、特定疾患療養管理料等は算定できないこととされている。
検査の結果、9県に所在する9医療機関において、医学管理料等の請求が不適正と認められるものが12,587件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、特定疾患療養管理料等を算定していたものである。
このため、上記12,587件の請求に対して103市区町村等が支払った医療費が40,032,186円過大となっていて、これに対する国の負担額19,022,859円は負担の必要がなかったものである。
〔6〕 初診料・再診料
初診料は患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があったときに、再診料はその後の診療行為の都度、それぞれ算定することとされている。ただし、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行っている診療については、その診療が別途介護保険制度の介護給付等として行われているものであることから、初診料、再診料は算定できないこととされている。
検査の結果、6府県に所在する8医療機関において、初診料、再診料等の請求が不適正と認められるものが5,584件あった。その主な態様は、配置医師が特別養護老人ホーム等の入所者に対して行った診療について、初診料、再診料を算定していたものである。
このため、上記5,584件の請求に対して99市区町村等が支払った医療費が21,852,102円過大となっていて、これに対する国の負担額9,956,423円は負担の必要がなかったものである。
〔7〕 特定入院料等
特定入院料には、精神療養病棟入院料等があり、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方社会保険事務局長に届け出た医療機関において、その届出に係る所定の点数を算定することとされている。ただし、精神療養病棟入院料は、医療機関において、医師の数が標準人員を満たしていない場合には、算定できないこととされている。
検査の結果、6県に所在する7医療機関において、特定入院料等の請求が不適正と認められるものが3,358件あった。その主な態様は、医師の数が標準人員を満たしていないのに、精神療養病棟入院料を算定していたものである。
このため、上記3,358件の請求に対して92市区町村等が支払った医療費が93,251,106円過大となっていて、これに対する国の負担額53,269,305円は負担の必要がなかったものである。
〔8〕 調剤報酬
調剤報酬のうち在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅で療養を行っている患者に対して、医師の指示に基づき、薬剤師が患家を訪問して薬学的管理指導を行った場合に算定することとされている。ただし、介護保険の要介護被保険者等である患者に対しては、この指導が別途介護保険制度の介護給付として行われるものであることから、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できないこととされている。
また、薬剤服用歴管理料の服薬指導加算は、処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録して、これに基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行った場合に算定することとされている。
さらに、後期高齢者薬剤服用歴管理指導料は、後期高齢者である患者について、薬剤服用歴の記録に基づき、投薬に係る薬剤の用法等に関する主な情報を文書等により患者に提供し、薬剤の服用に関する基本的な説明や服薬に関する指導等を行った場合に算定することとされている。
検査の結果、15都道県に所在する30薬局において、調剤報酬の請求が不適正と認められるものが85,079件あった。その主な態様は次のとおりである。
ア 介護保険の要介護被保険者等である患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定していた。
イ 薬剤服用歴の記録に基づき薬剤の服用等に関し必要な指導を行うことなどの算定要件を満たしていないのに、服薬指導加算等を算定していた。
ウ 薬剤の用法等に関する主な情報を文書等により提供し、薬剤の服用に関する基本的な説明や服薬に関する指導を行うことなどの算定要件を満たしていないのに、後期高齢者薬剤服用歴管理指導料を算定していた。
このため、上記85,079件の請求に対して213市区町村等が支払った医療費が74,693,161円過大となっていて、これに対する国の負担額34,764,230円は負担の必要がなかったものである。
以上を医療機関等の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。
都道府県名 | 実施主体 (医療機関等数) |
過大に支払われた医療費の件数 | 過大に支払われた医療費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
北海道 | 48市町村等 (19) |
件
9,137 |
千円
96,435 |
千円
46,182 |
〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔8〕 |
青森県 | 4市等 (2) |
490 | 5,300 | 1,594 | 〔1〕 〔5〕 |
宮城県 | 6市町等 (2) |
230 | 10,422 | 4,722 | 〔1〕 〔8〕 |
秋田県 | 6市町等 (1) |
219 | 2,183 | 1,038 | 〔3〕 |
栃木県 | 9市町等 (5) |
780 | 30,244 | 14,250 | 〔1〕 〔8〕 |
群馬県 | 23市区町村等 (2) |
845 | 7,027 | 2,927 | 〔1〕 〔5〕 |
埼玉県 | 77市区町村等 (9) |
9,617 | 47,883 | 23,021 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 |
千葉県 | 86市区町村等 (10) |
5,758 | 106,333 | 57,453 | 〔3〕 〔4〕 〔7〕 〔8〕 |
東京都 | 51市区町等 (4) |
10,375 | 46,429 | 24,177 | 〔1〕 〔2〕 〔4〕 〔8〕 |
新潟県 | 33市区町等 (6) |
19,120 | 11,441 | 6,330 | 〔1〕 〔2〕 〔8〕 |
富山県 | 3市等 (1) |
21 | 1,125 | 505 | 〔2〕 |
石川県 | 9市町等 (4) |
813 | 23,987 | 10,992 | 〔1〕 〔2〕 |
長野県 | 30市町村等 (6) |
2,029 | 16,613 | 8,589 | 〔2〕 〔4〕 〔5〕 〔6〕 〔7〕 〔8〕 |
岐阜県 | 27市区町等 (9) |
3,494 | 30,913 | 13,430 | 〔1〕 〔5〕 〔6〕 〔8〕 |
静岡県 | 19市町等 (1) |
10,072 | 2,010 | 1,179 | 〔8〕 |
愛知県 | 136市区町村等 (2) |
2,388 | 7,741 | 3,910 | 〔3〕 〔5〕 |
滋賀県 | 10 市町等 (5) |
292 | 18,260 | 7,395 | 〔1〕 |
京都府 | 37 市町等 (5) |
3,011 | 13,159 | 7,612 | 〔1〕 〔2〕 〔4〕 〔6〕 |
大阪府 | 6 市等 (2) |
317 | 3,666 | 1,604 | 〔4〕 |
兵庫県 | 42 市町等 (10) |
5,881 | 47,715 | 20,022 | 〔1〕 〔2〕 〔5〕 〔6〕 〔8〕 |
奈良県 | 61 市町村等 (3) |
6,148 | 30,856 | 16,312 | 〔3〕 〔4〕 〔5〕 |
和歌山県 | 17 市町等 (7) |
2,222 | 102,458 | 47,970 | 〔1〕 〔4〕 〔7〕 |
鳥取県 | 6 市町等 (4) |
4,651 | 16,711 | 7,387 | 〔1〕 〔8〕 |
岡山県 | 11 市町等 (1) |
718 | 2,385 | 1,300 | 〔2〕 |
広島県 | 7 市町等 (1) |
432 | 1,984 | 806 | 〔4〕 |
山口県 | 5 市等 (2) |
332 | 9,406 | 4,031 | 〔1〕 〔3〕 |
徳島県 | 67 市町村等 (3) |
9,857 | 30,921 | 16,885 | 〔1〕 〔2〕 〔4〕 |
愛媛県 | 19 市町等 (6) |
1,230 | 23,835 | 11,743 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔5〕 |
福岡県 | 82市町村等 (15) |
17,552 | 47,477 | 26,338 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔6〕 〔8〕 |
佐賀県 | 8 市町等 (2) |
226 | 4,714 | 1,899 | 〔4〕 〔7〕 |
熊本県 | 11市町村等 (3) |
305 | 16,160 | 6,453 | 〔1〕 |
大分県 | 30 市区町村等 (3) |
7,152 | 9,226 | 4,059 | 〔1〕 〔8〕 |
宮崎県 | 38 市町等 (10) |
9,862 | 87,092 | 42,980 | 〔1〕 〔2〕 〔7〕 〔8〕 |
鹿児島県 | 18 市町等 (14) |
2,042 | 157,800 | 65,445 | 〔1〕 |
沖縄県 | 23 市町村等 (6) |
4,511 | 40,334 | 18,848 | 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔8〕 |
計 | 806 市区町村等 (185) |
152,129 | 1,110,261 | 529,404 |
注(1) | 計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは符合しない |
注(2) | 摘要欄の〔1〕 〜〔8〕 は、本文の過大となっていた支払の事態 の診療報酬項目等の別に対応している。 |
上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、地方厚生(支)局及び都道府県に対して、把握した情報を有効に活用しながら医療機関等に対する指導を実施するよう努めるとともに、審査支払機関、保険者等に対する指導の徹底を図るよう助言等を行う必要があると認められる。